エピソード192
翌朝。朝食を食べる前にもひと稽古始まる。
バ「じゃぁそろそろ魔法の訓練もしよっか♪」
れ「はい!」ワクワクするが、どうせワクワクするようなものではないような気もする・・・。
小屋の裏側に行くと、小石がたくさん山積みになっている。
バ「これ昨日、れいちゃんが走ってる間に拾っといたんだけどね。
これ今わたしがあっちこっちに投げるから、《メラ》で仕留めてみて」
はい、いくよー!
れ「えー、ちょっと待って!」しかしバーバラは待たない。
バ「ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい・・・」
あっちこっちに小石を放り投げる。
れいは指令通りに《メラ》を放つが、動いている小さなものに上手く当てるのは難しい!
バ「だって敵の図体がいつもハッサンみたいにデカいとは限らないからね」
れ「ハッサン?」
バ「ほら無駄口叩かなーい!」
れ「えーん」
バ「それに相手の弱点をピンポイントで狙えるぐらいになっておかなきゃ。
魔法はある程度、自動追尾してくれるんだけど、それに甘えてちゃダメなの。
二流と一流の差がそこに出るわ。
ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい!
連射する体力があるのはいいことだけど、無駄に連射する魔法使いは二流よ。
一流の魔法使いは動く相手に対しても1発か2発でちゃんと仕留める。目とか鼻とか小さな弱点もね。
その気になったら《メラ》でもオークを動けなくさせられんだから。
ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい!」
れいのメラはまだ10発に1発しか当たらない・・・
朝ごはんを食べると、また魔法の訓練だ。
バ「攻撃魔法の威力を高める方法、知ってる?」
れ「座禅瞑想を重ねることです」
バ「半分正解。それ以外にもあるのよ。あまり知られてないけどね。
まぁこれも瞑想の一種なんだけどさ」
れ「はぁ」
バ「じゃぁ、右手で《メラミ》を撃つ準備してみて」
れ「はい」れいは右手に魔力を溜めた。手のひらで炎が大きくなっていく!
バ「じゃぁ次は左手にも~」
れ「えぇ!」れいは戸惑いながらも、左手にも炎を溜める。
しかし敵もカカシも近くには見当たらないが・・・
バ「その魔力をぉぉぉ・・・
撃たずにそのままキープ!」
れ「えぇ!あ、熱いです」
バ「大丈夫。自分の魔法で自分は焼かれないから。
そのまま10分耐えてみようかぁ~」
れ「じゅ、じゅっぷん!」いつも想像より桁が1つ違う!
れ「ううううううううう・・・」
体のあちこちがむず痒い。じっとしているのに息切れがしてくる。汗がどんどん出てくる。そして体力が消耗していくのを感じる・・・
やがて・・・
ボン!れいの両手の炎は、れいの意思に反して勝手に弾けてしまった。
バ「コラぁ!まだ4分しか経ってないじゃない~」
れ「もうクタクタです~」
バ「きゃはははは嘘よ。4分でも結構すごいわ。落ち込まなくていいよ♪
これ、特殊な瞑想なのよ。これやってる間は他に何も出来なくなっちゃうからナンだけど、でもそんな地味な行為が実は攻撃魔力を上げるの」
朝食後にして早々に魔力がなくなってしまったので、座学の時間となった。
魔物の系統による特徴・弱点の傾向なども頭に叩き込む。
れ「えぇっと、植物系は、《メラ》や《ギラ》などの炎の魔法でダメージを与えやすく、《マホトーン》や《マホトラ》などが効きにくい傾向。
悪魔系は間接攻撃全般が効きにくい傾向、攻撃魔法もダメージが軽減されてしまうことが。強い魔物が多いから要注意で・・・」
こうした特徴の傾向を把握していると、初対面の敵でも大ダメージを与えやすい。
そんなふうにして、バーバラのスパルタ教育は朝から晩まで毎日続いた。
そして何日経ったかわからなくなる頃、れいの修行期間は2か月にも達した・・・
バ「ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい!」
バフ!バフ!バフ!バフ!バフ!バフ!バフ!
バ「あらぁ~大分当たるようになったじゃない!」
真面目なれいは、着々と成果を出していた。
バ「そろそろ行ってきてもいいんじゃない?魔王退治♪」
れ「そんな軽いノリで言わないでください・・・」
バ「重苦しく言ったって難易度は変わらないもの。
弟子の門出をいかに笑顔で送り出すか。メンタルケアも師匠の大切な仕事なのだぁ~」
スパルタでありながら笑いに満ちており、たしかにメンタルケアの非常に上手い師であった。
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