4 闇とのにらめっこ 『イーストエンドは西の果て』
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- 2023年3月21日
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4 闇とのにらめっこ
宝箱を開けてみると…そこには、数枚の紙切れが、畳んで置かれていた。
…それだけだった。
「伝説のアイテム」でもなければ、「ミミック」でも、なかった…(笑)
僕は、紙切れを手に取って、開いてみた…
それは手紙だったのだけれど、頭の一文を読んだだけで、腰を抜かすほど驚いた!!!
…まぁ、文章をそのまま載せるから、キミも読んでみておくれよ?
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やぁぱるこ!
元気かい?走り疲れたかな?
オマエがこれを読んでいるということは、
父さんの言いつけを、守らなかったってことだなぁ…
「ぱるこが素直な良い子になったら、
ミツバチたちは、オマエを刺したりはしなくなるよ♪」
って、あれほど釘を刺しておいただろう?
目の前に、立派な樹が見えるかな?
この樹は、「ねむりあの樹」と呼ばれている。
…父さんが名付け、父さんしか知らないけどね(笑)
ところでぱるこ!
ハイミーは、どこに行ったかな?
ハイミーに仕返ししてやるんじゃなかったかい!?
父さんが、オマエの仕返しを助太刀してやろうと思ってさ♪
3メートルくらい離れて、ねむりあの樹の幹を、よーく眺めてみるんだ。
10分は、「にらめっこ」を続けてみておくれ?
…オマエは、
10分もじっとしていられない子だってこと、父さんは、よく知っているよ(笑)
それに、まだ1分しか経っていないのに、
「父さん、10分頑張ったよ!」
ってズル賢い演技をすることも、さ(笑)
さぁて…
今オマエの前には、ダマす相手もいないし、ズルをしたところで何の得もナイなぁ…?
…どうする?
何が起こるかわからないけれど、10分間、堪えてみるかい?
それとも、真っ暗闇の中を、家まで引き返すかい?
父さん、ついウッカリ言い忘れていたけれど、
この藪にヘビが出没するのは、陽が落ちてからのことだったよ(笑)
…というか、ヘビだけで済めばよいのだけれど…!?
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手紙は、ここで終わっていたよ。
助太刀なのか嫌がらせなのか、さっぱりワカラナイじゃないか!!
僕は、父さんには負けたくなかった。
それに、「本当のバカ」の仲間入りも、したくなかった。
何より、「勇者」になりかった。
どうせもう、真っ暗さ。
今引き返したって、10分後に引き返したって、大して違いはナイさ。
僕は、樹の前であぐらをかいて、じーっとじーっと、幹をにらみつけた。
アブが飛んできて、プンプンと騒がしい音を立てた。
蚊が飛んできて、首筋やらクチビルやら、イヤラシイ場所ばっかり刺していった。
他にも色んな虫が、僕の身体の周りを飛び回って、停まったり、刺したりしていった。
ゴキブリくらいの大きさの虫が、首筋を這っていった。
ウザくても、かゆくても、痛くても、眠くても、目を逸らしちゃいけないことは、解っていた。
僕は、父さんには負けたくなかった。
「本当のバカ」にはなりたくなかった。
「勇者」になりかった。
『イーストエンドは西の果て』