エピソード199
れ「一か八か・・・
食らえ!とっておきの極大魔法!!
《ベホマ》!!!」
れいは両の手に回復のエネルギーを膨張させると、それを乱暴にクシャトリアに投げつけた!!
ジュワ――――!!!
すさまじい奇妙な音を立てて、クシャトリアの体が溶けていく!奇妙な煙を上げる!
ク「お・ぉ・ぉ・ぉ・ぉ!」
デ「効いてるぞ・・・!」
れ「《ベホマ》!《ベホマ》!!」
そのとき、れいの体がほのかに青白く光った!デイジーはそれに気づいた!
デ「《ベホマ》!
れい!おまえ何か新しい魔法が撃てるぞ!」
れ「むぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・
《ベ・ホ・マ・ズ・ン》!!!」
ぐしゃぁぁぁぁ!!!
クシャトリアの体躯は、気味悪く溶け去っていった!!!
クシャトリアをやっつけた!!!
地底の洞窟は、ようやくしんと静まり返った。
れ「はぁ!」れいはその場にへたり込んだ。
れ「疲れたというか、なんというか」
デイジーは座り込んだれいにハイタッチを向けた。パシ!
デ「よく頑張った。疲れたはずだよ。心も体も。
洞窟を抜けるところからずっと連戦してきたんだろう?」
れ「えぇ。でもずっとそれを見据えて鍛えてきたの。
デイジーに言われたことよ。連戦できる体力がなけりゃ始まらないって」
デ「強さとはタフさのことだ。そしてタフになれば、何事も恐れなくなる」
れ「・・・!そんなこと、お婆ちゃんも言ってた気がするわ」
デ「超一流はな、見た目の派手さにこだわらないもんだ」
れ「戦うこと、勝つことにあまりこだわらない人間だから、ここまで来れた気がするわ。遠回りを、遠回りと思っていなかったから」
デ「・・・こんな辛気臭い話をしているほど人生は暇じゃないぜ」
れ「あぁそうだ!ごめんなさい!
デイジーの旅の途中で、私を助けるために中断させてしまって!」
デ「いやいいんだよ。
結局《はやぶさの剣》は見つかっていないんだがな。
《はやぶさの剣》を探すというのは、実を言えばさすらい続ける口実にすぎないんだ。
帰りたい家もないし、帰れる場所もないからな。
この洞窟を抜けるのもそれなりに楽しかったぜ」
れ「楽しかったの!?
ふふふ。余裕なのね」
デ「さぁ帰ろう。こんなところにずっと居たくはないだろう」
れ「そうね。今から洞窟を抜けるのは大変だけど・・・デイジーがいるならなんとかなりそうだわ」
デ「《リレミト》があるだろう?一瞬で地上に帰れる」
れ「《リレミト》??」
デ「なんだ《リレミト》を知らないのか?
おまえの師匠は《イオグランデ》を教えておいて《リレミト》を教えてないのか!
ちょっと抜けてるんじゃないかそいつは」
れ「抜けてるかも。ふふ」
デイジーの《リレミト》で、2人は洞窟の奥から脱出した。《ルーラ》の応用技のような魔法だ。洞窟やダンジョンの奥深くから、入口に瞬間移動することが出来る。
出てきた場所は、クレージュの南東にある山肌だった。
そして二人を待ち受けていたのは!
なんと、大きな銀色の竜が現れた!
デ「なんだと!もう復讐が始まったのか!」デイジーは疲れを知らずに剣を構えた!
れ「待って!悪い竜じゃないわ!」
マ「はっはっは。
我が名はマスタードラゴン。
よいよい。権力者への無礼など、私が人間の頃も腐るほと犯したものだ。はっはっは」
デ「マスタードラゴン・・・!
天空の城に住むと言われる竜の神か!?」
マ「戦い疲れたそなたらを迎えに来た。さぁ天空の城へ帰ろう」
れ「マスタードラゴン自ら!?」
マ「最も安全なタクシーだ。
・・・むむ?
そちらの戦士はまだあまり疲れていないようだな?自分の足で帰るか?」
デ「勘弁してくれ!」
れ「もう!私の大切なお友達に失礼なことを言わないでください!」
マ「はっはっは。失礼を言ったつもりはないのだがな。
すさまじい戦士に対する、私なりのじゃれ合いだ」
デ「察している」
マ「はっはっはっは!」
れ「え!?」れいにはまだ、身につけなければならない技術があるようだ。
2人を乗せたマスタードラゴンは、ゆっくりと上昇する。優雅に大空を舞いながら、2人に世界の風景の美しさを堪能させながら、天空の城へと帰還した。
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