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エピソード12 『トランク1つで生きていく』

エピソード12


一番几帳面なのは、ひょっとするとコウセイくんかもしれない。

几帳面というか、彼はよく「リスクマネージメント」という言葉を口にした。

「りすくまねーじめんと?」私には聞きなれない言葉だった。

「そう。『リスクへの対応策』ってこと。

掃除と昼食を終えて、

コウセイくんの案内のもと、京都のお寺巡りに出かけた。

「諸行無常って知ってる?何でも移ろい変化するって意味でさ。」

「割れない茶碗は無いってこと?」

「そうそう。まさにそういうこと!

 だから、茶碗が割れたときのことを、割れる前から考えとかなきゃ。

 それか、割れない茶碗を用意するか、ね。」

「木の茶碗は割れないんですよ。」

「そうだね。それいいアイデアだね?

 でもまぁ、割れるかもしれないでしょ。燃えるかな。壊れる、うん。

 だから、茶碗のスペアを用意しといたほうが良いんだよ。割れる前から。」

「茶碗の話なんですか?」

「…じゃないことはわかってるでしょ?

 家もそうだし、仕事もそう。

 『壊れない家なんて無い』って思っておいたほうが良いし、

 『潰れない会社なんて無い』って思っといたほうが良いんだよ。

 だから、それを前提に家を考えるべきだし、壊れたときのスペアも用意しとくべきなわけ。

 会社潰れたときのこと考えて、ほかの収入源も作っておくべきなわけ。」

「それが、リスクマネージメント?」

「そう。そういうこと。」

「たとえばハナちゃん、ライターの仕事やってるって言ってたけど、

 ほかにも仕事やっといたほうが良いと思うよ。

 いつライターをクビになるか、わかんないでしょ?

 ヘルパーでも給料入るけど、あれは微々たるもんだから、

 もう1つ他にも、ね。何でもいいと思うよ。コンビニでも。」

「でも私、ここにずっと住みたいわけじゃないし…」

「あそうか。じゃぁ単発か短期の仕事探せばいいよ。

 求人誌見れば、いくらでも載ってるから。

 とりあえず寝床と食材あるから、時給安くても問題ないっしょ?

 それもリスクマネージメントの1つだよね。給料安くても暮らせるようにするってこと。」

「うんうん。」

「こういう対策しといたら、何が遭っても辛くないと思うよ。

 家失くしても仕事失くしても、絶望したりしなくなるよ。

 お気に入りのモノ失くしたって、代わりがあればそんなに辛くないよね。」

「うん。」私は、メグちゃんのことを思い出して、深くうなずいた。



『トランク1つで生きていく』

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