エピソード2
ローズがれいへのささやきに満足し、うつらうつらしはじめたのを確認をすると、れいは母屋へと戻ることにした。祖母のローズはれいの家の離れに住んでいる。
離れのドアを開けて外に出ると、夜風がぴゅーとれいを吹き抜けた。
「うぅ。寒い」
れいは少し震える。
体が震えるだけでなく、心が震える・・・ような気がすると、れいは最近感じている。
なんだか最近、心に妙な感覚を覚える。切なさ、焦燥感、不安・・・なんだかよくわからない。でも「これが大人になった証なのかしら」などと思ったりする。
れいは今年15歳になった。
この村において、15歳は1つの節目。もう学校での学びを抜けて社会に出る選択肢も与えられる年だ。
「ううん。れいは違うの。お母さんと同じように先生になるためには、18歳までお勉強しなくちゃ」
夜風が冷たく感じたのは、気のせいではなかった。
その夜、れいの村は急速に冷え込んだのだった。
老人に冷えは障る。
なんと翌朝、ローズはもう、目を覚まさなかった・・・。
れいは愛する肉親を失っても、わんわんと泣きわめく子ではなかった。
理性的でありなさい、冷静でありなさい、と教師である母には育てられてきたのだ。
母が仕事で忙しい分、れいは祖母に育てられてきたし、祖母と友達のようにおしゃべりして暮らしてきた。
ローズの死はれいにとって大いなる喪失感を生み出したが、しかしれいはわんわんと泣きわめくようなことはしなかった。
「あなたは強いわね」と母や親戚は言った。
れいほどローズへの思い入れのない人々も、シクシクと泣いているものだった。それなのにれいが毅然としているので、周囲は驚くのだった。
「私、強いのか・・・」周囲に言われて、れいはようやく自分の打たれ強さに気づくのだった。いいや、まだ「強いのかも」と思ったに過ぎないが。
数日後、ローズの葬式が営まれると、れいは驚くのだった。
友達の少なかったローズなのに、サラン村から大勢の人が弔いに来たから、だけではない。
なんと王都サントハイムや他の町からも、立派な衣装を着た人々が大勢、ローズを丁重に弔いに来たのだった。
「いつも揺り椅子でお裁縫してるだけだったお婆ちゃんに、なぜこんなに大勢の人が?なぜ王都のお偉いさんまでもが?」
そして弔問に訪れた王都の神官などは、なんとれいに対しても丁重に挨拶をするのだった。
「これはこれは、勇者様ご一行の魔法使いローズ卿のご令嬢殿。すっかりご立派になられましたな」
れ「え?
ええ??
えええ???」
れいの頭の中はハテナと衝撃でいっぱいだ!
お婆ちゃんが、勇者様ご一行の魔法使い!?
れ「え?あの、どなたかと間違えていませんか!?」
神「間違えるはずもありません。
こんなに大勢の弔問客が、間違えるのですか?
あなたのことも間違えはしませんよ。
5歳の頃、お宮参りにいらしたあなたは、その時すでに聡明なお顔立ちをされていました。
『頭の良い子になるだろう』と、当時も城で話題でしたよ」
れ「・・・!!」