エピソード25
町「1つ、君に頼みがあるな」
れ「何でしょう?」
町「さっき君がすれ違った、強そうな冒険者たちだが、また町で見かけたら、町長のところに寄るように言ってくれないか?『頼み事がある』とな。『報酬はすごい魔法だ』とでも言っておいてくれ」
れ「わかりました」
町「あぁ、もう1つ君に、忠告をしよう」
れ「はい。何でしょう?」れいは襟を正して町長に向き直った。
町「悲しいことなんて、すぐに忘れてしまったほうが良いんだよ。
いつまでも思い返すなんて、そんなの白髪を増やすだけだ」
町長は優しく微笑んでいた。どことなくサランの村長にも似た表情をしていた。多くの子供を見守る、博愛的な親の表情だ。
れいは、悪事を暴こうとした勇気と引き換えに、故郷に帰れなくなった。
しかしその悲運と引き換えに、《メラ》と《ヒャド》の魔法を手に入れた。
物事は、幸か不幸か一概には言い切れない。にわかには判別できない。今日の出来事の1つ1つは、壮大なモザイク画における小さなタイルのようなものだ。そのタイル1つで泣き叫んだり、結論を語るのは、馬鹿げている。
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