エピソード173
れいが村長の話に聞き入っていると、一人の少女が目の前に現れた。
れいを見てニコニコと微笑んでいる。
少「お爺さま。遅くなりました」
町「あぁ、問題ない。
これはわしの孫娘じゃ。
リッカ。挨拶をなさい」
リ「はじめまして。村長の孫のリッカです。うふふ。
他所の人を見るのは何年ぶりかです!」
れいと同じくらいの年の頃か。ボブカットがよく似合っている。
り「私はれいです。西の大陸からやってきました」
リ「まぁ、西の大陸から!後でお話をたくさん聞かせてください!」
町「リッカはわしの孫娘じゃ。
女だが、そのうち町長を継ぐかもしれん。
いいや、すでにこの子は、東メボンの大きな命運を動かした」
リ「もうお爺様!幼い頃の話はよしてください」
町「東と西が分断し、東の民がどうすべきか揺れた頃。わしは町長ではないがリーダーの立場にあった。
精霊ルビスが『地下に町を造って隠れよ』と言ったとき、どうすべきかとても迷った。
そのときな、ふとこの子に、どうしたいか尋ねた。
『かよわい女子(おなご)は、どうしたいか?どこか遠くに逃げるか?それとも、神様の言うとおりに大きな町を造るか?』とな。
するとこの子は満面の笑みで、『町を造りたい』と言った。まだ5歳かそこらだ。意味などわかっていなかったかもしれんがな。
しかし即答で『町を造りたい』と微笑んだ。
わしはその笑顔を見て決めた。その笑顔に未来への希望を見出した。
わしが年老いて死んでも、この子が町造りをやり遂げるのではないかと、親バカならぬ爺バカだがな。しかし希望が湧いたのだよ。託したいと思えるものがあるというのは、大切なことじゃ」
リ「もうお爺様!リッカは何もわかっていなかったんです!」
町「そうかもしれぬがな。しかしこの子は、親や大人の仕事を何でも手伝った。色々なことに興味を持った。
それを見て、やはり町造りを牽引する素質があるのではと思った」
れ「リーダーシップではなく、お手伝いを見て、ですか?」
町「そうじゃ。リーダーに必要なのはリーダーシップではない。少なくともメボンの復興においては。
家作りも、畑作業も、機織りも、何の作業も嫌がらないことじゃ。
この子は民に対して、何をすべきか率先して背中を見せるじゃろう。さすれば人はついていく。
この子は何でも楽しそうに作業する。さすれば人は、仕事を楽しいと思う。
・・・薪割りだけは、なかなか上手に出来なかったなぁ?」
リ「もーぉ、お爺様ったら!」リッカは顔を赤くしている。
町「わしはこの子に、希望を見出した」
リ「うふふ。何も考えていないだけなのです。遊んでいるだけなの」
町「だけどな。この子が村長になると決めたわけではない。
女は弱い。すぐ不安になるし、戦うチカラも弱い。それはリーダーに適していないかもしれぬ。
この子には教育を施すが、他にも優れた者が育つかもしれぬ。
誰が町長を担うか、それはそのときにしかわからぬこと」
れいは黙って話に耳を傾けていた。
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