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第39節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』

  • 執筆者の写真: ・
  • 8月27日
  • 読了時間: 10分

第39節


旅立ちの準備をしなくてはいけない。

いつの間にか、お金は貯まっていた。稲作の仕事を最後まで全うするかたわら、目抜き通りに出てナイフやカバンを買った。ノアは、少々の装飾品を買うことも許された。


下宿で世話をしてくれている百姓にはどう話そうか?身近な人であればあるほど、「もうすぐ旅立つ」と告げつつ真相を隠すのは難しい。モモなら上手くやるのかもしれないが、ユキやノアはそれが上手ではない。2人は少し胃を痛めながら、普段よりも少々話し方がゆっくりになりながら、懸命にとりとめなのないことを話してどうにかやり過ごした。西の村に行ってみる、ということになっている。


1週間の後、2人は下宿を出た。

最初に泊まった宿に顔を出して、ルドマンを見つけるか、そうでなくとも宿主に一言挨拶でもしたいものだが、それをぐっと堪えた。話せば話すほどボロが出るから、誰にも何にも言わないほうがいい。


北の浜に出る。そして東へと岩礁を伝っていく。

本当に舟が待ち構えているのかな?少々不安にもなるが、疑いながら歩くのはまったく得策ではない。信じて、何も考えずに進むほうがいい時もある。

しかし、舟はちゃんとそこにあるのだった。

ノ「ツビットさーん!」ノアは恩人の名を呼ぶが、人影はない。

ユ「あの人は旅立ちにも立ち会わないつもりか」なんて冷たい人なんだ・・・とユキは思わない。

旅立ちはいつも、盛大なパーティを開いて、泣きながら抱擁を交わすのが愛なのか?そんなことはないのだ。


静かな旅立ちに、慣れることだ。

そうじゃないと生きてはいけない。自由に生きてはいけないから。

2人は静かに、その地を発った。



いいや、静かではなかった。本当は。

2人は潔く旅立ち、浜を振り返らなかったが、本当は今日ばかりは振り返ってもよかったのかもしれない。

2人が舟を出した直後、その岩場には小さな歌声が響いた。


君の前に広がる道は 果てしなく遠く

旅立ちを決めるのは どの阿呆の頭か


宵闇は昨日の棘を洗い流し

朝焼けは未来を照らす 大丈夫だよ と


君の前に広がる海は 果てしなく遠く

航海は後悔のもと どの魔法も効かぬよ?


宵闇は昨日の恐れ忘れ流し

朝焼けは背中を押す 大丈夫じゃなくとも と


君の前に広がる世界 果てしなく広く

旅立ちを決めるのは 阿呆な歌のせいか

旅人を助けるのは 阿呆な誰かなのだ


「はは。ちょっと遅かったか。

 夜更かしのクセも直さないとなぁ」

旅立ちの歌を捧げたのは、そう、モモだった。

踊り子モモちゃん 『世界のはじまり ~花のワルツ~』
モモ

なぜモモは、2人の旅立ちを知っていたのだろうか?「そんなことを聞くのは野暮だ」と彼女は言うだろう。

彼女は海の向こうを眺めながら、小さい声でささやいた。

モ「はは。これはあたしの勘にすぎないが・・・

 2人の旅は、まだずっと長いよ。きっと。

 あんたたちが思っているよりも、ずっと、ね」


モモは目を閉じると、胸から静かに大きく息を吸い込んだ。

彼方に向かって右手をぴんと伸ばす。

モ「未来へ挑まんとする若き魂に、光あれ・・・!」



荒波をかいくぐってでも自分らしく生きようとするあなたに、光あれ・・・!



あとがき


このお話は、構想としてはまだまだ続きます。4倍くらいの長さのお話が、頭の中にあるにはあるのですが、ここで終えてよいかなと判断しました。

次の島からは、戦いがはじまるのです。ノアが女の子ながらに剣を持って戦ったり、国と国同士の戦いのお話が展開していきます。しかし戦いの連続はもう描かなくてよいかなと思うのです。

タイトルの『世界のはじまり』はダブルミーニングになっており、このお話の冒頭のコーミズ村の暮らし自体も、人間が知性と文明を持ち始めた頃のことを描いています。

そしてノアとユキは、貨幣社会、資本主義社会、戦い、戦争、魔法、テクノロジーなどを世界中で見たのち、「やはりお花に囲まれたシンプルな暮らしをすべきだ」という結論に至って、新たな土地に国を拓いて終わります。

