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エピソード17 『天空の城』

エピソード17


れいは街散策を辞めて、外に出て魔物と戦うことにした。お金稼ぎだ。

サントハイムの周りはテンペよりもやや強い魔物が徘徊するが、荷馬車に乗った際に商人がこの辺りの魔物と戦う様子を見させてもらったゆえ、そう怯えずに挑むことが出来た。


《ホイミ》や《薬草》を使えば体力を回復することは出来る。がそれは無限ではない。

《薬草》の8ゴールドは、一般的には冒険者たちからすればはした金である。しかし全財産が100ゴールドばかしのれいにとって、8ゴールドとて馬鹿にできない金額だ。あまりぽんぽんと《薬草》を消耗するわけにはいかない。

サントハイムの手頃な宿屋は一晩4ゴールドで泊まれる。《薬草》よりも回復効率は良いが、2時間の戦闘でもう宿屋、というわけにもいかない。

とにかくれいは、体力を上手く節約しながら戦わなければ、と考えた。


魔物に遭遇すると、持ち前の頭脳を働かせながら観察し、弱点と思しき場所を攻めることで、なるべく少ない労力で倒すよう努めた。

「お金も体力も倹約する」という考え方は、結果的にれいを戦い上手にしていくのだった。この時のれいに、そんな目的意識は皆目なかったが。

一般的な冒険者たちは、ただ豪快に剣を振り回すだけだ。ボンボンと魔法を放って興奮しているだけだ。れいは少し違った。

クレバーでスマートな冒険者・・・の片鱗をもう見せ始めていた。



それにしても、おかしい。

ローズの孫娘らしく、魔法をバンバン撃って魔物をやっつける冒険をイメージしていたのだが・・・。サランの村のチャンバラ少年のように懸命に剣を振り回して汗を飛ばしている自分に、なんだか切なくなるのだった。

しかし、この無垢な初期段階から懸命に剣を振り回したことによってれいは、「剣を振り回す戦いも出来ないこともない」という自信を得るのだった。

もし、サランの村の村長に《メラ》でも伝授されていたなら、箸より重いものなど持てない軟弱な冒険者になってしまっていたかもしれない。



「おぉ、私ったら結構強いぞ!」と慢心しそうなその時だった!

大きな狂暴なサルの魔物が襲い掛かってきた!マンドリルだ。

れ「ひぃぃぃ!」その大きな体格や狂暴な表情にもう怯えてしまうが、動揺してもいられない。とにかく突撃だ!

しかし!

勇敢に攻め入っても、相手の間合いに入る前に奴の長い腕がれいに届いてしまう!れいは懸命に身をかわす!奴の動きは緩慢なので、落ち着いて対峙すればかわせることは多いのだが、如何せん刀身の短い《聖なるナイフ》では、相手の間合いに入っていけない!

正面からぶつかっては埒が明かないと読み、れいは残った気力を振り絞って俊敏に体を動かした!相手の背後に回ってから攻撃!攻撃したらすぐに撤退!ヒット&アウェイを全力で繰り返し、どうにかこうにか難敵マンドリルをやっつけた。


ふぅ!れいは大粒の汗をふいた。

なんとかマンドリルを倒せたが、コイツがたびたび出現するのであれば、命の危険がある。

れ「やっぱり武器の新調が必要だわ」

れいは街に戻った。宝石を両替え屋に持っていくと、350ゴールドほど貯まっていた。

れ「なんか色々買えそうだわ」れいはワクワクした。

まずは武器屋だ。

予算としては300ゴールドの《青銅の剣》も手が届くのだが、れいはこの数時間の教訓として、刀身の長めの剣が欲しいと感じた。よって《銅の剣》を買うことにした。

鈍く茶色く光る新しい剣を掲げてみる。うん。ちょっと格好いいぞ。勇者様みたいじゃないか。

しかし武器屋は、さらにアドバイスをするのだった。

武「もう少し、魔物退治を繰り返したほうがいいかもな。

 いや新しい武器を買えってんじゃないんだ。

 その大きな剣を振り回すには、もう一回り腕力がいるよ。この辺りの魔物を相手にそのトレーニングをしたほうがいいだろうな」

なるほど。確かにそうだ。

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