エピソード80
武器屋の前を通りかかる。どのちみ武器も防具もまだ新調するつもりはないが。
武「へいらっしゃい!」武器屋の親父は威勢が良いが、れいは静かに店内を眺める。威勢の良さに妙な違和感を感じ取った。
武「これなんかどうだね?
最近西の国から入ってきた、高級ブランドG&D製の《聖なるナイフ》だ!」
れ「普通の《聖なるナイフ》に見えますが?」
武「よく見てくれよ!ここんとこにばっちりロゴマークが入ってるだろう?カッコいいなぁ!」
れ「高級ブランドがナイフを造る利点が、他にもあるんですか?」れいはクールに尋ねる。
武「え、他に?
他にはアレだ、ほら、この持ち手のところの革がちょっと高級品でさ、滑りにくいし長持ちするんだよ!」
れ「そうですか」
れいはすぐに武器屋を出てきた。
冒険を始めたばかりの頃にこういう店主に遭遇したら、余計な出費をさせられていたかもしれないな。でも今は大丈夫だ。セレンは大丈夫だろうか?ちょっと心配になるが、まぁ大丈夫だろう。
武器屋の親父がこんな商売をするなんて・・・治安が悪いとも言えるし、平和な証拠という気もする。
れいと入れ違いで、他の冒険者が入ってきた。見たことのない立派な鎧を着ているが、盾はれいと同じで《青銅の盾》だ。れいはそれを見て、「不釣り合いだな」と思った。《青銅の盾》の値段を知っているせいもあるのかもしれないが、鎧の格と盾の格が釣り合っていないと思える。
そして気づいた。れいは自分の姿を自分で眺める。
「うん。私の《青銅の盾》も武器やローブに合っていないようだぞ」
気づいた途端にちょっと恥ずかしくなってしまった。《青銅の盾》がダサいというのではなく、この武器とローブを装備しておきながら《青銅の盾》というのは、無知をさらけ出している感がある・・・。「立派な服を買ったなら、立派な靴を買いなさい」とはよく言われるものだが、盾も同じではないだろうか。
そうして慌てて防具屋を覗く。
れ「何か手頃な盾はありませんか?ブランドのロゴなどは付いていなくていいです」先回りで牽制しておいた。
防「なかなか良い武器とローブを装備しているなぁ。
申し訳ないことに、この街はそんなに良い武具が集まってはいないんだよなぁ。兵士用に大量生産品を揃えるのが得意な国でさ。
まぁその剣の格に合わせるならこれだろう」
防具屋はれいに、《はがねの盾》を差し出して見せた。
《青銅の盾》よりも大きくて本格的だ。立派な紋章まで描かれている。悪くないぞ。
れ「いくらですか?」
防「1,500ゴールドだ」
れ「買っていきます」
武器屋とは違い実直な商売をする人で良かった。
はがねの盾は《青銅の盾》よりも大きく、守備範囲が広い。しかしその分重たい。今度はこの重さを自在に動かせるように、体を鍛えなければ。
防具を重厚にしていくことは、回り回って攻撃能力を高めることにも繋がるらしい。
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