エピソード5
ようこママと話したかったことは、
そんなふうに、店の様子を眺めてるうちに把握できちゃった(笑)
ようするに、
ようこママってのはそういうヒトで、
この店はそういう店なのさ。
彼らは、「事業者と消費者」という関係性でありながら、
資本主義原理を超越した施し合いでもって、
互いに助け合いながら、楽しそうに暮らしてるんだ♪
2次会も終わり、客人がはけると、
ようこママとジェシーと僕と、3人だけが店に残った。
ママは改めて僕らのために夕食を作り、
薄暗がりのフロアで3人、それを囲んだ。
「こういうお店みたいなの、僕も造りたいんですよ!
店を越えて、村くらいの規模で。
んで、できるだけお金を介入させずに、暮らしたいんです。」
僕はそう、ジェシーに自己紹介した。
「つまり、ジェシーと同じようなコなのよ。この青年は♪」
とようこママが笑うと、
ジェシーは、深く安心してくれたようだった。
「いつまででも、泊まってってえぇで!」
ジョンレノンみたいな丸メガネのそのレンズの上から、
僕をじっと見つめて言てくれた。ジェシーのクセなのさ。その仕草は。
ジェシーと信頼関係が築けて、とても安心したよ。
密に共同生活するにあたって、男性同士というのはとても難しいんだ。
価値観がフィットしないと、すぐに気まずくなっちゃう。
遅い夕食を終えて、店の片付けも済むと、
僕は、店の2階に通された。
ライブハウスの2階は、広いワンルームみたくなっているんだ。
20畳分くらいあるんじゃないかな。半分は機材で埋まってるけど。
でも、簡素なキッチンがあってトイレがあって、シャワーまである。
そして、機材にまみれてベッドが1つ、置いてある。
「こんなの無料で借りちゃっていいの!?」
むしろ、アパートに5人で住むようこママたちより、恵まれた住環境のような…(笑)
「気にしなくていいのよ♪
なんなら、女の子だって連れ込んだらいいわ。」
ママは、造作ないと言わんばかりにあっけらかんに微笑み、
タオルを何枚かベッドに放り投げ、アパートに戻っていった。
ママはたぶん、ねむりあの国でも暮らせるだろう。
『名もなき町で』