54 慎さん
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- 2023年3月2日
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54 慎さん
…私は、
カモメか何かがキュルキュル鳴く声で、目が覚めた。
起きた瞬間、
「冒険」の全てが夢だったのかと、焦った。
…でも、そうでは無かった♪
なにしろ、
カモメか何かの声で目を覚ますということは、
家のベッドに縮こまっているワケでは、ナイのだ(笑)
ここまでの「冒険」の数々は、
全て、真実だった。現実だった。
なにしろなにしろ、
私のふくらはぎや太ももは、
容赦なく、「筋肉痛予備軍」だった(笑)
私は、
ゆっくりと、「松茸荘」に戻った。
道すがら、集落の中では、
ミニバスほどもある大きな荷馬車を見た。
立派な茶牛が、のそのそと力強く、観光客たちを率いていた。
これは、「偽(つく)られた、のどかさ」ではあったけれど、
それはそれで、風情があった。
同じような牛車が、幾つも、走って(歩いて)いた。
午前中は、
この島も、忙しいようだ。
宿に戻ると、12時の手前だった。
私は、三線のお兄さんに、自転車と鍵を返した。
彼は、
「有効活用してもらえて、良かった♪」
と、嬉しそうに微笑んでいた。自分は「借りた側」ではなく「貸した側」だというのに。
爪の先までぬかりなく、優しい人なのだ。
名前を尋ねると、
「慎一です。『慎さん』と呼ばれているよ。」
と、名乗ってくれた。
苗字は伏せるけれど、これは本名だ。
慎さんは、
竹富島には、何度も来ているらしかった。
これを読むヒトの中には、
彼の三線を耳にした人も、いるかもしれない。
私は、
「やりきった!」
という感覚があった。
私のドラマは、もう、
春風みたいなエンデンディグ・ロールが流れ始めて良さそうなモノだった。
…でも、
そうはいかなかった…!!
『星砂の招待状 -True Love-』