エピソード41『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月1日
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エピソード41
夜は酒場に出て、情報収集に励んだ。なにしろカルベローナのことは何も知らない。
町人たちの話によると、北東の方角には大きな街があるという。まずはそこだろう。目的地の目処は立った。
キキは妖精の女王だとバレていないが、しかし目立った。キキがいなかろうと目立つパーティであるようだった。それもそうだ。子供が4人で歩いているようなものだ。
するとあちこちから声を掛けられ、「何してるんだ?」とか「アメちゃんをやる」だとか、会話に忙しい。
しかし人とのコミュニケーションが好きなななは、それが結構面白いのだった。女一人で男たちから話しかけられるのは怖いが、今は仲間がいる。
ゆなとアミンは、酒臭い男たちの口の中に次から次へと、煎じたミントの葉を突っ込んでいった。
キ「さぁ、出発しんこーぉ♪」
キキが最も、楽しそうであった。
何のために旅しているのか、もはや一行はよくわからなかったが、まぁそれでもよいのだろう。
―オラクルベリー―
2日の野宿を挟んで、一行はカルベローナ領の商業都市オラクルベリーに辿り着いた。
ゆ「うわー、やかましいところねぇ」
トルッカも賑わっていると感じたが、さらに輪をかけて賑わっているのだった。
いや、ななやゆなが暮らしていた街と人口密度は大差ない。しかしドワーフの里ばかり転々としてきた旅の始まりをベースに考えると、オラクルベリーはすさまじい大都会に思えた。
なにしろ商業都市である。世界各地から商人やその他の人々が行き交っているようだった。
人の姿だけでなく、馬車の姿が目についた。遠くから往来するだけでなく、荷物を、商品を運んで旅する者が多いのだ。現代都会に住むななやゆなにとって、馬車というのは新鮮で、そして風情があった。
ゆ「なんか中世ヨーロッパみたいー♪」
ア「そうだな。遠くまで旅するなら、馬車とかあったほうがいいんじゃないのか?」
な「買えるの?馬車って」
キ「そりゃチョコレートを売る店もあれば、馬車を売る店もあるわよ」
ゆ「でも高そう(汗)」
ア「そうなんだよ。平地に魔物があんまり出ないのはありがたいんだけど、するとお金があんまり貯まらないんだよね。寝泊まりするには困らないけど、次に立派な武器を買えるのはいつだ?ってカンジ」
な「ポワン様に武器もらえてよかったねぇ」
ゆ「あの報酬って、想像以上に価値があったのかも!」
ア「どうする?どっか森や洞窟を探しにいく?」
キ「ちょっと待って!
あなたたちは、この旅で何がしたいの?
魔物をいっぱいやっつけたいの?
ムキムキに強くなりたいの?
それとも色んな世界を見たいの?」
な「戦うことに、あんまり興味ないなぁ(汗)」
ゆ「成長したいって思いはあるけど、ムキムキになりたいわけじゃないわ」
ア「僕は、世界を色々見たいんだ!」
キ「じゃぁ無暗に戦う必要もないわね。
お金を稼ぐ方法なら、魔物退治だけじゃないんじゃない?」
な「え、他にもあるの?」
キ「これだけ人がいて店があるなら、なおさら、ね♪」
ゆ「そうか、この国にだってアルバイトがあるはず!」
まずは色々と、偵察が必要だ。一行はそう感じた。
にぎわう街をキョロキョロと歩く。生活雑貨から舶来調度品まで、様々なものが売られ、それを物色する人々がいる。見たこともない食べ物の露店があり、嗅いだことのない匂いが漂う。良い匂いばかりではない。しかしそれが「旅の匂い」なのかな、とも感じるのだった。
街のはずれには、なんと馬車を売る店もあった。値段を偵察してみると、5000ゴールド程度であるようだった。馬も付いてくる。
稼げない額ではなさそうだぞ!一行は俄然興味が湧いた。
ゆ「ななはバイトしたことあるんだっけ?」
な「ないよぉまだ中3だもん!
だからちょっとドキドキしちゃうなぁ。怒られたりしないかなぁ?」
キ「だったら、やってみたかったお仕事を選ぶのがイイんじゃない♪」
な「やってみたかったお仕事かぁ・・・
キキちゃんみたいにスイーツ作りしたいなぁ♪」
キ「そう!そういうふうに選んだらいいわ♪」
ゆ「私はどうしようかなぁ~」
街を歩いていると、どうも飾り付けをした店や通りが多い。
年越しを祝う祝日の期間なのだと、街の人が言っていた。だからいつも以上に人通りが増え、そして浮かれているのだ。
な「わたしたちの国で言う、クリスマスやお正月かぁ。
みんなが休んでるときに働くなんて、なんかミジメな気もするなぁ(涙)」
キ「そう?私は真逆の考え方するけど♪」
な「え?」
キ「みんなが休むホリデーって、お給料が上がったりするのよね!
その間に働いたらお得じゃない♪」
な「そっかぁー!」
人手不足になりがちだから、勝手のわからぬ異国人だって雇ってくれるかもしれない。