エピソード32
彼女たちの家は、そこから車で5分ばかしのところにあった。
つまり、「ひこうき」からもとても近い場所にある。
トンネルを抜ければすぐなんだ。
「彼女たち」というのはつまり、
その家の主はお父さん(らしきおっさん)ではなく、
その、若々しく見えるお母さんなんだ。
そして、寝床提供を申し出てくれたのも、その女性。
彼女は、ミユキさんという名前だった。
そばにいる男性は、旦那さんかと思いきや、旦那さんではナイ!
あくまで、ミユキさんの「彼氏」にすぎないらしかった。
ミユキさんは離婚して、元旦那さんとは別の暮らしをしているんだ。
…ようこママばりにややこしい家族構成になってるけど、
だいじょうぶ?理解できてる?
とにかく、
赤の他人を無償で泊めてあげようとするような博愛者ってのは、
風変わりな恋愛・結婚を選ぶことが多いのかもしれないよ。
常識離れしてるヒトのほうが、愛情深かったりするんだよね。案外。
ミユキさんの彼氏は、タカちゃんという。みんな「タカちゃん」と呼んでる。
56歳だから、ミユキさんより一回りくらい年上だよ。
ミユキさんがタカちゃんを養っているようなカタチで暮らしてる。
女であるミユキさんが、タカちゃんを養ってる。
これだけ美人で可愛ければ、養ってくれる男なんてゴマンと見つかるよ。
それなのにミユキさんは、男に依存したりはしない。
依存しないどころか、タカちゃんを養っている。
…かといって、ミユキさんは今、何の仕事もしていない。
???
意味がワカラナイ(笑)
よくわかんないけど、
慰謝料をたくさんもらったんだか、昔の仕事でたくさん稼いだんだか、
とにかく生活はできているらしい。
かといって、そうたくさん貯金があるわけでもないようで…
なぜ働かないかというと、
ミユキさんもまた、僕と同じように、
「お金の介入しないエコビレッジ」みたいのを夢見ているらしいんだ。
そういう暮らしを求めて、画策中らしい。
すると、ミユキさんにとっても僕はとても興味深い存在らしく、
「1泊だけじゃなく、何日でも泊まってっていいよ♪」と言ってくれたのだ!
タカちゃんは、それほどスピリチュアルではない。
自給自足とかにもそんなに興味は無いらしいけど、
ミユキさんのやることなら何でもお手伝いするつもりでいるらしい。
ミユキさんのことが大好きなんだ。
タカちゃんは、大好きな年下美人と日がな一緒にいられるだけでなく、
その彼女に養ってもらっており、尽くされている。
こんな幸せな56歳のおっさんは、おそらく他にいないだろう。ジェシー以外は。
ジェシーといえば、こんな共通点もある。
彼女のことが大好きな割りに、嫉妬深くはない。
彼女が僕みたいな若い男を連れてきても、いっこうに気にしていない。
ミユキさんには、4人の子供がいる。
長女(高3)、長男(高1)、次女(中2)、次男(小6)かな。
かといって、普段ミユキさんと一緒に暮らしてるのは、
2人の男の子たちだけなんだ。
女の子たちは、元旦那さんの家で暮らしてる。大阪かそこらへんで。
この日はたまたま、徳島まで遊びに来てたんだよ。
『名もなき町で』
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