エピソード107
れ「女王様。私のほうからもお尋ねしたいことがあるのですが」
女「なんでしょうか?」
れ「先ほどおっしゃっていた『あの人』というのは?」
女「あぁ・・・!鋭い人ですね。些細なことも聞き漏らさない。
えぇ。あなたなら話してもよいのでしょう。
私たちガーデンブルグの民は・・・
ある一人の神と繋がっています」
れ「神様と!?」
女「はい。その名を、マスタードラゴンと言います。
銀色の竜の神です。
彼(か)の人は、天空の城からこの世界を見守っています」
マスタードラゴン。さっき娘たちが言っていた名前だ。
れ「天空の、お城・・・?」
女「はい。この世界の空には、ひっそりと城が浮かんでいます。
あちこちに伝説・伝承はあり、あなたも聞いたことがあるのではないかしら?」
れ「ただの迷信だとばかり思っていました・・・!」
女「それでよいのです。
世界がその存在を知ってしまえば、攻撃したり乗っ取ったり、良からぬことを考えますから。
『あるかもしれない』という伝承を繋ぎ集め、真の勇者だけがその姿を見つけるでしょう」
れ「へぇ・・・!」残念。私は魔法使いだわ。
女「いいえ、そういう意味ではないのですよ。
魔法使いだろうが僧侶だろううが、知恵と勇気のある者は、招待状を貰うやもしれませんわ」
れ「すごいお話です・・・!」
女「しかし、気を付けてくださいね。
実は、空に浮かぶ城とは、マスタードラゴンの城ただ1つではないのです。
遥か昔、アトランティスと呼ばれた文明において人類は、科学力で空に城や島を浮かせることに成功しました。その多くはもう朽ちてなくなってしまいましたが、未だ空に残るものもあります。
そこに住まうのは、マスタードラゴンでも天空人でもありません」
れ「はぁ」どのみちれいにはスケールの大きすぎる話だ。
れ「あ、もしかして、気球を発明して天空の城へ向かうのですか?」
女「いえいえ!うふふふ。気球では高度がまったく足りません」
れいは王の間から下がった。
ユーリはまだ付き添いを続ける。
ユ「学者のところに行きましょう。気球というものの話を聞いたほうが良いかと」
れ「そうですね。お願いします」
学者はやはり、城の中に研究室を与えられていた。
本や資料が積み重なる小さな部屋に、眼鏡をかけた女性がいる。
ユ「マゴットさん!この方が鉱山に赴いてくださるとのことです!」
マ「なんと!冒険者の方か。深く感謝申し上げます」
ユ「気球についてご説明が必要かと、こちらへお連れしました」
マ「そうだな」
学者のマゴットは幾つもの資料を見せながら、れいに気球というものを説明した。
れ「・・・なんとなくわかったと思います。
火で空気を温めれば空気が軽くなる。それはわかります。
継続的に火を焚くためにガスの壺が必要なのですね」
マ「何か必要な情報やものがあれば、言ってくれ」
皆れいに協力的だ。色々な聡明な人とスムーズに連携が取れることは、なんだか嬉しい。自分がその一員となっているなんて。
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