エピソード42
デイジーはなぜさすらっているのか?
尋ねてみると、《はやぶさの剣》という武器を探し求めているらしい。非常に希少なもので、街の武器屋では扱っていない。伝説の武具の1つである。
これは元々彼女の家系の家宝で、いつぞや盗まれてしまった。デイジーはそれを取り返したいのだ。
盗まれたということはお金に替えるために売買されている可能性が高く、だからバザーだの闇市だのといった場所を中心に探している。
れいは新たな国の王都ボンモールには興味がなかったが、デイジーも似たところがある。大きな街、有名な街、立派な街に探しものが隠れている可能性は低いので、どちらかといえばあまり人の噂にならないような町を選んでさすらっている。
砂漠のバザーで用事を終えても、もう少し一緒にさすらおうか、ということになった。
一旦イムルに戻り、東に進むと町があるらしい。
進むにつれて山がちになってきた。前方には小高い丘が幾つも見える。
やがて町が見えてきたが、その奥の小高い丘にはポツンと城が建つのが見えた。城下町の城と町がこんなに離れていることもあるのだろうか?れいは不思議に思った。
新たに辿り着いた町は、名をルマと言った。
美しい教会が町の真ん中にあり、ブティックやインテリア雑貨の店が多いか。芸術的で上品な印象を受ける。町を歩く女性たちは明るく華やかだ。
れいはこの女性らしい町に好感を抱いたが、デイジーは嫌いだと言った。女性らしいことが好きではないようだ。しかしデイジー自身は美人だと、れいは思う。昔は身なりを気にしていたのでは、という感もある。
広場の近くの食堂で食事を摂る。
すると女性の店主が話しかけてきた。
女「他所の人だろうねぇあんたたち。
この町の向こうに城が見えただろ?丘の上にさ。
あそこには近寄らないほうがいいよ!危ないから」
れ「王様のお城じゃないんですか?」
女「王様じゃないよ。お貴族さんの個人所有さ。
世の中には途方もない金持ちがいるもんだよ」
デ「危険なことなどない。金持ちの家なら貴重品も眠っているな」
女「そう気張んなさんな!女こそ危ないんだよ。
ドラキュラが出るって噂なんだよ。吸血鬼さ」
デ「吸血コウモリなど100匹でも倒せる」
女「吸血コウモリじゃなくて、吸血鬼さ。
人が、男の人が襲いかかってきて首に噛みついて、血を吸うんだ!
そのまま生きて帰ってこない娘もいるんだよ」
れ「わ、わかりました。気を付けます」れいは店主に礼を言った。
デ「人が人の血を吸うなんてことがあるか?」
デイジーにとってはそれすら怖くない。そして、血を吸って女性を困らせる者がいるなら、なおさらそいつを退治しに行かねばと思ってしまうのだった。
れ「魔物なのかしら?」
デ「魔物である可能性もある。人に化けた魔物の可能性もある。半魔物・半人の怪人である可能性もある。人である可能性も否定できない」
即座に様々な選択肢が挙がる。色々な悪と戦ってきたのだろうなと、れいは察した。
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