エピソード63
洞窟の狭い部屋の中で、セーニャは襲い来るドラキーの群れに必死で《聖なるナイフ》を突き立てた!
ザク!ブシュ!
痛手を与えれば今度は悲痛な声で耳をつんざいてくる!攻撃が決まれば血が飛び散る!
誰かがセーニャの足に噛みつく!誰かがセーニャの頭をバサバサと殴る!
気持ち悪い!怖い!痛い!もう逃げたい!!誰か助けて!!
しかし助けてくれる人は誰も居ないのだ!
セーニャは涙を流しながら、死に物狂いでドラキーに歯向かった!いや刃向かった!
40回、50回とナイフを振るい、ようやくドラキーの群れをやっつけた。
ぴくぴく。
辺りは再び静かになった。
セ「はぁ、はぁ、はぁ。
怖いよぉ。帰りたいよぉ」
きっとまた魔物が襲いかかってくるんだ。きっと今回より数が多いか、手強い魔物だ。
どうしよう。今のうちに引き返すか?
うぅ。でも・・・
でも、でも怖い・・・でも・・・
セーニャはまた泣きたくなって、天を仰ぐように目を閉じた。
すると・・・
セーニャのまぶたの裏に、妙な映画が映し出された。
そこにいるのは、少しあどけない表情をしたれいだった。れいは小さなナイフで懸命に大きなサルに立ち向かっている!目に涙を浮かべ、はぁはぁと荒い呼吸をし、腕に血を流しながら、たった一人で大きなサルに立ち向かっている!
セ「そうか!れいさんだってこんなふうに強くなってきたんだわ!泣きながら立ち向かってきたんだわ!!
逃げてはいられない!!」
セーニャは再び勇気を取り戻した!
セーニャは涙を拭いた。ゆっくりと、でも力強く歩き出す。
やがて道は突き当ってしまった。行き止まりに見えたが、左に直角に曲がっているのだった。
そして突き当りの壁にはまた石板がある。これだけは見逃さないで、と言わんばかりに。
セ「おそら・・の・・うえから・・・みて・・います」
セーニャは上を見上げた。ここには漆黒の天井があるばかりだ。しかしセーニャの想像は洞窟の天井を突き抜けた。
セ「おそらの・・・うえ」空の上から、誰かがセーニャの今の雄姿を見ているのだろうか。セーニャの涙を見ているのだろうか。5つ首の竜ではない、本当の神さまがどこかにいるのだろうか。
神さまは、セーニャが赤い宝石に手をかざすのを見て扉を開けるのだろうか?やはり誰かが、見ている・・・?
左に曲がった道は、どうも先から音がよく響いている。少し大きな空間があるように思える。
今度こそゴールかしら?セーニャはワクワクし、ドキドキし、ハラハラした。
一歩一歩ゆっくりと、前に進む。
大きな部屋に達した。セーニャがそこに足を踏み入れると、足音はひと際大きく響いた。タン!
すると、部屋の向こうで眠っていた獣が2匹、物音で目を覚ました。
クエー!
セーニャを見て怒っている!
セ「ま、魔物だわ!」ずんぐりむっくりなサルのような、タヌキのような魔物だ。
もう戦うなんて無理だ!さっきの戦闘でセーニャの体はボロボロなのだった。
何か!良いアイデアはないのか!?
セーニャは焦りながらも必死で頭を働かせた!
セ「そうだわ!」
セーニャは背中の杖を取り出した!これがきっと魔物を倒してくれる!!
セーニャは天使の杖を思いきり振りかざした!
セ「えぇーい!」
すると・・・