top of page

エピソード78 『天空の城』

エピソード78


やがて、ついに、ロマリアの城下町に到着した!

セ「ついに私、新しい街に訪れることが出来ました!」

れ「良かったですね」

セ「これもすべてれいさんのおかげです!用心棒としての戦力だけの問題ではありません。れいさんがメンタルケアをご助言してくださらなかったなら、私は途中で苦悩して引き返していたかもしれません」

れいは本当に、セレンという人物の人生を大きく揺り動かしたのだった。まさか自分がそのように人に影響を与えるとは、旅立ち前は思ってもみなかった。旅立った頃にも想像もつかなかった。


セ「さて・・・私はこれからどうすればよいのでしょう?」

れ「私も、どうすればよいのでしょう?」

たしかセレンとの約束は、「彼をフズから連れ出すこと」だったはずだ。その約束は果たした。もう少し他の町まで同行するのも、悪くはないが・・・。れいとしては、セレンはシスター・イザベラからあまり遠く離れないほうが良いような気がした。

セレンは感慨深く目を細めて、街を見渡している。

セ「よし。ここまでとしましょう」

決意を込めて、大きく1つ呼吸をした。

セ「魔物の姿もない平和な街であるようです。あとは一人でどうとでもなります。

 ここからはれいさんの旅を、ご尊重なさってください。

 では、旅のご無事をお祈り申し上げます!」

彼はそう言うと、小走りで人混みの中へと消えていった。

あっさりした別れだな、とれいは思った。れいをあまり心配させたくなかったのだろう。



一人になって、改めて城下町を見渡す。ロマリアは大きな街だった。

様々な国の人が行き交っているように見える。

そういえば城門には「ロマリア・南門」と書かれていたが、東門や西門もあるのかもしれない。各地に繋がる道があり、各地の人々が行き交う。そんな特色を感じた。

良かった。セレンが飛び込みやすい土地柄かもしれないな。いや、セレンのことはもういい。彼は自分でどうにかするだろう。そして私は自分のことが重要だ。


《破邪の剣》を腰に差し、少し胸を張って歩く。そう、なぜか胸が張る。

それは、行き交う人の中にはれいより素朴な武具を装備した者も結構多いからだ。《鉄の鎧》や《銅の剣》を装備した戦士・兵士よりも、自分は格上な感がある。彼らから尊敬の目で見られる。その期待に応えなければ、といった感覚を無意識に抱く。それは勇者と呼ばれて調子の乗るのとは少し違う。と思う。とにかく、私は少し成長したのだ。

・・・あれ?魔法使いとして鼻をすすりたいものだが・・・。まぁいいか。



南門のすぐ近くに宿屋はあったが、れいは敢えて素通りして進んできた。

これまでの経験から、多くの町には、規模が大きければ大きいほど、複数の宿屋が備わっているものだからだ。そして目立つ場所にある店よりも奥まった場所にある店のほうが、値段が手頃である。静かでもある。豪奢で賑やかな宿を求める者もいるのだろうが、れいは静かなほうが良かった。こうした立ち回りも、冒険の技術の1つだ。


教会に行ってみる。冒険の報告だ。

ひょっとしてセレンが居たら気まずいなと思ったが、彼はいなかった。彼は教会ではない場所に自分の居所を探そうとしたのだろう。そのほうが良い気がする。またはもう違う町に旅立ったか。違う町に旅立つための準備をしているか。どれもよい。イザベラのことは少し気になるが。

Comments


bottom of page