えぴそーど67
ミサトの言うとおりだった。
先程の人力車と同じようなしつこい人力車に、3度も4度も絡まれた。
それだけでない。道を歩いているだけで、「《薬草》は要らないか?」とか「こっちに安い宿があるぞ!」とか、「可愛い服が安く買えるぞ!」とかクドい勧誘をしてくる者が大勢いた。
「我は賢者だ。《ホイミ》で回復してやろう」と言って、セクハラしてくる老人もいた。白装束を着て豊かな白髭をはやし、本当に賢者のように見えるから厄介だ!
しかも道が臭くて汚いのだからかなわない・・・
ヒ「うぅ、歩いてるだけでHPが瀕死になる( ̄□ ̄|||)」
カ「私もシンドイ・・・」
ミ「そうなの。『撃退する』というより『受け流す』感覚を身に着けないと、ここらの町ではしんどいわ」
ヒ「これって魔物なの??」
ミ「いいえ、人間よ。普通の人間」
カ「魔王か何かに操られているの?」
ミ「いいえ、普通の人間」
カ「こわい町があるもんだわ・・・!!」
ヒ「でもちょっと楽しいかも(≧∇≦)」
ミ「うふふ。ヒナこれを楽しいって思えるの?
あなた、旅の素質があるわ(≧∇≦)」
カ「私は早く抜けたい~」
一行は色々な人に絡まれ、だまされたりしながらも、ようやく手頃な値段の宿を見つけてくつろいだ。
ヒ「えーー!!値段のわりにボロボロじゃん( ̄□ ̄|||)」
ミ「うふふ。これでもまだマシだわ。
私が昔、この町で安宿に泊まったときは、便器に便座が無かったり、部屋のカギがかからなかったり、窓ガラスが割れてたりベッドにシラミがわいたり・・・まるで廃墟のような宿がたくさんあったわ」
カ「えぇーーーΣ( ̄□ ̄|||)っとその体験だけで1冊本が書けるんじゃないの!?」
ミ「うん。うふふふ!それくらいカルチャーショックの連続だったわ!
でもね、当時の若者は、タカルコの町がそんな酷いところだと知っていながらも、訪れようとした人が結構いたの。冒険をしたかったというか、カルチャーショックを味わいたかったというか。
魔法や武器の冒険が禁止された時代だけど、でもその時代に出来うる冒険をしたがる人が、いたのよね。いつの時代も、冒険したがる人が一定数はいるのよね」
カ「ミーさんの話、面白いわ♪」
ミ「うふふ。ありがとう。あなたもたくさん冒険してきたじゃない?」
カ「私も冒険してきたけどさ。ミーさんは、私たち冒険者とは違う種類の旅をしてきたんだなって思う。それで、違うものを見てきたし、違うものを感じていたんだろうなって。
戦士や魔法使いのほうが多くの死線をくぐり抜けはしたんでしょうけど、でもミーさんのほうが思慮深い旅をしたのかなって思う・・・!」
ミ「カンナ本当に18歳なの!?18歳でそんなことを感じ取ることもスゴイと思う・・・!!」
カ「わかんないけど、私はいつも、なんか周りと違うことを感じていたような気もするわ」
ヒ「魔法使いってだけでフツーじゃないのにねΣ(゚□゚︎`)」
カ「魔法使いはフツーじゃないけど、でも魔法使いたちってそんな大人びてないなって思ってた。それでちょっと不満だったわ」
ヒ「そういう魔法使いが、賢者になるのかな!?」
カ「どうでしょうね。魔法使いの進化系は何なのかな」
ヒ「賢者じゃなくて勇者?」
カ「どうでしょうね。
・・・そういえば、ミーさんはあのギガモン天とかいう奴をすごい巧みに倒したけど、ミーさんは敵と戦う冒険者ではなかったんでしょう?」
ミ「そうね・・・
それもこの町の思い出にリンクするけど・・・
昔このタカルコに訪れたとき、あの時はまだ私も、お酒飲むのが好きでね。
この町で地元の人に『酒を飲もうぜ』って誘われて、何の気なしに着いていっちゃったの。
そしたら、泥酔した隙を突かれて押し倒されちゃってね!」
ヒ「えぇ、レイプってこと!?Σ( ̄□ ̄|||)」
ミ「そう。そういうこと。
私怖くて、おぞましくて、サバイバルナイフをそいつに突き立てて防戦したの。そしたらその人、死んじゃった・・・。
おそらく、死んだわ。
私は怖くなって、その場から逃げ出して、タカルコからも遠く離れたわ」
ヒ「すごい体験!!Σ( ̄□ ̄|||)」
ミ「正当防衛だとはわかっているけど・・・これで良かったのか、罪悪感みたいなものにさいなまれながら、しばらく苦悩しながら旅してたの。
そんなときに、以前立ち寄ったブターンみたいな僧院でね。
『もう酒は飲まないと誓うか?』って聞かれたの。
『もう飲まないわ』って答えた。
そしたら、《ベホイミ》の魔法とこのソードブレイカーを授かったのよ。
『人を殺すことは必ずしも罪深いことではない。ましてや正当防衛ならなおさらのこと。
人生には善悪をジャッジできないこともある。色んなことがある』ってね。そんな言葉と一緒に・・・。
そのおかげで私の苦悩は晴れたわ。
そして、ときには魔物だけでなく人とも戦う覚悟を持つようになったわ。
まぁ、なんていうか、私は自分を、善人とも悪人とも思っていないの」
カ「そこはシンパシー感じるわ。私も自分を善人とも悪人とも思ってない」
ヒ「アタシも自分を善人とも悪人とも思ってない(・∀・)」
セ「セナは、わかんない」
ヒ「えぇぇーー!!
魔王を倒すパーティーがこんなんでイイのかΣ( ̄□ ̄|||)」
カ「良いのかもしれないわ。
こういうほうが。
たとえば、神殿に夜中に侵入するようなことが、時には必要なのよ」
ミ「うふふ。タカルコってね、旅人それぞれがこんなふうに、いろんなことを思慮する町でもあるのよね。
多くの旅人が、そういう体験をするようなの。
この町のカオスっぷりが、ヒボンとの違いっぷりが、自分の心を見つめさせるのかなって思う。
『自分さがしの旅』なんていうのは、そういうもののことを言うんでしょうね・・・」