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エピソード6 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年11月1日
  • 読了時間: 4分

更新日:6月15日

エピソード6


れいは行き先を変えて、村から丘のほうへとゆるやかな傾斜を上っていった。

空はよく晴れていて、空気は清々しい。絶好のピクニック日和という感じで歩いていて楽しいが、なんと、魔物の生息が変わってきた!

スライムに混じって、大ねずみやドラキーがれいに襲い掛かってくる。

大ねずみ
大ねずみ

大ねずみは体の大きなねずみである。か弱い乙女からすると、見るからに怖い。それは害獣として有名で、村に出没すれば強い者に駆逐を依頼するものだ。そしてドラキーは、見た目はかわいいが空をひょいひょい飛び回るコウモリのような魔物である。

ドラキー
ドラキー

スライムは一撃で倒すことが出来るのだが、大ねずみもドラキーも、れいが先制攻撃を仕掛けたところで倒しきることが出来ない。敵から反撃を喰らう頻度が非常に増えるのである。

れいは攻撃されることにあまり慣れておらず、戸惑うのだった。

引き返したほうがよいのだろうか?

そうも思ったが、今さら「帰ってきちゃいました」はやはり気まずい。背伸びをして頑張るか、とれいは腹をくくった。


七転八倒しながら歩いていると、やがて水の流れる音が聞こえてきた。

れ「何かあるわ!」

れいは少し興奮し、そして駆けだした。

すると眼前に、まるで地球を2つに分かつような大きな谷が、お目見えするのだった!

谷底には川が流れており、それがさわさわと聞こえたのだ。

そして、谷のこちらと向こうを繋ぐのが、ボロボロの吊り橋なのだった。

れ「これが吊り橋の試練ね!」

谷が大きいなら、吊り橋も大きい。

ゆうに50メートルはある。しかしとてもボロい。そして、縄ではなく植物を結って作られているのだった。

れ「大丈夫なの?この橋・・・」れいは一気に不安になった。

だからこそ試練として大きな威力を持つのだろう。

Copilotに描かせてみた吊り橋
Copilotに描かせてみた吊り橋

橋の入口に立ち、さらに面食らう。

なんと、床板がない。普通、橋には床となる板が張ってあり足場となっているが、この吊り橋にはそれがなかった。幾重にも結った植物の縄があるだけだ。

手すりになっているのも結った植物。足場も結った植物。そういう造りのものだった。

れいは恐る恐る、一歩を踏み出す。

ぎぃぃぃぃ!

吊り橋は恐ろしいほど大きくたゆんだ!

れ「えぇぇぇぇ!」

怖い!

引き返したいが、引き返すわけにもいかない。

進むしかない・・・

一歩、また一歩進むたびに、橋は大げさなほどぎぃぃと鳴り、そして大げさなほどたゆむ。

手すりがあるから怖くない気がする、と思ったのだが、もはや両手でしっかり手すりを掴んでいないと、すぐに谷底に落ちてしまいそうなものだった。

足の平衡感覚を試されるものかと思ったが、それだけなく、体を支える腕力が試されていた。その持久力が。

ぎぃぃぃぃ、

ぎぃぃぃぃ、

ぎぃぃぃぃ、

奇妙な音をたてながら、少女は空を歩いていった。

一体これは、もう旅のクライマックスなのだろうか!?れいは頭が真っ白になる。


「歩き方に慣れてきた」と思った頃、視界に谷底が入った!

さぁさぁと鳴っていたはずの谷底は、真上までくるとドゥドゥと獰猛な音を立てて暴れている!

れ「ひぃぃぃぃぃ!」

怖い!

途端に足がすくみはじめた。

足がすくむとは、足が震えて自由が利かないのである。

どうする!?後ろを振り返るが、橋の入口までももう15メートルはある。戻るのも辛い!

震える手足を、力強く、でも慎重に進める。

はぁ、はぁ、はぁ。落ち着け、私!

ぎぃぃぃぃ、

ぎぃぃぃぃ、

ぎぃぃぃぃ、

れ「落ち着けば、大丈夫よ!」と自分に教わり、少々安心したそのときだった!

キキ―!!

なんと、ドラキーが背後から襲い掛かってきた!

ドラキー
ドラキー

れ「きゃー!!」

れいは堪らず駆けだした!

残りの30メートルを、あっという間に駆け抜けていくのだった。

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。れいはへたり込んだ。

れ「し、死ぬかと思ったわ!!」

ドラキーはもういない。人間の状況や心理をわかったうえで、いたずらを仕掛けるのだろう。

野生動物と魔物なんて大した違いはない、と思っていたが、魔物のほうがやはり厄介なのだな、とれいは気づいた。

それにしても、10秒に一歩ずつしか歩けないと思っていた難所を、ものの数十秒で30メートルも駆け抜けた自分に驚いた。

「出来ないと思い込んでいても、出来るのかもしれない・・・?」

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