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第16章 ロブ

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年2月28日
  • 読了時間: 6分

更新日:2024年11月24日

第16章 ロブ


二人は闘技場から抜け出た。武器屋のあたりをウロウロしながら雑談をしていた。

マ「そういえば、リオ未だに《くだものナイフ》で戦ってるのおかしくない??

 それ最初の日に50ゴールドで買ったやつだよね(汗)」

リ「そうね。《聖なるナイフ》に買い替えようかな、という選択肢はあったんだけど、買い替えたところであまり意味はないかな、と思ってたら今日に至ってたのよ(汗)」

マ「ほかにも僧侶が装備できる武器、あるんじゃないの?」

リ「あるにはあるわ。でもアタシが《くさりがま》を振り回して戦ってるの、想像できる?

 アンタほどじゃないけど、嫌なのよアタシもそういうバイオレンスなの。

 《鉄のやり》、はまぁ検討はしてるけど…」

マ「とにかくわたしばっかりムチとか盾とか買ってもらってて、リオが《くだものナイフ》じゃ可哀そうだなぁ」

リ「うふふ!アンタが闘技場で稼いできてくれる?」

マ「むりぃ!」

二人は互いが互いを思いやり、色々考えていた。


気が付くと、武器屋の前に立ち尽くす男の冒険者がいる。独りぼっちだ。よく見れば、体が少し震えているようにも見える。他の冒険者のような立派な鎧は着ていない。

リ「どうしたんですか?プレイヤーですよね?」

男「あ、どうも。えっと、そのぅ…。

 あはは。仲間に見捨てられちゃって(汗)」

マ・リ「えぇ!?」

男「あ、ロブと言います。いや、別に名乗る必要なんてないな。あはは」

リ「どういうこと?」

ロ「いやぁ、もうリタイヤしようと思ってるんですよ。

 低レベルクリア系の仲間たちだったんだけど、レベル7でロマリアに来たら、戦士の僕はまったく役立たずでね。レベルが低いもんだから装備も貧弱でさ。するとこっちの敵にはぜんぜんダメージ通らないし、被ダメも大きくて盾役にもなれないし…」

リ「なるほど」打撃戦を受け持つリオには痛いほどわかる。

ロ「『戦士は武器防具を整えてナンボだよ』って提案したら、ロマリアの武器の高さがこのとおりだろ?

 『お前なんか金食い虫で役立たずだ!』って、見捨てられちゃったのさ」

マ「かわいそう…」

ロ「でも、アリアハンに帰ろうにも、一人じゃロクに戦えないんだよ。腐った犬だって強いんだ。この辺は。

 それで動けなくなっちゃってさ。何か掘り出し物の武器でもないかな、なんて藁にもすがる思いで武器屋の前に立っちゃった、ってハナシさ」

リ「………。

 あんまり役に立たないかもしれないけど…」

ロ「え?」

リ「《くさりかたびら》で良ければ、持っていく?」

ロ「えぇ!いいのかい!?」

マ「そうだ!余ってるのがあるんですよ♪」

ロ「だとしても、お金に換えることだって出来るじゃないか!」

リ「あそうか。でも…でもいいよ。あげます。

 それだけじゃアリアハンには帰れないかもしれないけど、でも何もしないってことは出来ないよ」

ロ「あ、ありがとう!!!」

マ「あれ?そういえば、ココからアリアハンにはどうやって帰るの?」

ロ「城の南の草原に、アリアハン行きの《旅の扉》があるよ。

 良かった!情報提供のお返しが出来ただけでもうれしいよ!」

リ「わかった♪

 じゃぁ今から、一緒にアリアハンに戻りましょうよ♪

 アタシたち弱そうに見えるけど、《アニマルゾンビ》くらいなら倒せるのよ!

 ロブが一緒なら楽勝だわ」

ロ「ご、護衛までしてくれるというのかい!?

