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エピソード36『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年5月2日
  • 読了時間: 2分

エピソード36


ゆ「ねぇ!ちょっと試してみてもいい?」


ア「なんだ?」

ゆ「ちょっとさぁ、目を閉じて漕いでみて!」

な「えぇー!!」

ゆ「いや言い過ぎたわ。

 目を閉じなくてもいいけど、少し左右に反れてもあまり気にしないで、とにかく真っすぐ進んでみて!

 真っすぐ、真っすぐ、何も考えずに進んでみて!」

ア「それじゃぁまた岸に戻ってきちゃうよ?」

ゆ「そうかもしれないけど、そうじゃないかも」


3人は再び、小舟の試練に挑みはじめた。

そろり。そろり。小舟はゆっくりと進む。

おっとっと!やはり右に曲がってしまう。

な「あ!」ななはそれに気づく。

ゆ「いいの!気にしないで!まっすぐ。まっすぐ」

ななとアミンは、黙ってゆなの言うとおりにした。まっすぐ。まっすぐ。

そろり。そろり。小舟は進んでいく。

20mくらい進んだが、今度は岸にぶち当たらない!

そろり。そろり。

ついに視界は、霧によって真っ白になってしまった!

視界の隅にも岸や花は入ってこず、ますます前後左右がわからない!

ゆ「まだ慌てないで。まっすぐ。まっすぐ」

ななとアミンは心の中でだけ返事をし、無心にオールをこいだ。

そろり。そろり。

ときどき右に反れてしまっているような気もした。

ゆ「いいの。まっすぐ。まっすぐ」

な「はっ!」ななは気付いた。もう湖の真ん中。ここでもし転覆してしまったら!?岸に泳ぎつくなど不可能だ!ななは急に不安になった!動揺で小舟が震える。

ゆ「慌てないで。落ち着いて。まっすぐ。まっすぐ」

ときどき左に反れてしまっているような気もした。

ゆ「いいの。まっすぐ。まっすぐ」

そろり。そろり。

そろり。そろり。

そろそろ腕も痛い!腰も痛い!

ゆ「めげないで。まっすぐ。まっすぐ」

そろり。そろり。

そろり。そろり。

20分は経ったか。

「そろそろ無理だ!」体力と集中力の限界をななが感じはじめたそのとき・・・!


ガツン!

小舟が何かに当たった!!

な「わたたっ!」ななは不意の衝撃に、思わず声を上げた。

兵「シーっ!お静かに。

 ようこそおいでくださいました。ここは妖精の城です」

可愛い不思議な声が聞こえたかと思うと、誰かが小さなランプを灯し、その周辺だけ霧が晴れた!かすかにお城が見える。


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