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第1節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』

  • 執筆者の写真: ・
  • 8月27日
  • 読了時間: 4分

エピローグ






「神は踊りを見ている。見ているとも。

 しかし、踊りを見ているのではない。踊りながら、彼女は何を思っているのか?どんなことに留意して踊っているのか?いつもどんな努力を、どれくらいしているのか?その内側を見ている。

 

 その内側を見ている」






第1章 踊ることの意味

第1節

ノア ラノベ『世界のはじまり ~花のワルツ~』
ノア キャラデザ by 天(ソラ)さん

くるりん くるりん

ノ「うふふふふ!」

ノアは細長い手足を目いっぱいに伸ばして、今日も鮮やかな踊りを披露した。

「はいよろしい。Aグループの子たちはご苦労様。

 じゃぁ次、Bグループの子出てきて!」

指導役のマハロは淡々とオーディションを仕切っていく。


Bグループの少女たちもそれぞれに若い汗を飛ばしながら、華々しく踊りを披露した。

マ「はい。ダンス審査も一通り終わったわ。

 結果発表よ。みんな静かにしてね」

ごくり!踊り子たちはそれぞれに緊張の面持ちで息をのむ。

マ「今年のほむら祭りの演目も・・・

 主役はノア!去年と同じでノアでいきましょう」

ノ「わ、わたしが!?」

マ「13歳で2回も主役を務める逸材なんて、何年ぶりなのかしらね!」

わぁーーー!!!

踊り子たちは湧きかえり、拍手が起こる。

ノ「マハロ先生、ありがとうございます!

 私今年も、精いっぱいがんば・・・」

エ「ちょっと待ってよ!!」

エミリーという女の子が異論を唱えた。

エ「先生!納得がいかないわ!

 あの子ちょっと踊りをミスしたじゃない!それなのにどうしてノアが選ばれるの!?」

ざわざわ!

女「たしかに、踊りはエミリーのほうが少し上手かったかも」

女「ノアはちょっと間違えちゃってたわよね」

マ「小さなミスの有無はあまり重要ではありません。

 それよりも全体的な体のキレ、楽しそうな表情、それに先生としては、踊りだけでなく普段の生活態・・・」

エ「納得がいかないわ!

 絶対わたしのほうが上手かったのに!

 だって私、この演目を徹底的に練習してきたのよ!完璧に踊りきったのに!」

マ「エミリー。悔しい気持ちはわかるけどね。

 どうか視野を狭くしないで。

 この演目の振り付けが完璧かどうかは、焦点じゃないのよ。

 踊りの全体的な実力を、人格の全体的な成熟を・・・」

エ「ひどいわ先生!ヒイキよ!

 うぇーーーーーーん!!!」

エミリーは大声をあげて泣き出してしまった。

ノアはその姿を呆然と見ていた。自分が賞賛されて楽しく幕を閉じるはずの審査会が、自分のせいでギスギスと悲しいものになってしまっている・・・。

ノ「あのう、マハロ先生。

 今年の主役はエミリーが良いと思います」

ノアはうつむきながら静かに言った。

マ「何を言っているの?ノア・・・」

ノ「わ、わたし・・・えっと・・・。

 今の踊りで足をくじいてしまったんです。だからキレイに踊れないです。

 主役はエミリーにしてください」

女「えぇ?足をくじいたの?そんなふうには見えなかったけど」

女「どっちが上手いのかしら?奉納舞いでもノアの笑顔が見たいなぁ」

ざわざわ。

ノアは足をひきずりながら、一人一足先に家に帰ってしまった。

マ「・・・・・・。

 では主役はエミリーに決定します。

 その他の配役については追って発表しますね。

 今日はこれで解散!」


ノアは途中で振り返った。「解散」の声が聞こえた。

誰かがこちらに駆け寄ってくる。

ノアは再び左足を引きずる仕草をしながらとぼとぼと歩いた。

ミ「ノア―!」ノアの友達のミカが、心配して一目散に追いかけてきた。

ミ「ノア!足は大丈夫なの?」

ノアは振り返る。

ノ「うふふ。ミカぁ!どうもありがとう。

 大丈夫よ♪いつも踊りで鍛えてるんだから、これくらい。

 バックダンサーならきっとちゃんと躍れるわ」

ミ「ねぇ?足をくじいたなんて嘘なんじゃないの?

 あなた優しすぎるのよ!」

ノ「ううん。ミカ、もう夜なんだから大きな声をあげないで。

 嘘なんかじゃないわ。

 わたし、ほんとにくじけてしまったの」

 くじけてしまったの。

ミ「そう・・・」


ミカとノアは分かれ、それぞれの家路に就いた。

ノアは空に浮かぶ大きな月を見上げた。この小さな島と同じくらい、大きな月だ。

ノ「いいのよ。これで。

 みんなを幸せにするための奉納舞いだもの」


ノアちゃん 『世界のはじまり ~花のワルツ~』
ノア

ノア

13歳 3月24日生まれ

154センチ 40kgくらい

好きなもの:躍ること、フルーツ、協力(文化祭的なニュアンスのものが好き)、笑顔の人に安心する

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