エピソード132
「3つの神秘なるもの」を集めれば、魔の城に渡り竜王と対峙できるらしい。
しかし私は、ラダトームの民を助けるべきなのだろうか?ラダトームの王を助けるべきなのだろうか?
あまりそこに正義感が湧いてこない。
「3つの神秘なるもの」とは何だろう?それはどこにあり、どうやって手に入れるのだろう?
れいにとってこれは、人助けではなくて推理小説を解くようなニュアンスとして、目的となっている。「世界の様々なものが見たい」という好奇心を、それを満たしているだけだ。
それでいいや、とれいは思った。「世界を見たい」という動機は「カネが欲しい」という動機と大差ないのかもしれない。それでもいいや。だって、誰を助けるべきなのかわからないし。あまり強くもないし。
私はもう少し、世界を見たい。
私はもう少し、強くなりたい。
私はもう少し、自分を試したい。
れいは洞窟からラダトームに帰る途中、《トヘロス》の魔法を会得した。
これは《聖水》と同じ効果で、一定の時間魔物を寄せ付けにくくなる効果を持つ。たとえばこうしたダンジョンに探索に出たい場合、なるべく体力や魔力を温存したいものだが、《トヘロス》を唱えておけばなるべく万全に近いかたちでダンジョンに辿り着くことが出来る。ダンジョンを踏破してボロボロの体で街に帰りたいときも有効だ。
ただし、ダンジョンの中ではこの魔法は効果を発揮しない。
僧侶が覚えることの多い魔法だ。
ラダトームに戻ると、宿屋で休息をした。店主に尋ねてみる。
れ「この辺りに、『伝説を語る賢者』、みたいな人はいませんか?」
すると、ラダトームの城の中にそういう学者じみた人がいる、という情報を得た。
もう夕暮れ。城の中に入るのはしのびない。
よく戦った日の晩は、お肉をしっかり食べたくなる。
賑やかな街を歩いて、少し豪勢な肉料理を平らげた。
宿への帰り道、この街でも吟遊詩人を見かけた。銀色の竪琴を、ピラピラと爪弾きながら歌っていた。
吟「世界一周をする者は~ 星の数ほどもいる~
だけどどこで何をするかは~ 人それぞれに違う~
どこで誰に話しかけるかはぁぁ~ 人それぞれに違う~」