エピソード31
興味を引かれるれいは、校門の前まで行き中をちらちらと覗く。校門には守衛がいるが、「中に入っていいですよ」とれいに言った。他の町からも学生を募りたいゆえ、学校見学は随時OK、というスタンスなのだった。
れいは窓から教室を覗く。
先「メラ、メラミ、メラゾーマ!はい皆さんもご一緒に!」
子「メラ、メラミ、メラゾーマ!
先「ギラ、ベギラマ、ベギラゴン!」
子「ギラ、ベギラマ、ベギラゴン!」
先「ヒャド、ヒャダルコ、ヒャダイン、マヒャド!はい、間違えないで~」
子「ヒャド、ヒャダルコ、ヒャダイン、マヒャド!
ア「「ヒャド、ヒャダルコ、マヒャド!あっ!」
先「ほらアリーナさん、またそこで間違えた!」
ア「ご、ごめんなさぁい」
知らない魔法の名前がたくさん飛び交っている!
メラ、メラミ、メラゾーマという語感から察するに、メラにはメラミ、そしてメラゾーマという上位互換魔法があるのだろう。
そしてヒャドにもヒャダルコ、マヒャドという上位互換がある。えっと、あと1つは何だっけ。れいもアリーナとやらの気持ちがわかった。
そうか。こういうことをあらかじめ知っているなら、魔法による戦いや冒険、会話が色々と楽になる。
たとえば戦闘の後に「メラの上位互換を習得した気がする」と感じたなら、それはメラミなのだ。
また、魔物や冒険者が「オレはメラミが使えるぞ!」と言ったなら、れいよりも格上の者だということがわかる。
おそらく、メラとギラとヒャドは同じくらいのレベルだが、ベギラマを使える者は、メラしか使えないれいよりも格上だ。
メラとヒャドを覚えたれいだが、あとギラを習得すれば一人前!というわけではなさそうだ。まだまだメラミもメラゾーマも、ヒャダルコもベギラゴンも待ち構えている・・・!先はとても長いぞ。
なるほど。有名な魔法の名前や位置づけを、理解していたほうが良さそうだ。
れいは小さな子供たちのその基礎的なレッスンを眺めているだけで、頭がとても興奮した。ものを学習することは嫌いじゃない。そして魔法への興味は強い。それに、ローズの血が流れているのだから。
ほどなく授業は終わった。
休み時間になり子供たちが遊びだすと、れいは先生に駆け寄っていった。
「旅の者で魔法に興味があり、見学しました」と自己紹介すると、愛想よく微笑んでくれるのだった。
れ「あのう。魔法の教科書を少し貸してはもらえませんか?宿で休みながら読んだりしたいです」
先「そういうわけにはいかないのよ。高い学費を貰って営んでる学校ですからね。教科書は丸秘なの。無暗に部外者に貸すことはできません」
れ「そうですか」まぁそうだろう。
話だけでも聞かせてもらおう、とれいは思った。
れ「魔法ってたくさんあるのですね!」
先「さっき諳(そら)んじていたのはまだ一部ですよ。それに冒険に使わないものもありますしねぇ」
れ「私はまだメラしか使えないのです。その先にメラミ、メラゾーマというのがあると知って感動してしまいました!」
先「そうね。メラゾーマなどの上級呪文はすべての魔法使いの憧れです」
れ「いつかは私も上級の魔法が使えるようになりたいです」
先「うふふ。厳密に言えば上級魔法よりもさらに上があるのですよ」
れ「えぇ!メラゾーマよりもさらに上が!?」
先「えぇ。初等部の学校では名前すら教えませんけどね」
れ「なぜですか?」
先「無暗に強い魔法の存在を知れば、子供たちは無暗に憧れてしまいます。
しかし大きすぎるチカラへの盲目は危険です。
メラゾーマよりも先を知るのはもっと心が育ってから。体が育ってから。そのほうが良いでしょう」
れ「そうなのですか」
先「メラゾーマとてすでに、知ることが危ういです。メラの20倍くらいもの威力があります!
でも今の世では上級呪文の名前は一般常識になりつつあるので、教えないわけにもいきませんね」
れ「メラの20倍・・・!!」お婆ちゃんはその魔法を使いこなしたのかしら!
そしてれいは再び思った。「この冒険は長くなる!」
魔法の学校なんてすごいな!れいはワクワクした。
よく見ると町は、魔法に関するものやサービスを扱う店が多くある。魔法の町なのだろう。
武器屋を覗いてみると、やはり杖の種類が豊富なのだった。
杖を持って戦いたい、とも思ったが、魔法に依存しすぎるのは一人旅の自分にはまずい、ということにはもう気づいている。剣で我慢しなければ。
それにしても、剣を装備していてもメラもホイミも放てたわけなのだが、では杖は何のためにあるのだろう?
武器屋に尋ねてみると、杖はそれぞれに、攻撃魔法の威力を少し高めたり、回復魔法の効果を少し高めたり、魔力消耗を抑えたり、その杖を装備しているときだけに特殊な魔法が放てるようになったりなど、特殊なメリットがあるそうだ。
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