文明の発展が飽和に達し、はじけるのを目の当たりにしたあとに「素朴な暮らしを選ぼう」という結論に至る、そのラストシーンもまた「(次の)世界のはじまり」なのです。



執筆ウラ話


主要キャラプロフィール♪


ノアちゃんフラ衣装 『世界のはじまり ~花のワルツ~』

ノア

13歳 3月24日生まれ

154センチ 40kgくらい

好きなもの:躍ること、フルーツ、協力(文化祭的なニュアンスのものが好き)、笑顔の人に安心する


ユキさん 『世界のはじまり ~花のワルツ~』

ユキ

20歳 5月24日生まれ

175センチ 60kgくらい

好きなもの:トゥーラ、打楽器、知的探求、年上の人としゃべること、訓練


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モモ

20歳 2月2日生まれ

163センチ 45kgくらい

好きなもの:踊り、オシャレ、装飾品、手芸、音楽、旅、おしゃべり、異文化、アウトローな人



ノアはなぜクルクル回る?

ノアをクルクル回らせたのには、2つの意味があります。

ノアは踊り子として鍛えたので、常人よりも遥かにたくさんクルクルと回れるようになります。このクルクルは、後に彼女の戦いの武器となります。次のイースター島ではそれが描かれる予定でした。「ダンサーは実は強いよ」ということを、このお話でも描こうとしていました。


またこのクルクルは、ある種のトランス状態(霊感現象)を呼び起こす人がいます。体質によります。イスラム圏のスーフィーダンスという文化が実際に、クルクルを霊的な修行として取り入れてきた歴史があります。トルコやエジプトあたりに行くとその名残のダンスにお目にかかるかも?


「ノア」の名は『ノアの方舟』からきている

ヒロインのノアの名前は、旧約聖書の『ノアの方舟(はこぶね)』の主人公からとっています。

ノアは、霊聴のとおりに行動した末に、その妻と子だけが大洪水を逃れ、新しい文明を築いていって始祖人です。


モーセ村長は生きている!

旅立ちの際、体を張って巨大魚から2人を守ったモーセ村長。

イカダは大破しましたがモーセ村長は生きているので、ご安心ください!

未だにひっそりとクマから村を守っている人ですから、お爺さんでも強いのです。しかし命に換えても2人を助ける覚悟でしたし、自分が死んだらテオが村長を引き継いで問題ないだろう、と楽観もしていました。


なんで「世界で最初の人類」がたくさんいるの?

「この村は世界で最初の人類が降り立った由緒正しき村だ!」と言う人が、あちこちに出てきましたね。この謎も、次のイースター島で島のお爺さんに語らせる予定でした。

実際に、世界を旅していると、「ここが世界で最初の人類だ」と言う村や島が幾つもあります。そしてその言われから、神格化されています。

これはどういうことかいうと、「その島(地域)においては、その村が一番最初の人類の村だった」ということなのです。昔の人びとは飛行機も船もありませんから、遠い国のことなど知りません。自分たちの島こそが「世界」だと思っていたのです。


ノアとユキは恋仲??

野暮なハナシですが、気になっている人は多いのでしょう(笑)

最終的に、2人は明確に恋仲になります。ノアがユキに思いを打ち明け、ユキは喜んで受け入れます。

なので、二次創作的にノアとユキがイチャイチャする姿を描いたりしても問題ないです♡本編の挿絵には、できないかな(^▽^;)


モモの探し人は父親ではない

踊り子モモは「人を探しながら5年もさすらっている」と言いました。彼女が探しているのは、愛する父親ではありません。

ノアは旅立ちの朝に「手をつなぐことを恐れないで」という啓示の夢を見ましたが、同じようなことをモモも体験しました。モモは父親への恋心を打ちのめされたとき、啓示を受けます。「あなたは父親によく似た男性を、旅の中で見つけるでしょう。どうか絶望しないで。ふふふ、どうせ蝶のように生きたい魂なのだから」と。

そして、実は・・・


モモはなぜ2人の旅立ちを知っていた?

本編では「聞くのは野暮だ」と濁しましたが、直接的に書いてしまえば、モモとツビットはお友達なのです。ツビットから2人の旅立ちの日を聞かされていました。モモはツビットのような人間が好きです。モモはニライカナイに来てから、ツビットが魚のウロコを市場に納めるのを手伝っています。



人は泳げたほうが良い!

