エピソード20 『トランク1つで生きていく』
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- 2023年3月9日
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エピソード20
話は続いた。
「そういう点から言うと、
私もう、沖縄にもトキメかなくなっちゃってて…」
「それって、『沖縄に』じゃなくて、
『那覇に』か、または『まりりんに』じゃなくて?」
「あ、そうかもしれないです。まだ沖縄ぜんぜん見てないです。」
「沖縄の全部が国際通りみたいなわけじゃないから、
もう少しいろんなところを見て周ったらいいと思うよ。」
「でも私、観光目的で沖縄に来たってわけじゃないんです。
観光もしたいけど、暮らしがメインなんです。
もうベッド代はタダじゃなくなっちゃったから、前より働かなくちゃ。
観光ばっかりもしていられないんです。」
「そうだね。ノマドやってるんだもんね。
暮らしと観光が7:3くらいなその感覚は、言ってることよくわかるよ。
もっと落ち着く町や宿を探してるってことでしょ?」
「そうですね。『まりりん』にずっと居たいとは思えなくて…」
「与那国島とか、どう?
キレイな目をした男の人が、優しい宿をやってるよ。
1泊2,000円で泊まれるし、婆ちゃんが食事サービスしてくれたりするんだよね。
気前がいいんだよ、すっごく。儲けなんてぜんぜん考えてないの。」
「与那国島って、どこにあるんですか?」
「西の西だね。日本の果て。むしろ台湾に近いね!」
「えー、ちょっとイメージ沸かないなぁ…」
「離島はまだ、ハードル高いかな?
じゃぁ南城市は?沖縄本島の東側。」
「それは近いんですか?」
「うん。バスで1時間くらいで行けるよ。
観光地も観光客もあんまり多くないから、落ち着けるよ。
そこで最近、僕の友人が民泊始めたんだよね。女の人だよ。」
「民泊?」
「そう。ゲストハウスをさらに小じんまりさせたようなもんかな。
『家族を超えた家族を作りたい』って、彼女も言ってる。
ハナちゃんさっき、『自分から申し出て助け合うのは楽しい』って、言ってたでしょ?
同じようなことだと思うね。きっと気が合うよ。」
「いいですね。1,000円で泊まれますか?」
「いや、1,000円じゃ厳しいな。
1,000円で泊まれるのは、沖縄でも那覇だけだよ。
それ以外だと、ドミでも2,000円はするね。」
「2,000円かぁ。1ヶ月で6万円…
私、月に10万くらいしか稼げないんです。バイトすればいいかな、また。」
「どうにかなると思うよ、今なら。」
「今なら?」
「うん。まだ彼女、始めたばっかりでね。
お客さんいないから、安い値段でも泊めたがるんじゃないかな。
『ときどき店番するから、3万でお願いします!』とかお願いしたら、
案外OKしてくれるんじゃないかな?」
私は、タカユキさんのお友達に連絡を取ってみました。
タカユキさんの予想通り、1ヶ月3万円でもOKしてくれました。時々の店番付きで。
けれど私は、
すぐに新天地へ向かったりはしませんでした。
タカユキさんという人と、もう少し話してみたかったから。
『トランク1つで生きていく』



