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第35章 ようがんのどうくつ

第35章 ようがんのどうくつ


リ「おっほっほー!

 《ようがんまじん》の《燃えさかる火炎》で15のダメージしか受けないわ♪」

ドン・モハメに作ってもらった《水の羽衣》は前評判通り、炎のダメージを大幅に軽減する効果を見せてくれた!

いや、評判以上の効果であった。

本来、《水の羽衣》』の炎系ダメージ軽減効果は「30%」にすぎないはずであった。それでも充分に強力なのだが、なんと二人の入手した《水の羽衣》は、「50%」のダメージ減少効果を見せた!半分に減らしてくれるというわけだ。

リ「鍛冶屋が魂を込めて打った武器は強い力を発揮する、なんて言うけれど、機織りが魂を込めて織った羽衣も強い効果を発揮するのかしら…」そうであるらしかった。

マ「すっごいねぇ。可愛いよねぇ♪」

リ「いや今ルックスのハナシしてないしっ!」

しかしルックスの美しさにおいても、二人を充分にウットリさせるものがあった。特にマナにおいてはようやく、自分がイメージしていたRRGの魔女っ子になってきた、という興奮を隠しきれない。

リ「さて、こちらの性能はいかほどかしら?」

リオは《氷のやいば》を頭上高く振りかざした!

《ようがんまじん》A、B、Cにそれぞれ65程度のダメージ!

リ「ひゃぁ!バギマの倍くらい強いわ!」スウィフトは「《ヒャダルコ》の効果」と言っていたが、《ヒャダルコ》よりも微妙にダメージが出るようであった。

楽勝!というほどの進化ではないが、攻守ともレベルアップし、この洞窟の手ごわいモンスターたちにも善戦できるようにはなった。


手ごわいのは《ようがんまじん》だけではない。

《げんじゅつし》はつかみどころのない顔をして、《マホトーン》や《マヌーサ》など状態異常呪文を使いこなし、こちらをかく乱してくる。こちらの呪文や攻撃もあまり通らない。


炭坑は灼熱の洞窟と化し、とてつもなく暑いが、《水の羽衣》は体温としての熱を下げてくれる効果もあるらしかった。汗をかきかき、それでも二人は前に進むことが出来た。


マ「リオぉ。わたしのMP、またなくなっちゃいそう」

リ「そうよね」汗を拭きながら答えた。

敵が強いうえに長丁場のこのダンジョンでは、ベースの体力だけではしのげそうもない。すでに《やくそう》や《魔法の聖水》は幾つか使った。おそらく最奥ではボスも待ち構えている。

リ「よし」リオは覚悟を決めて、残りの《魔法の聖水》2つをマナに使ってやった。「これでどうにかなってくれ!」期待と祈りを込めて。

地下3階を抜け、4階を抜けると、ようやく突き当りの広間に辿り着く。そこでは何やら、祭壇がしつらえられ、大きな炎を燃やしている。そこに溶岩石をくべる魔物の姿があった。

魔「どんどん燃やせ!じゃんじゃん燃やせ!」

リ「アンタたちが温泉を異常にしている元凶ね!」

魔「おや?俺たちの邪魔をするやつが現れたぞ?」

魔「いいや、薪になりたいんじゃないのか?」

魔「感心なこったな!」

3体の《ほのおのせんし》が襲い掛かってきた!!


リオはいつも通り先手を取って《ヒャダルコ》を…のつもりだったが、速い!《ほのおのせんし》はそれを上回るスピードで先制攻撃をしかけてきた!

ゴォォォォ!!《ほのおのせんし》Bは《燃えさかる火炎》をはいた!

リ「くっ!でもこれなら耐えしのげるはず!」

と思ったのも束の間!

ゴォォォォ!!《ほのおのせんし》Bはさらに《燃えさかる火炎》をはいた!

リ「2回行動!?マジで!!??」

ヤバい!最悪だと《燃えさかる火炎》を6回喰らう!!聡明なリオの頭の中で瞬時に計算が働いた!

どうする?逃げるか!?ボス戦で逃げられるはずがない!

2番手はリオが動けた!

リ「お願い!効いて!!」リオは《どくがの粉》を使った!

リ「まさか1ターン目から使う羽目になるとは!でも背に腹は代えられない!」

《ほのおのせんし》Cは体がしびれて動けない!

やった!《マヒ》の状態異常が効いた!

マ「《バギマ》ー!!」マナは呪文で続いた!《ほのおのせんし》A、B、Cに40ほどのダメージ!

リ「マナ!奴らが3体同時に動いたらアタシたち勝ち目がないわ!

 Cがマヒってる間にどうにか1体は倒さないと!!」

マ「え?え!?」マナは状況が掴めない!

《ほのおのせんし》Aは《メラミ》を唱えた!マナに41のダメージ!

リ「くぅぅ!《メラミ》も使ってくるのかぁ!」


リオの攻撃!リオは《氷のやいば》を振りかざした!それぞれに65程度のダメージ!

しかし敵のダメージゲージは1/4程度しか減っていない!3ターンでは倒しきれないのでは!?リオは青ざめた。

リ「マナ!次アンタは《ベホイミ》よ!自分の傷を回復!」

マ「はぁい!」マナは《ベホイミ》を唱えた!


リオが懸念したとおり、3ターンでは1体も倒しきれない。どうする!?

