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エピソード38 『名もなき町で』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月16日
  • 読了時間: 2分

エピソード38

次に向かうアテなど、何にもなかった。

そしてそれ以上に、お金が無かった。

「再びお遍路道を歩くしかない」それが唯一の選択肢だった。


連日の稲刈りや自給自足生活で、僕の足腰はさらに強くなっていた。

もはや、何十キロ歩いても大して疲労を感じなかった。

24時間眠らずに歩くことさえできた。

昼から休まず50キロ歩いて、それでも平然としているジブンを見て、

体力作りとしてのお遍路にも、もう価値を感じられなかった。

かといって、新しい出会いも訪れたりはしなかった。


どこかのお寺の縁側で、しばしの仮眠を取った。

すると、夢を見たんだ。

夢の中で、死んだ親父が、

「クレジットカードで払えば、銀行口座にお金がなくても、家に帰れるぞ」

と笑っていた。


目覚めた僕は、「コレは啓示だな」と思った。

確かに、クレジットカードというのは引き落としが2ヶ月先だから、

今の僕が一文無しでも、買い物が可能なんだな。

僕は、高知駅まで電車でたどり、そこで東京行きの夜行バスチケットを買った。

買えるのかドキドキしたけど、ちゃんと買えた。

「実家には帰るまい!」と思っていたんだけど、まぁいっか。

ヒステリーの姉が包丁持って襲い掛かってくるから、

どうせ長居はできないんだけどさ。



親父の夢を見ていなかったら、

タブン、飢え死にするまでお遍路道を歩いてただろう。

それはそれで、良かったと思う。死ぬのは怖くない。

…なんか、ラストはビミョーに暗くなっちゃったけど、

僕は暗いハナシを書くつもりなんてナイんだ。

「ひと夏の楽しい冒険」を、みんなに話して聞かせたかったんだよ♪




あとがき1

実はこのあと、3週間くらいかけて、沖縄の本島や離島の幾つかを周ったんだ。自給自足の場所が見つからないかなって。それもとても面白いハナシなんだけど、まぁ今回は割愛します。

さらにその数か月後にも3週間くらい沖縄本島を周ったんだけど、めぼしい場所や仲間は見つからなかったのでした。




あとがき2

ようこママとジェシーの店は、

2015年春現在、ジェシー一人での運営に変わっています。

経営は簡略化し、昔ほどの施し合いはなりを潜めているようです。



  2014/08/12 完筆


『名もなき町で』

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