エピソード1 『名もなき町で』
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- 2023年3月16日
- 読了時間: 2分
更新日:2024年1月12日
エピソード1
あれは、5年年のことだったかな。
いや、4年前かな?どっちか忘れちゃった。5年前だ。タブン。
まぁ、どっちでも良いことなんだよ。
4年前か5年前かで、この物語が大きく変わったりはしないんだ。
仮に4年のことだったとしても、「5年だ」って言っとく。
嘘だよ。テキトーだよ。そうさ、それで良いんだ。
1つだけ言えるのは、
僕がまだペンジュラムを回す前の頃の話だってことさ。
霊視も霊聴もないよ。ガイド霊から逐一アドバイスを貰える状態ではなかった。
そういう頃のハナシさ。
そもそも、全てをありのままに描くことなんてできやしないんだよ。
小説っていうのは、そういうモンさ。
作者都合か読者都合に合わせて、どっかに嘘やデフォルメをはさまなきゃなんない。
それなのに小説家って生き物は、
それがいかにも実話であるかのように、リアルな表現を追及したがる。
でも彼らが、技巧を凝らしてリアリティを追求すればするほど、
僕からすれば、アホくさい。
リアリティを誇示すればするほど、作家はペテン師だってことになるからね。
だって彼は、実際には南極探検なんかしていないんだからさ。
だから僕は、小説というツールがあんまりスキじゃない。
リアリティを誇示しようとするのは、逆に不自然で、そして不誠実だよ。
だから、子供向けの絵本とかアニメのほうが好きだ。
アレはもう、「完全にデフォルメです」って潔いからさ。
…ホールデンみたいに、どうでもいいことベラベラ語っちゃったけど、
小説ってのはつまり、そうじゃなくちゃいけないのさ。
ストーリーなんかどうでもいいのさ。
肝心なのは、そのストーリーを通じて、何を伝えるか。何に気付くか。
人生に活かすために、小説ってのは存在しているんだ。
…そうだったはずなんだよ。「イワンのバカ」や「人間失格」やなんかは、
そうした意図でもって、描かれてる。
でもいまどきの小説ってのは、「通勤時間用のヒマ潰し」でしかない。
だから、思想なんてどうでもイイんだ。
読者ウケしそうな不倫や推理や、正義を描くだけさ。
または、ヒッキーウケを狙って、ただただ世を憂いてみたりする。
『名もなき町で』



