エピソード13 『トランク1つで生きていく』
- ・
- 2023年3月9日
- 読了時間: 2分
エピソード13
コウセイくんが連れていってくれたのは、伏見稲荷大社だった。
朱い鳥居がいくつもいくつも並んでる、CMとかでよく見るあの神社!
「わぁ、私ここ、見てみたかったんです!」
「そうだと思ってさ。たいていみんなそうだから。
ちょっとハイキングになるけど、大丈夫?」
彼は私の体力と気力を伺うと、鳥居の山道を登っていった。
「うわー!チョーすごいー!」
私は子供みたいに興奮して、写真を撮りまくった。本当にどこまでも、鳥居が続いている。
「『千本鳥居』って言われてるけど、5,000本くらいあるよ。はは。」
「数えたんですか?」
「子供のころ、ね。」
「千本鳥居って、誰が作ったんですか?歴史に出てくる偉い人?」
「いや、そこらの社長たちじゃない?」
「え?」
「裏側、見てみなよ。」彼は後ろを振り向き、鳥居の裏側を指差した。
鳥居の裏側には、平成○○年うんぬんという年号と、色んな会社の名前が刻まれている。
「この鳥居ってさ、企業からの献金で増えていくんだよ。
大金納めたら大きな鳥居作ってもらえるし、小額ならミニチュア作る。」
たしかに、山道の途中のほこらには、鳥居のミニチュアが無数に散らばっている。
彼は続ける。
「献金すると、鳥居に社名彫ってもらえるでしょ?
そしたら、たくさんの観光客に、アピールできるってわけ。
この鳥居って、電車の中吊り広告みたいなもんだし、
神社への企業献金って、売名行為みたいなもんだよね。ぶっちゃけ。」
「そうなの!?善意で寄付してるんじゃないの?」
「善意だったら、献金先に伏見稲荷は選ばないと思うよ?
もっとお金に困ってるお寺や神社、日本中にたくさんあるもん。
存続の危機になってるようなとこだって、幾つもあるよ。
善意なら、そういうところに寄付したほうが良いんじゃね?
伏見稲荷に献金したって、誰の役にも立たないよ。
企業のアピールと、伏見稲荷のテーマパーク化が進むだけでさ。
千本鳥居、見てて面白いとは思うけど、あんまり神聖視しないほうがいいよ。」
私たちは、途中の茶屋でお団子を食べて、それで引き返してきた。
鳥居のトンネルはまだまだ続いていたけど、もうお腹いっぱい。
最寄りの駅まで戻ってくると、コウセイくんとは別行動になった。
コウセイくんは、昼間は「万屋」でアルバイトをして、夜は居酒屋で働いている。
何で居酒屋なの?と訪ねると、「まかない出るから」と言っていた。
また、「どこの町に行ってもツブシが利くから」とも言った。
やはり「リスクマネージメント」を考慮しているらしい。
『トランク1つで生きていく』



