エピソード55 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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エピソード55
デ「酋長のところに行くぞ。仲介を頼む」
一行は酋長の家へと赴いた。
日干しレンガの家には、豊かな白ヒゲを蓄えた髪の長い男が、昼間から酒を呑んでいた。
ワ「酋長。旅の者がお会いしたいと」
酋「なんだ」
デ「山の神は、魔物ではないかという噂があるようだが?」
酋「私は神と交信しておる」
デ「神である証拠は?」
酋「山の神と名乗っておる」
デ「しかし人相が随分悪いようだな。魔物のように。
それだけじゃない。娘をさらっていくそうじゃないか」
酋「さらっていくわけじゃない。
飢饉の際に村を救う代わりに、生贄を求めてくるだけだ。
おまえは対価を求めずに人を助けるのか?」
デ「随分とそうしてきたが。
おまえのところの神はオレよりも器が小さいのだな」
酋「おいワイズ。こいつは喧嘩を売りに来たのか?」
れいがたまらず口を挟んだ。
れ「酋長様。1つだけご意見があります」
れいはゆっくりと、1つ呼吸を置いて続けた。
れ「神が、生贄を求めるわけがありません」
酋「なに!?」
れ「本当の神は、生贄など必要としていないはずです。
その者がトウモロコシを恵んでくれるとしても、生贄を求めてくるなら神ではありません。
食料をくれるなら善人なのでしょうか?
それは『神への信仰』ではなく、『悪魔に魂を売る行為』です」
酋「おぬしらは、私が悪魔と繋がっていると申すのか?」
れ「そ、その可能性を、受け入れたほうが良いと思います」
ワ「酋長!どうかもう生贄はやめにしましょう!!」
酋「うぬぬ。一理あるやもしれん」
酋長は、まったくのわからず屋というわけでもないようだ。
デイジーはれいの肩に優しく手を置いた。
デ「権威者にも臆せず、よく言ったな!」
れいは震えていた手で、デイジーの手をぎゅっと握った。
デイジーが付いていてくれたから、出来たことかもしれない。
酋「しかし、私が呼んだところで山の神は現れんぞ。
年に一度、生贄を差し出すときか飢饉のときだけだ」
デ「それなら簡単だ。
オレが生贄になる」
ワ「なんと!!」
デ「生贄の儀式はいつも、どこでどうやるのだ?」