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episode34 『王と悟り』

17 時間前
読了時間: 5分

episode34


魔法学校を発ち、新しい地に足を踏み入れる。

ひょっとしてまた魔物が強くなるのかな?と洞窟での苦戦を思い出して緊張したが、そんなことはなかった。つちわらしが出て、いっかくうさぎが出る。それが集団で出現しても、チェーンクロスの広範囲な攻撃によってサクサクと討伐は進む。


食べ物の手持ちがなく、野宿の準備をしていないがゆえの困難はあった。道は過酷ではないが距離は長い。

こちらへ向かって馬車が走っていくのを見かける。たとえばカルベローナ魔法学校に入学する子供は、この先にある街から馬車を雇ってそこにゆくのだろう。

3日間の汗を流して、ソロはサマンオサという大きな街に到着した。海が近く、また新しい匂いがする。


サマンオサ城下町 『王と悟り』
サマンオサ城下町 挿絵 by 生成AI

大きな街だ。街の中心は丘のように盛り上がっていて、てっぺんに城が見える。城下町であるが、城壁街ではない。あまりに街が大きすぎて、壁で囲うことが困難なのだろう。色々な形の街があるものだ。

「余所者か」と誰かが声を掛けてきたりもしない。もはや人が多すぎて、すれ違う人が多すぎて、およそすべての他者が余所者に見えているのだろう。だからいちいち声を掛けもしない。

人の数が多いだけでなく、叫んだりなんだりする人も多くて騒がしい。商売人の掛け声が飛び交い、様々な店が軒を連ねる。地べたにも御座を敷いて、よくわからない商売をしている。

しかしそれらを眺めて品定めする人は少なくなく、需要と共有は一致しているようだ。

戦士っぽい人、魔法使いっぽい人、いわゆる冒険者の数も多い。とても多い。

武器屋や防具屋の数も多く、また普通の服飾の店にも《皮の鎧》程度の簡素な装備品が並んでいたりする。

教会も多く、神父のような服を着た男女の姿もよく見かける。

この街にはすべてがある!と誇らしげに語っているようだ。


街の端からほどなくして、噴水を囲んだ広場がある。

立派な剣士の銅像が建てられている。

ソロは近寄ってみる。

銅像の土台には、石碑が埋め込まれている。


 そろそろ仲間が欲しいか?

 魔法使いは高慢ちきなのが玉に瑕(きず)である。

 僧侶は意気地なしなのが玉に瑕である。

 戦士は乱暴すぎるのが玉に瑕である。

 勇者はカッコ付けたがるのが玉に瑕である。


 ルイーダの酒場


ソ「ふうん」

勇者というのが、この街にはいるのだろうか。

この像は戦士ではなく、勇者を表しているのだろうか。

魔王討伐のカギを、このサマンオサの街が握っているのかもしれないな。



さて、安宿はどこだろうか。賑わう通りを抜けたところだろうが、それにしても広すぎて埒が明かない。誰かに尋ねるべきだな。しかし行き交う人は皆忙しそうで、他人からの声掛けを煙たがっている雰囲気がある。

そうこうしている間に歩は進む。

印象的な三叉路に差し掛かると、その角に古い建物がある。バーの看板が掛かっている。

普段はバーなど興味のないソロだ。しかし看板の文字を見て立ち止まる。「ルイーダの酒場」。

ソ「あれ?どこかで聞いた名前だな」そうだ、勇者像の石碑の文字だ。

何か冒険者に関連するのだろうか?ちょっと入ってみよう。

入口は地下にあるらしく、階段を降りていく。

カランカラン。暗い店内に入る。

まだ昼間だがまばらに人がいる。

「はいいらっしゃい」女の人がカウンターから声を掛けてくる。

ソ「ここはルイーダの酒場っていうところなんですか?」

女「えぇそうよ。今日はマティーニがお得なの。1杯飲んでいく?」

ソ「いえ、お酒は結構なんです。

 勇者が何か、関係しているんですか?」

女「そうよ。勇者が冒険の仲間を見つけるための憩いの場なの」

ソ「あのお客さんたちの中に勇者さんがいるんですか?」

女「彼らはまだ、勇者の卵ね」

ソ「へぇ。

 あのう、3ゴールドくらいで泊まれる安宿はどこかわかりませんか?」この人なら知ってそうだ。良い相手を選んだな、とソロは思った。が・・・

女「えぇっと、お酒飲まないのね?

 悪いけどこっちも忙しいから、本業に関係ないことは他を当たってくれる?」

ソ「あぁすみません!」

ちょっとした質問にも答えてくれないのか。忙しそうにも見えないが・・・。

女はソロが視線を外すと、床にいるネコにエサをやるのだった。甲斐甲斐しく魚の骨を取ってほぐしてやっている。人間の世話よりネコの世話が重要なのか。


カウンターの女からは離れる。が店を出ずに、フロアまで踏み出してみる。

冒険者風情の者たちが酒を飲み談笑している。耳を傾けてみる。

男「あの新しい貼り紙、割が良さそうだぜ!魔物と戦わずに日給500ゴールドだってよ!腕っぷし鍛えててよかったよなぁ~。はっはっは!」

これが冒険者の会話なのか?よくわからない。


女「えぇー!マーディラスまでの用心棒なら絶対戦士より商人のほうがいいってば!

 商人なら馬車持ってるから楽ちんじゃなーい」

魔法使いっぽい女と僧侶っぽい女はそんな話をしている。カルベローナで散々クギを刺されていたことは、あっさりと無視されているのだとわかった。


女「ちょっと、あなたお酒飲むの?飲まないの?」カウンターの女は注文せずに滞在する客を煙たがっている。

ソ「あ、ごめんなさい!」ソロはもう出てくることにした。

ネコは一銭のカネも払わずに、サバの猫まんまやらチーかまやらを得ているようだが。裕福な街の人間は、人にモノを与えず動物に惜しみなくモノを与える。


強そうな人はみんなカッコいい、魔法を使える人はみんなすごい、冒険している人はみんな先輩、そんなふうに敬意を持っていたが、どうやらそういうものでもないようだ。自分も少しは強くなった、とも言えるが、強さの問題ではなく精神性の問題として、尊敬に値しない人もいる。

大きな街は華やかで素晴らしい、とも言えない。少なくともソロにとっては、このゲンキンでせっかちな街は性に合わないと感じた。

とはいえ、カレンとは違う街を何にせよ楽しみ、体感していきたい気持ちがある。何か上手くこの国の個性と交われればいいのだが。


選り好みしていても的確な情報をくれる善人はいないようなので、適当に道行く冒険者に安宿を尋ねた。2人目に聞いた戦士が、3ゴールドの安い宿はないが7ゴールドの相部屋ならある、と教えてくれた。この街は物価が高く、最安の相部屋でも7ゴールドするのだ。

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