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エピソード13 銃声

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月10日
  • 読了時間: 3分

エピソード13 銃声


待ちわびた声を耳にして、キャロルは振り返った。

放り上げたロッドをほったらかしにして、

キャロルは愛しい姉へと駆け寄り、抱きついた。

「お姉ちゃーん!!」

「キャロル!!」


「ごめんねキャロル。こんな怖い思いさせちゃって。」

「ううん。お姉ちゃんのせいじゃない。

 でも、どうしよう…」

再会を喜んだのも束(つか)の間、二人は危機がまったく去っていないことに気がついた。

苦境はあまり変わらない。


ぴったりと寄りそいあいながら、二人は考えた。

「どうする?もう帰る?

 …帰れるかはわからないけど、道にもどってみる?

 道のほうが、大人の助けは見つけやすいわ。だんぜん。」

「うーん。」

キャロルは、帰りたかった。早くおうちに帰ってママの料理を食べたい。

その一方で、帰りたくなかった。ここで何かを見つけたい。

森の中で死んでしまったっていいような気もした。お姉ちゃんと一緒なら。

…いや、

お姉ちゃんを道連れにして良いのか?お姉ちゃんを殺して良いのか?

自分はいい。どうせ学校に友達はいないし、他人の役にはロクに立っていない。

でもお姉ちゃんは違う。友達がたくさんいて、楽しいことがたくさんあって、

太陽みたいにみんなを喜ばせている。

ダメだ。帰らなくては!キャロルは幼いなりに、そうした正義感が勝った。

「帰ろ…」と言いかけたそのとき。

「ダメだ。動いちゃダメだよ。

 ここでじっとしていたほうがいい。」

キャロルの決断をさえぎるように、ロッドが口出しをした。

「どうして?帰らなくちゃ!死んじゃうわ!」

「いいから。じきにわかるよ。」

キャロルは反論をやめ、くちびるをつぐんでぎゅっとミシェルの手をにぎった。



それからどれくらい経っただろうか。

昼間の長い北欧において、時間の経過はよくわからない。

30分かもしれないし、3時間かもしれなかった。

ミシェルもキャロルも、うとうとしていた。

夢の世界におちいりそうな、その瞬間、


ダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!


聞いたこともない、ものすごい爆音が耳をつんざいた。

そして付近の鳥や小動物たちが、一斉に飛び立った。

「なに!?何なの!?」

二人にはよくわからなかったが、

それは、猟師(りょうし)たちの猟銃の音であった。

トナカイを狩りにきた者たちがいるようだ。


ダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!


「なに!?戦争!?」

キャロルは怖くなって、どこともなく走って逃げようとした。

「ダメだ!動くな!」

ロッドが強い口調でキャロルを制止した。

キャロルはハっとわれに返り、再び身をかがめた。

ミシェルは中腰になって辺りをきょろきょろ見回し、

何が起きているのか必死で推理(すいり)しようとした。

そのとき、


ドドドッ ドドドッ ドドドッ ドドドッ ドドドッ!


ものすごい地響きがせまってきたかとおもうと、

茶色い物体がいくつも、二人のすぐそばを駆け抜けていった!

2人はその衝撃波(しょうげきは)にけおされ、おもわず尻から倒れこんだ。

「ト、トナカイ!?」

ミシェルはだいたい察しがついた。

この森にはトナカイがいて、それをねらう猟師(りょうし)たちがいる。

下手に動き回ると、

トナカイとかんちがいされて銃で撃(う)ち殺されかねない!

だからロッドは、じっとしていろと言ったのであった。

ますます息をひそめながら、二人は身をかがめて気配を殺した。



『ミシェル』

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