第14章 さまようよろい
ゲーム上での翌朝。
宿屋の食堂で二人は昨夜を思い出している。
マ「はぁーあ。第2層、いきなり手ごわいねぇ(泣)」
リ「ねぇー。こちらの予想を上回ってくるなぁ。
ていうか戦士とかいればもっと楽なんだろうけどさ…」
マ「《刺のムチ》買ったの、やっぱ失敗だったかなぁ…」
リ「いや、そんなことはないと思うんだ。
《こうもりおとこ》には歯が立たなかったけど、やっぱMP消費ナシで全体攻撃できるのって役に立つと思うんだよ。必要な場面は絶対くる」
マ「そうかなぁ」
宿や食堂をうろつく他の冒険者たちは皆、《はがねのつるぎ》だの《てつのおの》だのゴツい武器を担いでたくましそうにしている。しかし今さら彼らの真似も出来ないのだ。二人は二人の個性を活かし、二人のやり方で進むしかない。
マ「強い人たちはもう、どんどん先に進んで冠も見つけちゃったのかなぁ?追いつけないかも」
リ「いや、いいのよ。元々トップでクリアすることなんて考えてないんだもん。
『僧侶二人組』っていうヘンタイ縛りで魔王倒すのが、ウチらのテーマさ。
…そうか。急いでないんだ。もうちょっと何か、考える余地あるな」
リオは色々な選択肢を頭に巡らせていた。手詰まりではなさそうだ。マナはリオの顔を見て、少し安堵した。
リ「とりあえず、もっかい外に出て戦ってみよう!
夜ってさ、昼間よりも強い魔物出るんだよ。あの《こうもりおとこ》ってのは、昼の魔物よりも強いのかも。んじゃ昼間なら戦えるんじゃない?」
マ「えぇ、大丈夫かなぁ(汗)」
リ「1回戦ってみてダメなら、また戻ってこよ」
リオはマナを安心させるのが上手い。無理は強いないのである。
二人はロマリア城の外に出た。
少し歩くと、モンスターが現れた!
《アニマルゾンビ》が4匹だ!
リオは《バギ》を唱えた!「マナ、アンタも続いて!」
マ「バギー!!」マナも全力の《バギ》で続いた!
敵は4匹とも、その二撃でやっつけることが出来た。
リ「ほら、倒せるわ♪」
マ「やったぁー♪」
リ「もうちょっと試してみよ?」
マ「うん!」
二人はもうしばらく戦闘を繰り返してみた。
アリアハンやいざないの洞窟のモンスターよりは強いが、《こうもりおとこ》ほどではない、という感じだ。眠りの呪文《ラリホー》を使ってきたり《毒》攻撃をしてきたりするし、1ターンの《バギ》2発では倒しきれないこともあるが、二人同時に行動不能になりさえしなければ、瀕死にならずに倒せる。
そして、そうしている間にレベルが1つ上がって、さらに少し戦闘が楽になった。
二人が新階層でやっていける自信を取り戻したその時…!
新たなモンスターが現れた!《さまようよろい》だ!ロマリアの兵士のように重厚な鎧に身を固め、立派な剣と盾まで携えている。
マ「うぅ~強そうなの出てきたぁ(泣)」
リ「強いはずよ。《さまようよろい》。
でも大丈夫よ!ヤツは呪文は使ってこないハズ!
物理攻撃ならアンタを攻略できる敵はいないでしょ♪」
リオはダメ元で、《くだものナイフ》で攻撃を仕掛けた。しゅび力はどれくらい高いのだろうか。ザシュっ!《さまようよろい》に6のダメージ!
リ「やっぱあんまりダメージ通らないかぁ(泣)」
マナはまた《バギ》を唱えた!13のダメージ!
リオ「よし!《バギ》が効くなら戦える!」
二人が自信を取り戻したのも束の間、《さまようよろい》がマナに反撃をしかけてきた!
剣を大きく振りかざしたかと思うと、速い間合いで襲い掛かってきた!ガガガっ!!!つうこんのいちげき!!!
鉄壁なはずのマナなのに、なんと35ポイントものダメージを喰らう!!!
マ「うううっ!!!」マナはうめき声しか出ない。
リ「そうか!《痛恨》もマナにダメージが通ってしまうんだわ!!」
これまでは《メラ》で10ポイントのダメージを喰らうのみ、打撃攻撃の痛手を0に抑えてきたのに、急に大ダメージを喰らうようになってしまった!HPを満タンに保っていなければ死んでしまう勢いだ!
リ「ホイミ!!」リオは間髪入れずにマナのHPを回復させた。
マ「ありがとう!」
リ「コイツも速攻かけるわよ!戦闘が長引くと危険だわ!《バギ》!」
次のターンも二人の《バギ》で畳みかけ、どうにか《さまようよろい》をやっつけた。
リ「はぁ、はぁ、また危なかったわね!」
マ「心臓に悪いよぉ(泣)」
リ「魔法使いがいれば、《ヒャド》で大勢を決められるんでしょうけど、《バギ》では単体のタフな魔物は辛いわね…。色々課題が山積みだわ!」
果たして僧侶二人でカバーできるのだろうか?リオも胃が縮む思いだ。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』
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