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エピソード35 『名もなき町で』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月15日
  • 読了時間: 2分

エピソード35

昼飯は、ウッドテーブルに残った火で、シャケ雑炊でも作ったりする。

ミユキさんは菜食主義ではないけど、あっさりしたものが好きらしい。

人数が多いから、

大なべで一度に作れる料理が多いよ。賢いんだよミユキさん。

リラックマみたいにポカーンとしてるけど。


昼の一番暑い時間には、

ミユキさんはよく、ビーチに繰り出す。水中で涼むんだよ。

そのためにミユキさんは、いつもTシャツの下に水着を着てる。

水着のまま過ごしてたりもする。

日焼けなんてぜんぜん気にしない。

お嬢様みたいな顔して、繊細な体して、

それでいて、日焼けなんてぜんぜん気にしない。

だから夏は真っ黒に日焼けする。

博愛主義のミユキさんだから、日差しや紫外線をも、嫌ったりしないんだよ。


そのビーチはというと、

なんと、目の前にある!

ミユキさん家は、小さな砂浜の目の前にあるんだよ。

ほぼプライベートビーチだ!

ぜんぜん美しい浜じゃないし、何の施設もないけど、

水浴びと泳ぎの練習くらいなら、コレで充分さ。

ミユキさんは、浮き輪マットなんか抱えて海に飛び込んでいって、

マイペースにあちこち泳いでる。

あのスリムな体型は、こうやって維持されてるんだよ。

そんで、

鳥がいたとか虫がいたとか、子供みたいにハシャいでる。

子供よりも無邪気なんだよ、ミユキさんは。


ひと泳ぎもすると眠くなってくるから、僕は2階で寝ちゃうんだけど、

ミユキさんはまだまだ元気で、ちゃっちゃか洗濯物干したりしてる。


日差しが落ち着いた頃、

ドンスコトン!というエスニックな音色で目が覚める。

ミユキさんは、ウッドデッキでニールにジャンベを教わってる。

ジャンベっていうのは、エスニックな太鼓さ。


そしてまたウッドテーブルを囲んで、夕食の準備をする。

どこからか、近所のおっちゃんたちがやってきて、

釣ってきた魚とかビールとか、差し入れしていく。

そのまま居座り、大勢での晩餐が始まる。

酒飲みたちはロクに機能しなくなるから、

酒に興味のない僕は、せっせと10人分の食器を洗う。



だいたいこんなカンジで、一日は過ぎていくよ。

すごく自由で、すごくノンビリしてる。

「フリースクール的生活」というような観念を、ミユキさんは持っている。

僕が諭したりしなくても、ミユキさんはすでに持ち併せている。

何でもジブンでやろうとするし、

何でも楽しみながらやろうとする。


『名もなき町で』

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