物語に込めたメッセージは幾つかあります。その中でも明言しておきたいのが、「人は泳げたほうが良い」ということ。色々な面で、人間というのは一通り泳ぎが出来たほうがよいです。

ひと昔前までは、水泳は義務教育の過程で一通りたしなめるものでした。しかし現代では、「暑い」「危ない」「老朽化」と様々な理由から、水泳教育が絶滅してきています・・・。

「川は危ないから立ち入り禁止!」ではなくて、流れのある川でも遊べるくらいの体作りを、しておいたほうが良いのではと切に思います。

100円で入れるような市民プールが、全国で減少しているという事態も、寂しいなぁと思っています。



過去世の繋がりは今作にもある。

ドラクエのキャラとの過去世の繋がりが、今作にも存在しています(あくまで私の中での設定であり、ドラクエの公式設定ではありません!)


踊り子モモはドラクエ4のマーニャの前世

踊り子のモモは、ドラクエ4の踊り子マーニャの前世です。

マーニャの魂は前世の段階から、戦いながら旅をする度胸と強さを持っていました。彼女の魂は、誰か孤独な聖者を助けたいと願って、次はドラクエ4の勇者の「導かれし者」として生まれました。

彼女はそういう男性が好きです。もしドラクエ4の勇者が旅路の果てにまた孤独になるなら、彼女は勇者を愛して生きる思いで生まれました。


村長ミネアはドラクエ4の占い師ミネアの前世

ニライカナイの村長ミネアは、真面目で誠実な村長を務めました。しかし堅すぎる面がありました。踊りや音楽など、物的でない芸術・芸能に価値を認めない人で、その感性が原因でモモとも衝突します。ミネアは若い頃に自身も踊りをたしなみましたが、懸命に頑張っても代表グループには選ばれなかったのでした。そして踊りが嫌になってしまいました。

ミネアがモモを嫌ったことで、この村はイネの害虫飢饉に見舞われます(モモは「小麦も育てたらどうだ?」と提案したがミネアはそれを突っぱねた)。

その飢饉を、ツビットの魚が救います。ツビットの魚をモモが村に届け、「これはツビットからの贈り物だ」と伝えます。ミネアは小麦の栽培と漁の再開、踊り文化の再開を決め、ツビットやモモとの仲直りを果たします。

村はハッピーエンドに達しますが、ミネアは自分の判断ミスを大きく自責しました。

その過ちを是正するために、未来世で踊り子マーニャ(モモ)の妹、占い師ミネアとして生まれます。マーニャが、奔放でありながらも世界や勇者のために戦い続ける姿を間近で見て、今度は大きな過ちを犯す前に、踊り子や芸能者への価値観を改めます。踊りで一番になることではなく、踊りをどう生活や幸せに活かすかを考えるようになります。そして未来では、もっと立派な指導者になっていきます。ドラクエ5のテルパドール砂漠城の女王や、ドラクエ3のイシス城の女王は、ミネアの未来世です。彼女は不毛の砂漠に文化を切り拓きます。

また、村長ミネアはドラクエ6ミレーユの未来世でもあります。すると、自著『世界樹』のミレーユ婆さんの未来世でもあります。


ミネアとモモ(マーニャ)は同じ12ツインソウルズの仲間同士です。

※ドラクエの公式設定ではありません!


クダカ村のアギロはドラクエ9のアギロの前世

クダカ村でノアたちの面倒を見てくれた大男アギロは、ドラクエ9の天の方舟のアギロの前世です。力持ちですが優しく、正義感が強いです。欲が薄く、平和への意識が高く、誰かのために生きようと思っています。堕ちない人です。


ノアはドラクエ2のムーンブルク王女の前世

ヒロインのノアは、ドラクエ2のムーンブルクの王女の前世です。自著『転生したらローレシアのメイドさんだった件』に登場するムーンのことです。

『世界のはじまり』の中ではあまりムーンとの類似性が描かれていませんが、旅をする強さを得た彼女は、ユキのような男性に恩返しがしたいと願って、ローレと旅をする宿命にあるムーンとして生まれました。


ユキはドラクエ5の主人公の前世

ユキは、ドラクエ5の主人公の前世です。勇者ではなく、紫色のターバンをしてさすらう主人公のほうです。

ユキは人を愛し孤独に強く、みなしごとして波乱万丈に生きる宿命のドラクエ5主人公のブループリントを担う度胸がありました。

つまり、自著『天空の城』の冒頭の村に出てくるリュカの前々世でもあります。



次作は男の子が主人公!?

次作もモリモリ執筆中です(^_-)-☆

こんな感じの男の子の冒険記!
こんな感じの男の子の冒険記!

さらにその次は、沖縄をフシギ旅する女子高生のお話・・・カモ!?

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