エピソード197
れいは崩落する瓦礫をかいくぐりながら、広間を奥へと抜けていく。広間の奥にはテラスがあり、そこから中庭に出られる。その奥にはもう1つ屋敷が建っている。
天空城の入口のように大きな扉を、れいは自分でこじ開ける。
「外が騒がしいなぁ。城を壊さないで頂きたいもんだが」
こちらの広間には玉座があり、薄気味悪い生き物が鎮座している。いいや鎮座は出来ない。
龍の骸(むくろ)のような体をした、禍々しい槍と盾を持つ怪物だ。
れ「魔王クシャトリアか!」
れいは剣を構えて吠えた。
ク「魔王?よしてくれよ。開拓者と呼んでくれ。
この星を、観光地にしたいんだ。
美しい星だよ。海に山に湖に。観光資源がたくさんある。
我らの星から旅行者をわんさか連れてくる。
そのために人間が邪魔なんだよ。なんかチカチカしたネオンも邪魔だ。
我らは悪なのか?
貴様らも同じようにして、他の惑星や島を侵害しているが?
似た者同士だと思っているが。人間はバカだから、駆逐する。
貴様らがキャンプ場のクマを駆逐するのと同じだよ。
くくく似た者同士だ。でも邪魔だ!」
ジャキン!クシャトリアは槍を構えた!
魔王クシャトリアが現れた!
れいは《奇跡のつるぎ》を構えて斬りかかった!
れ「やぁー!」
しかし!
ガシャ―ン!れいは、ガラスのような見えない壁に阻まれた!
れ「うぐっ!」
ク「余は何者と刃を交えるのか?
それすら知らずに戦いが終わるのは美しくない。
余が相手をするまでもない」
天井から4体の巨人が飛び降りてきた!大きな鉄球を持った鬼人だ!
鉄球魔人がれいの前に立ちふさがった!
ことごとくこちらを消耗させてくる!
れ「私の長所は、謙虚なことだ。
自分が一番だとは思っていないから、人の知恵を混ぜ合わせて生きている。
《ベギラゴン》!」
れいは《ベギラゴン》を唱えた!鉄球魔人たちに強烈な炎の帯が襲い掛かる!鉄球魔人たちは巨体からは想像もつかない身軽さで飛び上がってかわした。
《メラガイアー》!」れいは立て続けに《メラ》系の極大呪文を繰り出した!凄まじい豪火が鉄球魔人Bに襲い掛かる!飛び上がった隙の敵はれいの豪火を避けきれない!
ブフォー―――!!鉄球魔人Bをやっつけた!
鉄球魔人たちが反撃に繰り出す!れいは鉄球の波を、身軽な武闘家のように俊敏にかわしながら、敵陣に入り込む!
そしてなんと!
鉄球魔人Bの鉄球を拾い上げた!
れ「《バイキルト》!」れいの攻撃力が上がった!
れ「うぉぉぉ!!」デイジーのように野性的に雄たけびをあげると、やはり壁に向かって駆けだした!そして城の壁を殴りつける!
ドゴォォォォーーーーーン!!!
もう1発!
ドゴォォォォーーーーーン!!!
もう1発!
ドゴォォォォーーーーーン!!!
こちらの館も天井が崩れ落ちてくる!瓦礫の雨が魔物たちに襲い掛かる!
ぐぁぁぁ!!鉄球魔人たちは大きなダメージを負い、さらに身動きがとれない。
れいは天井の崩壊をくぐり抜けながら建物の淵まで逃げ去る!いいや、思惑通りにいかない!瓦礫の雨は避け切れそうもない!
どうする!?
れ「《バギムーチョ》!!」れいは《バギ》系の極大魔法ですさまじい風圧を生み出し、強引に瓦礫の軌道を捻じ曲げて身をかわした!
天井のないところまで逃げ伸びる。奴らの武器はれいに届きようもないが・・・
れ「《マヒャデドス》!!」怯んだ奴らの隙を突き、今度は《ヒャド》系の極大魔法を部屋全体に叩き込んだ!
ピシャーーーー!!!
この部屋はもうまるで天変地異である・・・!!!
鉄球魔人たちをやっつけた!
しかし!
魔王クシャトリアはまったく傷を負っていない!
れ「なんてこと!」
ク「いいや効いてるよ。憎たらしい奴だ。
城を壊されて不機嫌だと言ったそばから、心の傷口に氷をねじ込んでくるとはなぁ。
もう潜伏は終了だ!
人類滅亡の開幕だ!!」
宮殿を壊していい気味だが、奴の怒りに益々火を着けてしまったようだ!