CHAPTER 24
4日の航海を経て、船は新たな大陸へと到着した。
東の港町サマンオサはポートセルミと同じくらい大きく、大勢の人で賑わっていた。しかしポートセルミよりもやや粗野な印象を受けた。スリなど多発していそうな。
サマルはそれを察知すると、女性たちに身の安全に気を付けるよう忠告をするのだった。
海上ではあまり活躍の場面が無かったにもかかわらず、ワンからは護衛の延長を打診された。
ワ「あのガキ―――ンってやつ、また見たいアルよ!」
サマルの覇王斬作戦は上手くいきすぎてしまったようだ…。しかしサマルは、彼の懇願を丁重に断った。
「東の国には勇者を名乗る強者がいるらしいじゃないですか。
ワンさんにはそういう箔のある人のほうがお似合いですよ。
勇者って言ったら、ロトの子孫かもしれませんよ?ははは」
ワ「そうアルね!ロトの子孫探すアル」
次はどこに行けばいい?
彼らの地図は完全に白紙だった。
町のバーや商店で、聞き込みをしてみることにした。
サ「《風の紋章》とかって、知りませんか?ほら、こういうやつです」
サマルはポートセルミで買ったレプリカであろうタペストリーを取り出して見せた。
ロ「そうか。そういう使い道もあるんだな」
町「うん?似たようなやつを見たことがあるような…」
サ「本当ですか!どこで見たんです?」
町「どっかの教会だよ。いやこの町のじゃないさね。
教会の壁に飾ってあったような…。どこだったかしらねぇ?えらくさびれてた記憶もあるが…」
サ「ありがとうお婆さん!」
頼りないが1つ情報は手に入った。こうして細い糸から結っていくしかないのだ。
次は有名な教会をどこか知らないかと町民に尋ねたが、特に有力な情報は無かった。念のためこの町の教会にも寄ってみたが、それらしきものも情報も無かった。
「それよりも、もう少し静かな町に抜けてはどうですか?ここは物騒ですから」
神父はせめてもの手助けと思って、町を変えることを助言した。
ロ「そうだな」か弱い女性たちのためにも、ここは抜けよう。
神父の話によると、南東に1つ町があるようだった。
一行はまず、海沿いに南下してみることにした。海の景色が少々気に入ったのか、どうせならもう少し海を眺めながら旅をしたい、という心理が働いたようだ。
ワンから貰った給金で、何か武器を買ってくれば良かったなと後悔もしたが、どうやらその必要もなかった。レベルが20に上がったサマルは《ベギラマ》を覚えたのだ。
《ギラ》より1段階強い《ベギラマ》の呪文は、敵全体に60ポイント前後ものダメージを与えた!
ム「すごい!私の《バギマ》よりも強いわ!」
サ「えへへ。僕は君ほどMPが豊富じゃないからね。調子に乗ってりゃすぐガス欠さ」
強くなっても調子に乗るサマルではないのだった。
しかし、ほどほど南下したところでパーティの体力は枯渇しはじめた。
どうしたものかと思案していると、海辺にぽつんと灯台が立つのが見えた。
いや、近づいてみればそれは、大きな尖塔を持つ教会だった。
ロ「灯台なのか?教会なのか?」どちらにせよ一行には見慣れない。
ミ「どちらにせよ、一晩の寝床を与えてくれるかもしれませんよ」
そう期待して、一行は教会の扉を叩いた。
婆「まぁまぁ旅のお方。こんな辺鄙なところにようこそおいでなさった」
とても気の優しそうな老婆シスターであった。
ロ「ここは教会ですか?灯台ですか?」
婆「修道院ですよ。人の暮らす、教会です。
まぁ灯台でもありますがねぇ」
ミ「修道院…!」ミユキは複雑な気持ちが心に沸き上がった。
婆「粗末なベッドとスープしかありませんが、お休みになっていかれますか?」
サ「喜んで!」
一行はしばしの休息を賜った。
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』