リ「はぁ、はぁ、どうしよう…。

 戦士でも居れば1発で100ダメージくらい喰らわすんでしょうけど…」

マ「リオ、一か八か、フツウに攻撃してみたら!?」

リ「何言ってんのよ!非力なアタシに《ヒャダルコ》以上のダメージが出せるわけがないじゃない!」

マ「わたしたちレベル低いんでしょ?」

リ「そうよ!だから弱いのよ!!」

マ「《ジャイアント・キリング》の特性でダメージが上がるんじゃないの??」

リ「はっ!」

マ「それに、《氷の刃》ってすごい強い武器なんじゃないの?」

リ「そうか!でも…!」頭の中でざっと計算しても、100を超えるようなダメージになるとは思えない。

どうする!?どうする!?

マ「リオぉぉぉ!!」

リ「えぇいあとはもう祈るだけだわ!!どうせ《ヒャダルコ》撃ってもダメなんだから!」

リオは《ほのおのせんし》Aの懐に勇敢に飛び込み、思いきり突撃した!


ガガガガン!!かいしんのいちげき!!!


《ほのおのせんし》Aに134のダメージ!《ほのおのせんし》Aをやっつけた!

マ「やったぁ!!」

リ「き、奇跡だわ…!!」水の精霊が助けてくれたのだろうか?そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。

ほ「コノヤロー!」《ほのおのせんし》Bは《メラミ》を唱え、マナを攻撃してきた!

リ「マナ、あんたはもっかい回復!」

マ「わかってる!」マナは自分に《ベホイミ》を唱えた!

《ほのおのせんし》Cは《燃えさかる火炎》を吐いた!


リ「あと2体なのに、2体でもシンドイわね!!

 回復しないともたないわ!」リオは自分に《ベホイミ》を唱えた!

ほ「ケケケ!まだ勝負は終わってねぇぜ!

 《メラミ》!

 《メラミ》!」

《ほのおのせんし》Bは《メラミ》を連発してきた!リオもマナも瀕死に陥る!

リ「くっそぉ二人じゃ手数が足りない!」マナに《ベホイミ》を唱えた!

リ「マナ!アンタは攻撃に転じて!」

マ「はい!」マナは全力の《バギマ》で攻撃!

《ほのおのせんし》Cは笑いながらリオに殴りかかってきた!

マ「危ない!」マナはリオをかばいに入った!


リ「どっちだ?どっちに何を撃てばいい!?」リオは必至に頭を働かせる!

リオ「えぇい!」リオは《ほのおせんし》Cに打撃攻撃を見舞った!84のダメージ!《ほのおのせんし》Cをやっつけた!


ほ「けっけっけ!オレを残すなんてバカなんじゃねぇのか!」

《ほのおのせんし》Bは《メラミ》を放った!マナに45のダメージ!

ほ「さぁてココでもう1発《メラミ》を放つと…?」《ほのおのせんし》は不敵な笑みを浮かべた!

マ・リ「やばい…!!!」二人は青ざめた!

ほ「けけけ!あの世で詫びな!《メラミ》ー!!」


しかし、MPが足りない!!


ほ「なにぃぃぃぃ!?」


リ「良かった!読みがあたった!!

 さすがにそろそろMPが切れるんじゃないかと思ったの!

 トドメよ!

 《ヒャダルコ》―!!」

マ「《バギマ》―!!」

《ほのおのせんし》Bをやっつけた!!


マ・リ「やったぁぁ!!!」

二人は泣きながら抱き合った!


心底喜んだのも束の間、二人は信じられない光景を目の当たりにした。

戦「へっへっへ。デカい宝箱だ!」

なんと、祭壇の後ろにボスたちが隠していた宝箱を、マナたちが戦いに夢中なのを尻目に他の冒険者が開けようとしている!

戦「おぉ!《きせきのつるぎ》だ!こりゃ大物だぜ!」

二人はさらに呆気にとられた…!

なんと、その冒険者とは、マナがハーブを摘んできて食中毒を治してあげたあのパーティだったのだ!!!

リオは激昂した!

リ「ちょっとアンタたち!!この魔物は私たちが死に物狂いで倒したのよ!!」

戦「そうは言っても、宝箱は見つけたもんの物だろ?」

リ「でもアタシたちがボスを倒したのよ!!死に物狂いで!!」

戦「魔物がドロップしたならそりゃアンタらのもんだ。でも、落ちてる宝箱は見つけたもんのもんだ。それが冒険者たちの筋ってもんだろよ?」

リ「ひどい…!!!」

マナはひざから崩れ落ちて泣いている。

一行はどこかへ立ち去ってしまった。

リ「マナ!だから言ったでしょう!こんな奴らに優しくすべきじゃなかったのよ!!」

マ「ごめんなさい!でも、でも、ごめんなさい!!うわー--ん!」

マナは裏切られた悲しみだけでなく、リオから激しく叱られたこと、リオにとっての報酬すら失ってしまったことで、絶望的に泣きじゃくっていた。

マ「うわー--ん!」

リ「はっ…!」リオは我に返った。

リ「ごめん!アンタを責める話じゃなかった!ごめんマナ!」

リオはマナを優しく抱きしめた。そしてリオもまた涙を流した。

マ「うわー--ん!」

リ「いいのよマナ。どうせ《きせきのつるぎ》なんてアタシたち装備できないし。強い武器なら手に入ったばっかだし」

マ「うわー--ん!」

リ「でもね、尽くす相手は選ぶべきだわ」



二人の決死の活躍によって、アネイルの温泉は平常を取り戻した。

宿1「さぁさぁ寄ってらっしゃい!絶品温泉まんじゅうの老舗はウチの店だよ!

宿2「いやいやアネイルの温泉まんじゅうの元祖はここの店だ!」

宿3「おぉーっと黙っちゃおけねぇぜ!最も伝統が長いのはうちの店ってもんだ!」


いいや、あまり変わっていないのかもしれない。



『僧侶だけで魔王を倒すには?』

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