6 星砂の招待状
4月末の土曜日、
私は店で、商品とにらめっこをしていた。
並べ替えをする前に、
全ての商品を眺め、特徴を覚えたかった。
お客さんに、「コレは何ですか?」と尋ねられて、
「わからないから、店長を呼んできます」を連呼するのは、
あまりにも、味気無さ過ぎるから。
私は、ある商品が気に留まった。
それは、
アロマ精油くらいの小さな透明小ビンに、
肌色の砂が、たくさん敷き詰められているものだった。
…その砂粒が、
ただの砂粒ではなく、星のカタチをしているのだ…!!
「トモコさん!コレ、何ですか!?」
「あらぁ、『星の砂』じゃない。
ゆっこちゃん、知らないの?」
「星の砂!?
コレ、有名なんですか?」
「私リサーチ会社じゃないから、統計のほどは知らないけど、
割とメジャーなお土産だと、思うわぁ。」
「どこの国のお土産なんですか!?」
「やだぁ!
どこの国って、日本よぉ(笑)
沖縄のあっちこっちで、売ってるわよ?
ゆっこちゃん、沖縄、行ったことないの?」
「沖縄!ナイですナイです!
死ぬまでに一回くらいは、行ってみたいけど…」
「ちょっとぉ!ホンキ!?
何あなた、お婆ちゃんみたいなコト言ってんのよぉ!
今ドキ、沖縄なんて、高校の修学旅行でも、行くでしょう?」
「えー!?そうなんですかー?
私たちの学校、修学旅行は阿蘇山らしいんですけど…」
「あらぁ、阿蘇山もイイじゃない♪
…って、そういう話じゃ、無かったわねぇ。
沖縄なんて、一人でも、明日にでも、飛べちゃうわよ♪
日本語が通じる地域は、何にも恐れること、ナイじゃない?」
「そうなんだぁ…
私、沖縄も、海外とあんまり変わらないと思ってたぁ…。
ウチは、家族が誰も、旅行をしないんですよ。」
「あぁ、そういうのって、ご両親の価値観が、大きいわよねぇ。
旅行しない親のコは、やっぱり、旅行を怖がるわ。
…けど、
そうやって親のせいにしてたんじゃ、
1,000年経っても、
その家系のコは、旅行出来ないモンねぇ。」
「…それで、
沖縄って、どこでも、砂が星のカタチなんですか?」
「あなた…、
ホントーに、星砂も沖縄も、知らないのねー!
沖縄の離島の、幾つかのビーチだけ、星砂が転がってんのよ。
昔は、浜一面が星砂だったらしいけど、今は乱獲されちゃって、
4ツ葉のクローバーみたいな、レアモノ扱いね。
…それでも、
人の立ち入らないような浅瀬まで行けば、いくらでもあるらしいから、
業者は無限に拾ってきて、100円くらいで売っちゃってんのよぉ。
…でも、
自分の店に置いといて、ナンだけど…
そういうのって、
お金で買ったりお土産でもらったりしても、味気ナイと思うわー!
それくらいたくさんの量を、自分で拾い集めたっていうんなら、
『一生のタカラモノ』にも、感じるでしょうけど。」
「へー!!
なんか、ステキですねー♪
…ところで、
コレ、どうして、星のカタチなんですか?」
「あー!そこまでは、私にも、わからないわぁ。
『天使が作った♪』とかいうコトにしとけば、
色々と妄想したりして、楽しそうだけどー♪」
「天使かぁー!」
「ちょ、ちょっとぉ!?
『天使が作った』ってのは、思いつきの、ジョーダンよ?
ちゃんと私の話、聞いてたー?」
「あ、え?
…聞いてたとは、思うけど、
勝手に、妄想入っちゃってました(笑)」
「もぉー!頼むわよぉ。」
『星砂の招待状 -True Love-』