50 ブロロロロン…
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- 2023年3月2日
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50 ブロロロロン…
私は、ついでに、
おばぁに質問事をした。
「お昼ご飯を食べられる場所って、島にもありますか?
商店でパンでも買うしか、ありませんか?」
「何さね?おじょうちゃん、
船着場で地図、もらってこんかったんか?」
おばぁはそう言うと、
この宿が独自に作ったという島地図のコピーを、手渡してくれた。
私は、質問を続けた。
「…あと、あの、
星砂が拾える浜って、どこですか?」
「星砂かねぇー!
最近は、どうなってんだろうなぁ。
『カイジ浜』なら、今でも転がってんだろうけど…」
と言って、
地図の、島の南西辺りにある浜辺を、指差してくれた。
「カイジ浜、行くんかぁ?
歩きじゃ、ちっと、キツいぞぉ?
そこらの店で、自転車借りて、行ったらえぇなぁ。」
すると、
三線弾きのお兄さんが、手を止めて、話し出した。
「オレ、今日は自転車使う予定ナイから、貸そうか?」
「えー!イイんですかぁ!?」
「えぇよ。
一日借りるだけでも、1,000円掛かるからなぁ。
オレは1週間単位で借りてるから、別に、えぇんよ。
…夕方には使うかもしれへんけど、
そんなに長くは、掛からんやろ?」
「はい!掛からないと思います!」
私は、お兄さんから小さな鍵を受け取ると、
大事に、お財布に仕舞った。
他にすることも無かったので、
早速、出掛けることにした。
貝殻の屑(くず)で埋め尽くされた、竹富の白い道は、
自転車のタイヤが沈んでしまい、なかなか前に進まなかった。
…コレは、手強いサイクリングになるなぁ(笑)
でも、今の私は、
そんなことでメゲたり屈したりするコでは、なかった!
おばぁにもらった地図を頼りに、
力いっぱい、自転車をこいだ。
今日は、集落にも、人影があった。
私と同じように、自転車で行き来している若者が、多かった。
見晴らし台に登ろうとして苦戦し、キャーキャー騒いでいるコたちを、見かけた。
「軟弱だなぁ」と、他人事のように嘲笑してしまったけれど、
一昨日までの私は、あのコたちと同類だったんだっけ(笑)
10分も走れば、集落を抜けた。
集落を抜けると、
道路は大きくなり、きちんと舗装されていた。
サイクリングは、一気に快適になった♪
私は、心地よい風に遊ばれながら、
しばし、快適なサイクリングを楽しんだ♪
島の外周を巡る、いわゆる環状線道路を走っていると、
「カイジ浜」と書かれた、
ボロボロの、小さな立て札を見つけた。
この島は相変わらず、おとぎ話チックだなぁと思った。
浜へと続く小道は、木のトンネルのようだった。
最初は自転車に乗ったまま走ったけれど、
だんだんと足場が悪くなってきたので、
自転車を押して、歩くことにした。
2~3分も歩くと、視界が開けた…!
「うわーーーーーー!」
絵葉書のような、美しい海だった。
…でも、「真っ白なビーチ」というものでは、なかった。
美しいのは「海」だけで、
砂浜は、半分は浅瀬状になっていて、灰色にくすんでいた…
…うーん…?
私が夢の中で見た景色とは、違うような…
それでも、
星砂を探してみようと思って、奥まで歩こうとした。
ブロロロロン…
「はぁ…」
私は、溜め息を付いた。
私の後でも追ってきたかのように、
ツアー客が、どっと流れ込んできた…
この騒がしい空気(雰囲気)は、
私が思い描いていたものとは、全く、違った…
私は、
ただの一粒も星砂を拾うことなく、
カイジ浜から、退散した。
しばらくは自転車を押し歩き、途中からは自転車に乗り、
舗装された大通りまで、戻ってきた。
「…さて、どうしよっかなー?」
私は大きな声で独り言を言うと、
おばぁにもらった地図を、ポケットから取り出した。
すぐ近くには、
「コンドイビーチ」という浜があるようだった。
「海水浴場の代表だ」と、地図にも添えられている。
そういえば、今朝の井戸端会議でも、
「コンドイビーチが美しい」という話を、
誰かがしきりに、言っていた。
「ちょっと、見てみようかな」と、思った。
…「昔の私」なら、
ここでアッサリ、コンドイビーチに向かっていただろう。
地図にも「海水浴場の代表」と書かれており、
井戸端会議でも「美しいぞ!」と聞かされたのだから。
けれども、「今の私」は、
考え方が少し、違っていた。
これだけ触れ込みの多い場所なのであれば、
どうせまた、あの大きなバスがやってきて、
私のロマンチックな時間を、踏み荒らしてしまうのだ…
それは、つまらなすぎる。
「ヒロさんだったら、こういうとき、どうするだろう?」
と、私は考えてみた。
「彼なら、とにかく、ヒトの多く集まる場所は、避けるハズだ!」
と、思った。
私は、
もう1回、地図を見た。
コンドイビーチのそばには、「西桟橋」というのが書かれている。
ここは、
夕陽の時間になると、島中の観光客が、勢ぞろいするらしい…
「うーん、ココも、違う…」
私はそうつぶやいて、違う浜を探そうとした。
…その瞬間!
私の視界の端を、トロっとした小さな光が、駆け抜けた。
またフシギな神秘現象を体験してしまったが、
大して驚きはしなかった。
それよりも、
「この光は、私への、何らかのサインだ!」
と、直感的に、解った。
何だろう…?
1分考えても、何もピンとこなかった(笑)
私の「おバカ」は、治ってはいなかった(笑)
私は、いったん、
天をあおいで目をつむり、
大きく大きく、深呼吸をした。
…あ、解った…!!
『星砂の招待状 -True Love-』