6 「パスポートを預かります。」
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- 2023年3月10日
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6 「パスポートを預かります。」
車は、30分も市街地を走ると、一軒のホテルの前に停まった。
このホテルは、
僕が、日本で、航空券と一緒に予約しておいたモノなんだよ。
僕、今回の旅はさぁ、
ほとんど丸ごとノープランだったから、
宿も、現地でテキトーに見繕いながら、さすらっていこうと思っているんだけどさ。
でも、サスガに、
生まれて初めての海外で、現地到着が真夜中の11時だっていったら、
そこから、何の手掛かりもナシに宿を探すっていうのは、キツいだろうなぁと思ってさ。
1泊目だけ、予約しといたのさ。
このホテルは、かなり古くからある老舗のようで、
建物の作りは、古いなりに、とてもしっかりしていたよ♪
気の優しいレセプション(受付カウンター)のお兄ちゃんが、
真夜中の到着にも、ちゃーんと、愛想よく対応してくれたしさ♪
通された部屋は、フツウの、ビジネスホテル程度の設備だったよ。
ただ、洋服ダンスやベッドやなんかは、
調度品って言うのかなぁ、上等な作りのモンだった。
「エアコンが点きますよ♪」
って、ベル・ボーイのお兄ちゃんが教えてくれたから、
寝る前に、点けてみたんだけどさ。
ガーーーーーー!!
って、やたら大きな音を立ててんのさ!!
カキ氷でも削って涼しくしてんのかと、思っちゃったよ(笑)
とにかく、年代モノらしくてさ、
デリケートな温度管理なんて、出来ないらしくて、
朝起きたら、凍え死にそうになってたよ(笑)
あ、そう言えばさぁ、
このホテルに泊まるとき、僕、イキナリ、慌てちゃったんだ!!
…なぜかって言うと、
レセプションのお兄ちゃんが、「パスポートを預かります」って言うからさ!!
…旅慣れた今となっては、
宿の受付でパスポートを預けるなんてことは、
日常茶飯事だから、驚かないよ?
けど、生まれて初めての海外でさ、
右も左もわからない、カナブン臭い国でさ、
強引に引っ張っていかれた白タクに乗った後でさ、
人気のナイ、しかも、ほとんど真っ暗なレセプションで、
「パスポートを渡せ」って言われたら…
それこそ、命綱を手渡しちゃうようなモンだぜ!?
僕、最初のうちは、
その要求に対して、必死に抵抗しちゃったよ!!
「なぜ預かるんだ?」とか、「いつ返してもらえるんだ?」とか、
険しい顔して、しつこく問い詰めちゃった。
そしたら、他のスタッフも駆けつけて来てさぁ、
「おぉ、田舎モンがゴネてて、困ったもんだぁ」
みたいなカンジで、苦笑いして、アタマ抱えてんのさ(笑)
僕の粗末な英語力じゃ、
質問したところで、相手の答えがあんまり理解出来ないし、
どうにもみんな、悪どい顔なんてしていなかったから、
僕は堪忍して、パスポートを預けることにしたんだよ。
結果的に、ずいぶんとみんなを煩わせちゃったけど、
誰も、イヤそうな顔をしたりは、しなかったさ♪
ちなみに、
このホテルは、シングル1泊30ドルだったんだ。
この金額、チョイと覚えといてね♪
『永遠の楽園』