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エピソード10 『名もなき町で』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月15日
  • 読了時間: 4分

エピソード10

ようこママには、3人の子供がいる。二女一男。

ジェシーの子じゃないよ?元旦那さんとの子供さ。


子供たちは3人とも、ジェシーのことをジェシーと呼ぶ。

父親代わりでもあり、友人でもある。お母さんの新しい恋人を、全面的に受け入れてる。

かといって、週末にはよく、お父さんのマンションに泊まりにいく。

そうして2つの家を行き来し、2人のパパと仲良くしている。

彼らは、親権とか離婚とか、そういう上っつらなことにはサッパリこだわらないらしい。

「色んな恋愛があって、色んな家族があって、それでイイじゃん」

と、至極シンプルに捉えてる。

「離婚は不幸だ」なんて、彼らは一抹も感じていない。



一番上の子は女の子で、高校1年生だったかな。

割りとシャイな子で、お店にはあんまり顔を出さない。

家庭が複雑で、かつ裕福ではないことをしっかり理解していて、

「高校を出たら働いて、自分も家計を助けるつもりだ」と言ってる。

まだまだ遊びたい盛りだろうに、遊ぶことより家族の世話が優先なんだ。

それなりにオシャレにも気を遣う子だけど、

それは限られたお小遣いの中でもどうにかなると、理解しているらしい。

ようこママ自身、美しい容姿をしていながら、美容にはあまりお金をかけないからね。



2番目の子も女の子で、中学2年生だったかな。

この子はさらにシャイで、僕はさっぱり喋った記憶がない。

いつも黄色い服を着ていて、でもヒマワリみたいな性格はしていない。

黄色好きには明るい子が多いけど、例外もあるってことを学んだよ。

どちらかといえば、ようこママの紫色の質を強く継いでいて、

家事手伝いは二女ちゃんが一番やってくれるらしい。

賃金労働も家事労働も、どちらも赤い質だけど、

ようこママのその質を、2人の娘は半分ずつ引き継いでるようなフシがある。



3番目の男の子が、一番変わり者かな!

小学6年生にもなるのに、「海賊王になる!」と豪語してる。

ようこママはそれを笑いもせず怒りもせず、「えぇやんなぁ」と包み込む。

ようこママはとにかく器量が広いらしく、

彼氏や息子がどれだけドリーマーであっても、それをバカにしたりはせず、

むしろ、全面的にサポートしようとする。

生活全般を捧げて、全面的にサポートしようとする。

「あまったエネルギーで助けてあげる」わけでも「ヒマ潰しで助けてあげる」わけでもなく、

「ドリーマーを助ける」という作業が、ママの生活の大半なんだ。

その利他的な献身作業が、楽しくてしょうがないらしい。


かといって、

ようこママもまた、聖人君主という雰囲気じゃない。マザーテレサっぽくはない。

ようこママには、峰不二子みたいなある種のしたたかさがあるよ。

彼女の献身がハイクオリティであるためには、

逆に、そうした不二子ちゃんみたいな「汚」の質が重要だったりするんだ。

もっと綺麗な言い方をするなら、「少女性」と言ったらいいかな。

「母親性」に対比するところの、「少女性」だよ。性的な魅力と、性への興味さ。

人間に性欲が付き物であることを、ママはよく理解している。

だからこそようこママは、

ジェシーがいくらチエちゃんに鼻の下を伸ばしてても、気にしないでいられるんだ。

つまりさ?

立派な母親であるためには、逆説的に言って、

「少女であること」も大切だったりするんだよ。

ジブンの中の不二子ちゃんを、認めてかわいがってあげるのさ。


ようこママが言ってた。

「女の子が冒険しなくちゃ、意味がないのよ。

 冒険っていうのは、危ない旅のことじゃないよ?『フツウじゃない人生』ってこと。

 母親がフツウじゃない生き方をするなら、

 子供も安心して、自分らしく生きられる。

 母親が良い子すぎると、子供は自分らしく生きられないのよね。」

ようこママは、観音様くらい悟ってるよ。

 

家族の世話をしながら、

旦那でもない男の人の夢をサポートする。

さらに、その他大勢の夢をサポートする。

ようこママは、

母性愛の頂点を極めたような女性だよね。

こういうグランマンマーレみたいな女性が、

大分に確かに実在するんだよ。作り話じゃないんだ。



そして、お店に集まる女の子たちは、

みんな、ようこママを師匠のように仰ぎ見ている。

そして同じように、ミュージシャンを応援したり、福祉職に励んでいたりする。


ここはやっぱり、ライブハウスなんかじゃないのかもしれないよ。

「真の愛とは何なのか」それを教える、世界で唯一の寺子屋なのかもしれない。

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