エピソード125
潜入捜査のようなニュアンスが必要だろう、とれいは思った。
とりあえず、魔物を討伐して報酬を貰う、という依頼に乗っかってみるのだ。その中で見えてくるものがあるだろう。報酬が貰えればラッキーだし、別に貰えなくてもいい。
勇者の洞窟とやらに行ってみるか。
それを目的地として街の外に出た。しかし、洞窟の前に街の周辺にいる魔物たちですら手強いのだった。
武器や防具の強化が必要だ、とれいは思った。
街に引き返す。武器屋はさっき覗いたので、今度は防具屋に行ってみよう。まずは品揃えと値段の偵察だけでも。
街の大きな通りに、大きな防具屋はある。
見つけて近寄ると、また冒険者っぽい男に声を掛けられた。
男「おい、魔法使いか僧侶じゃねぇのか?一緒にタッグを組まねぇか!」
れ「ご、ごめんなさい。興味がないです」
まただ。何なのだろう?
首をかしげながらも、れいは防具屋に入った。
防「防具の店にようこそ!どんな用だね」
れ「魔物討伐の依頼を引き受けたのですが、この辺りの魔物が強いので、戦力強化をしたいんです」
防「あぁ、王様のおふれに応募してくれたわけだね。ありがたいかぎりだよ。
神様はドラゴンって噂だろ?
魔王もドラゴンだったっていうじゃないか。世界はどうなってんだろうなぁ」
れ「魔王もドラゴンだった?
ドラゴンと竜って同じ意味ですよね?」
防「そうだなぁ。ドラゴンと竜ってのは大体同じ意味じゃないか。
昔アレフガルドを闇に陥れた魔王も、ドラゴンだったって話だぜ」
れ「ドラゴンは神様じゃないのですか?」
防「神様をやってるドラゴンも、居るってハナシだろ。
ドラゴンのすべてが神だとか善だとか考えるのは、危ういぜ!
悪者のドラゴンなんざ、そこらにも大勢徘徊してるよ。
緑色のでっかい図体して、炎吐いて襲ってくる!狂暴なんてもんじゃねぇ」
れ「ドラゴンだから善、ドラゴンだから悪、というふうに考えてはいけないんだ・・・」
防「そりゃそうさ。人間だから善、人間だから悪、ってもんでもないだろよ」
そのとおりだ。種族も、人種も、国籍も、生まれた町も、その人を善か悪か定義する材料にはならない。どうしても、そういう色めがねで見てしまうが。
防「んで、防具を見にきたんじゃなかったのか?」
れ「あ、そうでした」
れいは店内を見渡した。武器同様、様々な品が揃っており、強そうなものがたくさんある。しかし、戦士向けのものがばかり、という印象だ。
れ「魔法使い向けのローブみたいのは、少ないのでしょうかね」
防「そうだなぁ。この辺りの土地は魔法使いが少ないからなぁ。
でもこの辺りの魔物は、どのみちローブだとしんどいんじゃないか?打撃攻撃の強いやつが多いぜ」
それはれいも感じていたところだった。何か画期的なローブなどないものかなと、期待したのだが・・・。
うーん。何かないかなぁ。
防「身軽な素材で守備力が高いものってのは、量販品では無理があるぜ」
やはりそうか。
れ「重たいものはあまり着たくはないのですが・・・」
散々思案してれいが選んだのは、なんと《シルバーメイル》という戦士用の鎧だった。
《鉄の鎧》によく似ているが、もっとスタイリッシュだし銀製の強いものである。魔法攻撃のダメージを少し軽減する、と品札に書いてある。
防「いいのか?それで。重たいぞ」
れ「はい。防具屋のおじさんにお願いがあります」
防「なんだ?マケろっつったってせいぜい200ゴールドまでだぜ」
れ「いいえ。
この鎧を壊すのを、手伝ってほしいのです」
防「はぁ!?」
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