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エピソード38 『名もなき町で』

エピソード38

次に向かうアテなど、何にもなかった。

そしてそれ以上に、お金が無かった。

「再びお遍路道を歩くしかない」それが唯一の選択肢だった。


連日の稲刈りや自給自足生活で、僕の足腰はさらに強くなっていた。

もはや、何十キロ歩いても大して疲労を感じなかった。

24時間眠らずに歩くことさえできた。

昼から休まず50キロ歩いて、それでも平然としているジブンを見て、

体力作りとしてのお遍路にも、もう価値を感じられなかった。

かといって、新しい出会いも訪れたりはしなかった。


どこかのお寺の縁側で、しばしの仮眠を取った。

すると、夢を見たんだ。

夢の中で、死んだ親父が、

「クレジットカードで払えば、銀行口座にお金がなくても、家に帰れるぞ」

と笑っていた。


目覚めた僕は、「コレは啓示だな」と思った。

確かに、クレジットカードというのは引き落としが2ヶ月先だから、

今の僕が一文無しでも、買い物が可能なんだな。

僕は、高知駅まで電車でたどり、そこで東京行きの夜行バスチケットを買った。

買えるのかドキドキしたけど、ちゃんと買えた。

「実家には帰るまい!」と思っていたんだけど、まぁいっか。

ヒステリーの姉が包丁持って襲い掛かってくるから、

どうせ長居はできないんだけどさ。



親父の夢を見ていなかったら、

タブン、飢え死にするまでお遍路道を歩いてただろう。

それはそれで、良かったと思う。死ぬのは怖くない。

…なんか、ラストはビミョーに暗くなっちゃったけど、

僕は暗いハナシを書くつもりなんてナイんだ。

「ひと夏の楽しい冒険」を、みんなに話して聞かせたかったんだよ♪




あとがき1

実はこのあと、3週間くらいかけて、沖縄の本島や離島の幾つかを周ったんだ。自給自足の場所が見つからないかなって。それもとても面白いハナシなんだけど、まぁ今回は割愛します。

さらにその数か月後にも3週間くらい沖縄本島を周ったんだけど、めぼしい場所や仲間は見つからなかったのでした。




あとがき2

ようこママとジェシーの店は、

2015年春現在、ジェシー一人での運営に変わっています。

経営は簡略化し、昔ほどの施し合いはなりを潜めているようです。



  2014/08/12 完筆


『名もなき町で』

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