 なんとお礼を言ったらいいんだ!!」

ロブは、武器も《くさりがま》を装備しているに過ぎなかった。《おおありくい》を倒すには充分だが、ロマリアの敵の前ではほとんど無力だ。その上《くさりかたびら》では、マナたちが護衛しなければロマリアの周辺で朽ち果てていただろう。

マナとリオはロブを守りながら、城の南の《旅の扉》を探した。幸いそう遠くはなかった。

マナはいつものごとく、ロブのことも《かばう》で助けて見せた。


《旅の扉》に飛び込むと、アリアハンのお城の広間に通じていた。ここならロブも安全である。

リ「じゃ、あとはテキトーにやってね」リオはさらりと別れを告げた。

二人が立ち去ろうとすると、ロブがかすれた声で呼び止めた。

ロ「待ってくれ!これを…!」

マ・リ「え?」

ロ「これを、持っていってくれないか?」

 ロブは、二人に立派な杖を差し出した。

リ「もぉ、意外と図々しいのね!誰に届けろっていうの?

 アリアハンの町の中までなら、受け持ったげるわ」

ロ「違う!違うんだ!

 これを、この《スターリーステッキ》を、君たちに贈りたい」

リ「くれるの!?この立派な杖を!? この杖こそお金になったじゃない!」

ロ「そうかもしれないが…」

リ「アタシがあげた《くさりかたびら》、せいぜい350ゴールドの価値しかないのよ?」

ロ「そうかもしれないが、そうじゃない。

 君たちは僕の、僕の命を救ってくれたんだよ。

 それに比べたら《スターリーステッキ》なんて、むしろ安すぎるくらいだよ」

マ・リ「ありがとう…!!」


城下町を歩きながら、カラフルな杖を二人で眺める。

マ「大きな☆の宝石がついてるよ!キレイな杖だねぇ♪」

リ「しかも、道具として使うと《メラミ》の効果があるのよ。MP使わなくても《メラミ》撃てんの!」

マ「《かしの杖》よりもずっと魔女っ子っぽいよ~♪」

リ「あーハイハイ、良かったねー。」

マ「あー、でも…」

リ「なに?」

マ「これ、リオが使いなよ!」

オ「え?」

マ「《くだものナイフ》より強い武器、欲しいって話してたばっかじゃん?」

リ「そうだけど。せっかく魔女っ子に近づけるのに?」

マ「可愛くなるより、大事なことあるよ♪」マナはリオに抱き着こうとした。

リ「もう。クサいこと言っちゃって!」リオはいつものようにマナを突き飛ばした。


ロブは、マナとリオのおかげで九死に一生を得た。

しかし、マナとリオもまた、ロブのおかげで九死に一生を得たかもしれない。

MP消費無しで《メラミ》を放てる杖は、この初期段階においては破格の性能である!そして、仮に1万ゴールドを出して《鉄のやり》を買ったところで、非力な僧侶であるリオでは《さまようよろい》に太刀打ちできるものではなかったのだ。




二人は、再びいざないの洞窟からロマリアに戻る必要があった。歩くのは面倒だが難易度は下がっている。《いっかくうさぎ》が4匹現れた!

リ「ちょっとアンタ、そのムチ振るってみなさいよ?」

マ「うん?わかった。えーい!」

シュババっ!

《いっかくうさぎ》A、B、C、Dにそれぞれ15前後のダメージ!まもののむれをやっつけた!

マ「すごーい!アタシが打撃攻撃で魔物一掃しちゃったよ!!」

リ「お見事よーマナちゃん♪

 つまりさ?MP消費しないでこの辺の敵なら延々と戦ってられるってワケよ♪」

マ「呪文だけじゃないのねわたし!成長したわぁ♪

 じゃぁ、リオの新しいステッキは?」

そこに《まほうつかい》が1匹現れた!

リオは《スターリーステッキ》を振りかざした!「メラミ―!」

《まほうつかい》に78のダメージ!《まほうつかい》をやっつけた!

マ・リ「ななじゅうはち!!!!」

二人は目を丸くして顔を見合わせた。

マ「《メラ》の10倍ちかいよ!?」

リ「まぁロマリアの敵たちは耐性があったりして、もうちょいダメージ少ないと思うけどね」

それにしたって大幅な戦力アップである。


二人は、新しい武器の威力を味わいながら、いざないの洞窟を抜けた。

そしてロマリア周辺で、強敵たちとも戦ってみる。

「《メラミ》―!」

《さまようよろい》に65のダメージ!《さまようよろい》をやっつけた!

リ「《さまようよろい》を一撃っ!!」

マ「つよっ!」

リ「これなら第2層でも太刀打ちできそうだね♪」



『僧侶だけで魔王を倒すには?』

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