エピソード136
森の中にひっそりと、祠はあった。
カ「ブライさん!ブライさん居るの?」カーラはれいを差し置いて駆け出し、祠の扉に向かって叫んだ。
ブ「誰じゃ一体・・・」
老人は顔を出し、そして来客が2人の女性であることに大層目を丸くした。
ブ「誰じゃ一体!?」ブライは来客者の顔を見てもなお、同じ疑問を抱くのだった。
カ「ブライさん私よ!忘れちゃったなんてことはないでしょう?
マイラの村のカーラです。あなたのお友達だったでしょう?」
ブ「カーラ・・・?あのカーラちゃんか?」
カ「そうよ!私よ!
このれいさんっていう旅人に連れてきてもらったのよ!」
森という大きな川を渡ってきたの!」
ブ「どうしてまた!?」
・・・本来用事があったのはれいなのだが、カーラは自分のことに必死だ。まぁいいか、とれいは思った。カーラの望みを尊重してやることはとても重要なことと思えた。
ブ「ねぇ、温泉事件のこと覚えてる?
あなたが嫌われ者になっちゃったときのことよ。
そのことを最近私、思い出しちゃったの。
それであなたのことも思い出しちゃったの。
ブライさん!わたし・・・
あなたの味方だったのよ!」
ブ「どういうことじゃ?」
カ「ブライさんは温泉を、みんなの家庭に引くべきだって言ったわ。
でも村長も他の人も、温泉のお店を造りたがった・・・。
私、あなたの考えが正しいって思ってたの。
でもね、それを言い出せないまま、あなたは村を出ていってしまった・・・」
ブ「あぁ・・・」
カ「ブライさん。わたし・・・、わたし!
あなたを、愛していました!
それを伝えずに、死ねないって思ったの!」
ブ「なんと!」
カーラはたまらず、ブライをきつく抱きしめた。
カ「ごめんなさい!ごめんなさいブライさん。
今じゃあなたのことなんてすっかり忘れて、毎日温泉に浸かるの。ごめんなさい」
ブ「良いんじゃよそんなこと。
何も謝る必要なんてない。
カーラちゃん。わしはこんなに嬉しいことはないよ」
ブライはカーラを抱きしめ返し、頭の後ろをぽんぽんと優しく撫でた。
カ「うぅ、ひっく、うぅ・・・じゅるじゅる」カーラは堪らず泣き出した。
カ「ブライさん?こういうときはね、頭に優しくキスをするのよ」
ブ「おぉそうか!すまんすまん。気が利かんものでなぁ」
ブライはカーラの期待通りに、頭に優しく口づけをした。
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