エピソード127 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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エピソード127
鍛「いいけどよ、カネは取るぜ?これだって立派な仕事だよ姉ちゃん」
れ「は、そうか!」れいは名案に興奮していたが、お金のことまで頭が回っていなかった。今高価な鎧を買ったばかりである。
鍛「そうだな。3,000ゴールドだ」
れ「3,000!そ、そんなにするのですか・・・」
鍛「そりゃおめぇ、特注品作るんだからなぁ。教科書のない作業だしよ。失敗は許されねぇしよ」
れ「いえ、文句を付けるつもりはないのですが、あの、お金が足りないのです。
今この鎧を買って使い果たしてしまって・・・。残り1,000ゴールドくらいしか」
鍛「じゃぁ諦めるしかしょうがあんめぇ」
れ「でも、その、でも・・・
私、上等な鎧が着れないと、元いた街に帰ることすら出来なくなってしまいます・・・。このあたりの魔物は強いので」
鍛「うーん、命乞いされちまうと何も言えなくなっちまうよ。
そんなことばっかだから、商売あがったりでさぁ」
あぁ、鍛冶屋さんも困っているのか!
れ「では、あの、前借りというのは出来ませんか?
後で必ず、お金を払いに来ます!この鎧を着れたら魔物を倒してお金稼げますから」
鍛「3,000ゴールド?貯められんのか?姉ちゃんが?」
れ「は、はい。私一応、冒険者なんです。遠い国からここまで一人でさすらってきました」
れいは《破邪の剣》と《いかずちの杖》を物質化して見せた。《破邪の剣》を俊敏に振り回して見せる。
鍛「ふうん。ただの姉ちゃんじゃありませんよと。そうかぁ・・・」
れ「あの、私、王様のおふれにご協力するんです。
ラダトームをお守りするために戦うんです」
鍛「そうなのか?」
れ「はい!」
鍛「そうかぁ。そりゃありがたい話だなぁ。
よしわかった。前借りで許してやるよ」
れ「あ、ありがとうございます!」
鍛「明日の朝取りにこい。最優先でやってやるから」
ふう!どうにか改造してもらう約束をこぎ着けた。実際これが通らないと、れいはこの先しんどい。
お金を前借りするなどこれまで体験したこともない。体験したくもないと思っていたが、背に腹は代えられないのだ。たまにはいいか、と自分に言い聞かせる。人を懸命に説得するなどというのも、れいには珍しいことだった。そういうことはあまり好きでない。でもそれも、背に腹は代えられない。
街の中心へと引き返す。宿屋を探してゆっくりしよう。
そして歩いていると、武器も新調したかったことを思い出した。さらにお金が要る・・・!
あれ?防具より武器を先に買うべきだったのではないか?とれいは青ざめたが、もう仕方がない。何太刀要するとしても、地道に魔物を倒していくしかないな。根気ならあるはずだ。どうにかなるだろう。
翌朝、鍛冶屋まで鎧を取りに行く。
鍛「ほれ、出来たぞ!夜中までやったんだ。苦労したんだからな」
れ「ありがとうございます!格好いいです!」
れいは早速、特注の《シルバーメイル》を装備してみた。鉄の板で守られていない部位もある。内側には引き続き、《くさりかたびら》を着こむことにした。
鍛「なるほどなぁ。なるべく軽く、守備力を上げるぞと。いいんじゃないか!」
大体イメージ通りの成果にはなったのだが、やはり少々重い。次はこの重さでもこれまで通りの俊敏さを発揮できるように、体を鍛えねばと目標を持った。そうだ。目標を持ったほうが気合が入る。