エピソード26 『トランク1つで生きていく』
「私、恋愛があまり良いものだとは思えないんです。
人生の足を引っ張るだけのような気もするし…」
「それはきっと、ハナちゃんがまだ、
良い男性と恋愛したことがないからよ。
恋愛とひとくちに言っても、色んなのがあるじゃない。
良い恋愛もあれば悪い恋愛もあるわ。
お金持ってる男の人がいい男ってわけではないし、
カッコイイ男の人がいい男ってわけじゃないのよ。
恋愛ドラマはさんざん、『そういう男に気をつけて!』って警告してるのに、
どうしてもみんな、お金持ちや美男子ばかり、もてはやしてしまうのよね…。」
「どんな男が、いい男なんですか?」
「ウフフ。愛のない結婚をした私が言っても、
説得力がまるで無いかもしれないけれど…
あなたの内面をほめてくれる男性は、逃しちゃいけないわ。」
「内面。」
「そうよ。
きっとハナちゃん、もてると思うわ。
男の人たちみんな、ハナちゃんのこと、
『かわいい、かわいい』って言うでしょう?」
「いや、あんまり言われないですけどね。」
「ウフフ。謙遜しなさんな。
でも、外見ばっかり褒めてくる男性っていうのは、
ハナちゃんの外見の魅力が衰えてきたなら、もう冷たくなっちゃうのよ。
せいぜい30才か、あとは出産を機に冷たくなる人が多いのかな…。」
「トキメキを感じなくなったら、恋愛するのをヤメればいいんですよ。
私つい最近、そう教わりました。」
「それも間違ってないんじゃないかしら。『飽き』っていうのもあるしね。
トキメキって精神論じゃないから、良心ではどうにもならないのが事実よね。
でも、恋愛関係をやめたあとも、
友人として、親友として付き合っていけたなら…
それってとても、ステキなことだと思わない?」
「あ、いいですね。
恋愛の終わりと同時に口も利かなくなるのって、なんかすごくむなしいです。」
「友人として末永く付き合うには、内面的な共感が大事でしょうし、誠実さって大切よね。
でもね?
誠実なだけじゃダメなのよ。真面目なだけじゃダメ。
どうしても恋愛の恍惚を感じるには、トキメキの要素が不可欠なのよね。」
「そう思います。生真面目な男の人に、恋愛感情は感じない…」
「でしょう?
すると、『誠実だけどえっちな人』をいかに見つけるかだと思うのね。
えっちなだけの男の人もダメ。絶対にダメ。
妊娠させられたり、人生をボロボロにされちゃう。
だから、飲み会や出会い系サイトで男探ししたらダメなの。絶対不幸な結末になるから。
お酒に誘ってくる男の人にも、ついていったらダメ。
何のために女をお酒に誘うか、わかるでしょ?酔わせて押し倒すためだもの。
『良いワインがあるから』とか言ってても、本心は酔わせることなの。
えっちなこと楽しませてくれるっていうのは大切なことで、
でも、それでいながら誠実な性格している人が、理想的なのよね。」
「そんな男の人、いるんですか?」
「いないのよ!ぜんぜん。
その2つの要素を兼ね備えてる男の人って、100人に1人くらいじゃない?
だからこそ、そういう男の人を見つけたら、逃さないようにしなくちゃね。」
タカユキさんみたいな人だ。きっと。
「私、週末ごとに束縛されるようなことがイヤなんです。
前付き合った彼氏とも、それが原因で別れたんですけどね。」
「だったら、『週末に束縛しない人』を選んだらいいんじゃない?
その条件に合わないなら、いくらカッコイイ人でもお断りしたほうが良いのよ。
誠実さっていうか、性格がイマイチっていうことなの。そういう人は。
性格のいい人は、ハナちゃんを束縛したりしないわ。」
「そっか。束縛されるのが当たり前ってわけじゃないんですね。」
「でも、そういう男性を選ぶなら、
ハナちゃん自身も『束縛しない女』にならないとね。
『束縛しない男の人』って、たいていその人自身も、軽やかに自由に生きてるから。
自分だけ自由に遊んで、相手を束縛しようとしてしまうなら、
そういう恋愛って上手くいきっこないのよ。
1ヶ月で終わるでしょうし、こじれてケンカ別れしてしまうわ。
後味の悪い恋愛って、恋愛期間すべての印象を悪くしちゃうから、最悪よね。」
「恋愛マスターですね、麗子さん。美人ですもんね。」
「そそそそんなことないのよ!
私そんなに、恋愛経験豊富じゃないの。
ただ、一度転んだら、同じ石ではつまづかない、
そういう学習能力はあるほうだとは思うけれど。良くも悪くも慎重だったからね。
私が、自分の経験から力説できるのは…
『尽くされる喜び』と『トキメキ』は、まったくの別物だっていうことね。」
「尽くされたって、きゅんきゅんはしない。」
「そう。
女性の抱く恋愛欲求って、いろんな種類があるのよね。
白馬の王子様がどうとか言うのは、『尽くされたい欲求』よね。
お金持ちな人にいろいろ買ってもらったり、豪華なホテルに連れていってもらったり、
働かなくても暮らせるように、守ってもらったり。そういう願望。
それを基準に男性選びしている女性が多いけれど、
恋愛にまつわる欲求って、それっばかりじゃないのよね。
きゅんきゅん…じゃなかった、
『トキメキ欲求』は、どんなに尽くされてもどんなにお金持ちでも、満たされないの。
だから、『セレブな奥さまほど不倫する』なんて、統計調査が出るんだわ。
『トキメキ欲求』は、尽くされるのを待ってるだけじゃ満たせないし、
口説かれるのを待っているだけじゃ、満たせないのよ。
『あ、ステキだな』と感じる男性がいたら、自分からアプローチしなきゃ。
メールして、電話して、デートに誘うの。
好みの男性と二人っきりになれたり、目を見つめあったり、手をつないだり、
トロけちゃうほどの…その…アレをしたり…
とにかく親密になることで、『トキメキ欲求』はようやく満たされるの。
これほどの恍惚ってないわ!ブランドの服とかどうでもよく思えてきちゃう。
写真眺めてるだけでも少しはきゅんきゅんできるけど、
それはむしろ生殺しっていうか…思いを募らせてしまうだけなのよね。
だからアイドルのファンの子たちは、何年でも何十年でもオッカケてしまう。
コンサートやプロマイドだけでは、『トキメキ欲求』が満たせていないからよ。
もっと身近なところに、トキメキ感じられる男性を探すか、
あるアイドルにしかトキメキを感じられないなら、
その人のマネージャーになるくらいなつもりで、とことん努力するしかないんじゃないかしら?
結婚できなくてもいいのよ。一夜の恋でもいいの。
『ステキな人と溶け合いたい!』という欲求が人間にはあって、
それを満たすためには、結婚とか年収とかどうでもいいことなの。
そして、その欲求をないがしろにしてしまうなら、
人生って、むなしいままなのよ。」
「麗子さんは今、恋愛をしてるんですか?」
「ウフフ。私は今、軽やかに生きる練習中。」
『トランク1つで生きていく』



