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エピソード20 『名もなき町で』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月15日
  • 読了時間: 2分

エピソード20

スタッフは僕一人しかいないわけで、

すると、業務は全て、僕が行わなければならなかった!

接客や電話対応はもちろんのこと、

会計帳簿も僕がつけなきゃならないし、

シーツ交換のみならず、敷布団もベランダまで運んで日干ししなきゃいけないし、

掃除は広大な敷地すべてをやらなきゃならない。

僕はまず、管理棟全体の大掃除から取り掛かった。

あまり手入れは行き届いておらず、管理人室のカベなんてカビてて臭かった。

僕は、管理人室だけでなく、建物中の床と壁を水拭きした。

掃除だけでなく、タコ八は、

草刈りを僕に命じた!

草刈りっていっても、しゃがんでチョチョっとやるようなのじゃなくて、

ワッキーがギャグでやってるようなヤツだよ?

重たい草刈り機を首から提げて、広大な面積の草を刈るのさ。

管理棟の床掃除は、3日に1ぺんもやれば綺麗に保てるんだけど、

草刈りは大変だった!

「夏休みには客が増えはじめるから、それまでに終わらせとけ!」

って、今もうすでに7月15日だよ?

イザリーヌは無意味に広く、

テント張り用の棚田跡地もちまちま刈らなきゃならないし、

その下にあるサッカー場くらいの広さの多目的広場も、刈らなきゃならない。

刈ったらその草を焼かなきゃならないし。とにかく大変さ。

そういや一度、

草焼きの火が茂みにまで燃え移りそうになって、あやうく大惨事になるとこだったよ(笑)

連日、炎天下の中を5~6時間も、

汗を滝のように流しながら、一人孤独で、

草刈りと格闘していたよ。

コレは本当に大変な作業で、

肉体労働に慣れたおっちゃんたちにはどうってこともないんだろうけど、

もやしっ子の僕にとっては、相当に骨の折れる作業だった。

かと言って、

やってるとだんだん、面白くなってくるんだ(笑)

草刈り機自体がオモチャみたいなところがあるし、

いかに綺麗な刈り跡で刈れるか研究するのも、面白い。

そして、一通り遊びたおしたなら、

頭をカラッポにして、とことん草を刈る。ある種の瞑想だよ。

タコ八は、

僕が思いのほかまじめに頑張るから、ビックリしてた。

僕は、頑張るよ。監視されてなくたって頑張る。

だって、この辺境の地の、さらに集落からも離れたこの僻地じゃ、

ヒマつぶしになるモノなんて、何もありゃしないんだ。

テレビなんか管理棟には無いし、ケータイの電波も限りなく弱いし、

パソコンも無ければ本も無い。

ギターが1本転がってたのが、せめてもの救いだよ。


『名もなき町で』

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