エピソード18 『名もなき町で』
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- 2023年3月15日
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エピソード18
ホント、奇跡みたいな展開だった!!
僕、ゲストハウスの管理人、やってみたかったんだよ。
それが今、一銭の資金投資も必要とせず、目の前に転がり込んできた(笑)
ここは、イザリーヌという名前のキャンプ場だった。
キャンプ場なる施設が、四国にはあっちこっちにあるんだ。
でもこのイザリーヌは風変わりで、
キャンプ場とは名ばかりで、実際はゲストハウスに近いんだ。
管理棟には、10畳の和室が2つと体育館ほどの広間があるので、
テントよりも屋内に寝泊りする客が多いんだよ。実質、ゲストハウスなんだ。
ただ、ゲストハウスとしてのお客もほとんどおらず、
専任の管理者を付けるほどの金銭的余裕もない。
だから、伊座利に移住してきた新米さんたちをメインに、
村人たちが交代交代で、片手間で管理してきたらしい。
その現管理人が、加藤さんだったんだ。
すると加藤さんとしては、
雑事から解放されて、好都合だったことだろうさ。
といっても、この加藤さんはとても善い人で、
村の雑事を面倒くさがるような人でもナイんだ。
だから、管理業務を譲渡したといっても、
ほとんど毎日のように様子を見にきてくれて、
あれこれ親切に、教えてくれた。
タコ八よりもずっと優しいので、僕にとっては大助かりだったよ。
管理人というのは立派な労働なんだけど、
かといって、賃金は貰えない約束だった。
タコ八は、「住民票をこの村に移さないかぎり、賃金は出さない」と言った。
住むところのない僕に風雨しのぎをさせるために、
管理業務という条件付きで、管理棟のベッドを与えたんだ。
食事に関しては、キャンプ場の経費から食材購入だけが認められた。
外食は禁止。ジブンで自炊すべし。
タコ八は、
「そんな無報酬な条件では長居するはずもないだろう」
と踏んだらしかった。
でも、僕にとってはこれで充分だった(笑)
ゲストハウスの住み込みスタッフなんて、たいていどこも無給なんだ。
それに、僕は報酬など期待していなかった。
ゲストハウス・スタッフが経験できるだけで夢のようだったし、
それに、お金の介入しない暮らしを確立したかったのだから。
このキャンプ場には広大な敷地がある。
ゆくゆく農業にも取り組んでいけば、エコビレッジを造ることだって、
夢ではないと思えたんだ。
『名もなき町で』