第1章 ぐだぐだヒボンをさすらおう
えぴそーど1
兵「ま、魔王が、また襲ってきました!
今度は我らの姉妹都市ニュヨークが襲われ、壊滅しました!」
一人の傷ついた兵士が、城の玉座になだれ込んできた。
王「むむぅ。ついには世界最大のニュヨークまでが・・・。
我が国トキョーが戦火に飲まれる日も、遠くないやもしれぬ・・・」
兵「『ニュヨークの肩を持つ国はすべて敵とみなす!』
と、魔王は残しています!」
王「ニュヨークと結んだ安全保障同盟は、役に立ちそうもないな。
やはりこの国から、世界を救う勇者が立ち上がらなければならん!
説得に、チカラを入れねば!」
ここは西暦2103年のトキョー。トキョー・アリアハン。
2003年ではない。2103年だ。
新世紀のはじめ、世界は不穏な空気に包まれており、トキョーとて例外ではなかった。いや、楽観主義なトキョーの民は「どうにかなるさ」と遊びほうけてばかりいたが、ニュヨークの壊滅を見て、王はついに表情を硬くするのだった。
王は、城下町のとある民家に遣いを出した。
その家には、勇者の子孫が住んでいる。昔魔王を退治した勇者の、末裔が。
「城から訪問がある」と聞いて、勇者の血を引く少年とその家族は家で待機をしていた。こうした訪問はもう何度目か。5回は超えている。
兵「ついに世界最強と言われるニュヨークまでもが魔王に破壊されました!
どうか!どうか!!
そろそろ世界のために立ち上がってくださりませんか!!
勇者の血を引く少年・・・
の、妹さま!」
ヒ「・・・って、アタシぃぃぃ!!??σ(゚Д゚;;;;;)」
客人は兄に話したいのだろうと思って、アクビをしながらたたずんでいたヒナタは、思いがけず向けられた矛先に、目玉が飛び出るほど面食らう!
兵「はい、ヒナタ様!
お兄様の説得は過去5回も試みてもこの有り様。お兄様の引きこもりはもう、治りそうもありません。
すると、勇者の血を引きしはもう、妹さまのみです。
大丈夫です!魔法のステッキがきっとどうにかしてくれます!」
ヒ「いやアタシ戦いとかぜんぜんしたことないしっ!!」
兵「大丈夫です!滅びるときは皆一緒です!」
ヒ「いや励ましになってないしっ;つД`)」
兵「魔王討伐に成功した暁には、王様からイブさんローレシアのコスメが100年分、贈呈されるとのことですぞ!」
ヒ「うん?イブさんローレシアが100年分!?(・∀・)
流行りの香水もついてくる?」
兵「もちろんでございます!」
ヒ「うひひひ~♡あれ自分で買うと高いんだよねぇ~
うーん。悪くないなぁ」ヒナタは目を♡にしてニヤついている。
兵「ただでさえお美しいヒナタ様ですが、未来永劫、世界一の美人になってしまいましょうよ!美で歴史に名を遺すというのもカッコいいですなぁ!」
兵士は最後のおだてに渾身の力を込めて言うと、畳みかけるようにハイタッチを向けた。
ヒ「うぇーい!」ヒナタは反射的にハイタッチに乗じた!
すると!
差し出されたヒナタの手の親指に、兵士はすばやく何かの書類を押し付けた!
兵「よっしゃぁー出陣承諾書に母印を貰ったぞぉ!」
兵士はその紙を振り回しながら、一目散に城へと帰っていってしまった・・・。
ぽかーん( ゚д゚)
ヒナタは混乱している!
母「そう!魔王討伐の悲願はあなたが果たしてくれるのね!
ヒナ、お母さんはうれしいわ!うっうっうっ・・・!」母親はハンカチで涙をぬぐった。
兄はすでにテレビゲームの画面に夢中である。テレビゲームの中で、魔王討伐の旅に出ている。
ヒ「ア、アタシが・・・魔王退治・・・?( ̄▽ ̄;)」
まぁいいか。別に魔王討伐に成功なんぞしなくても、とりあえず旅立つ雄姿させ見せれば皆モンクは言わないだろう。したたかなヒナタはそう楽観した。こんな少女に魔王なんぞ倒せるはずもないではないか!
影山ヒナタ。15歳。
彼女は一介の高校一年生である。勇者の血を引いている・・・らしいが別に戦闘の訓練など受けたことはないし、怪力自慢だったりもしない。小学校時代はバトントワリングクラブで、中学校時代はバレー部だ。運動系の部活の中で一番練習がユルそうだったのでバレー部に入った。しかも2年の途中からはマネージャーだ!
仕方ない。まぁ遊び半分でやってみるか。きっと学校だって公休扱いだ!やったぜ!
ヒナタは兵士が置いていった書類を見ながら、荷造りを始めた。まずは王様に謁見に行く必要があるらしい。
ぼうけんのもちもの
じゅうようなものはとくになし はだぎを2~3くみ
コスメはポーチにおさまるはんいにとどめてね
こうすいはくさすぎないやつでおねがいね
ヒ「なんで平仮名ばっかり?(汗)
なんでコスメの話ばっかり?(汗)」
しかし持ち物は特に要らないのか。そうか、王様が旅立ちの餞別などくれるのかもしれないな。勇者たちはたしか、《どうのつるぎ》とか貰って旅立っていくんだ。ヒナタはRPGを少々やったことがある。