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第38章 アークボルト

第38章 アークボルト


宿屋のロビーはバーを兼ねているが、そこには旅の神父が一人、酒を飲んでいた。

神「おやおや、ずいぶん身軽ななりの旅人ですね」彼は人恋しそうに二人に話しかけた。

リ「えぇ、色々とこだわりがありまして」リオは簡潔に回答をした。

神「この国には5人目の英雄がいた。そんな話を耳にしたことがあります。

 その彼は戦争が起きたとき、敵国を打ち負かそうとはしなかった。

 『国を捨て、遠く離れた場所に村を築いて暮らそう』と提案したそうです。

 彼の考えに賛同した民も若干数いたそうですが、『日和見主義は国家を滅亡させる!』と危険思想者扱いされ、彼は島流しに遭ったそうです」

リ「へぇ…」

神「戦いを嫌う神父です。私は彼にちょっと共感してしまいますね。 

 はは。どうでもいい話でした。おやすみなさい」


翌朝、宿を出て冒険に出ようとすると、宿主に声を掛けられた。

宿「今日はどちらにお出かけで?

 冒険者なら、王様に謁見しておいたほうがよいのでは?」

二人は王になど興味はないが、それが必要なことなのだろうと察した。

賑わう町を抜けて城を目指す。町は昼間から色んな意味で活気がある。元気な兵士が多く、町民は元気に英雄談義を交わしている。子供たちは剣のおもちゃを振り回して駆け回る。

酒場には昼間から男たちが集まっていた。大声で延々としゃべり続けている。

男「オマエ知ってるか?魔王って昔、ビジネスマンだったらしいぜ!」

男「おい、おまえ酔いすぎだよ!」

男「ホントだって!魔王っつったってモンスターとは限らんさ」


城は冒険者にも開かれているようで、二人の来城を兵士たちが怒りだす雰囲気は無かった。「王に粗相のないように」それは繰り返し言われるのだった。

城の者たちに話を聞いていると、「今この国では、国民投票が開催されている」ということだった。それで国はなおさらガヤガヤしている。4人の古の英雄のうち、誰が真の英雄か、それを国民投票で決めるというのである。

アークボルト城の周囲には、東西南北それぞれに立派な遺跡がある。二人が最初に抜けてきたのは南の遺跡だ。他に3つもあるらしい。遺跡を手入れして国の英雄を讃えたいが、4つ同時に行うことは出来ない。その優先順位を、つまり国の最たる英雄を改めて決め直さなければならない、という話だ。

一応、アークボルトが真の英雄ということになっている。だからこの国はアークボルトという名前で呼ばれている。

リオはマナのために、今城で得た情報を箇条書きにまとめてやった。


  • 今城では国民投票が行われてる

  • 4人の英雄のうち誰が真の英雄か?投票する

  • 城の東西南北に4つの遺跡がある

  • 遺跡はそれぞれの英雄のゆかりの地

  • いちおうアークボルトが真の英雄候補


リ「わかった?」

マ「うーん、タブン(汗)」


王は立派な玉座に堂々と腰かけ、そして横には大臣を従えていた。

王「謁見ご苦労、旅の者よ。

 私はアークボルト16世。英雄アークボルト1世の正統なる後継者にして、この国の王だ。 この国はいつまでも強者でなければならない。栄光の前に権威の確立は重要なものだ。

 国民投票に参加したいなら、好きにするがよい。遠慮はいらんぞ」

「あっそう」と思ったが、もちろん口にはしなかった。権力争いなど二人には興味がないのだ。

丁重にお辞儀をして、二人は立ち去ろうとした。するとその瞬間、大臣に呼び止められた。大臣は二人に駆け寄ってきて、耳打ちするように話しかけた。

大「旅の者。どうかあなた方も国民投票に参加してはくださらぬか?ぜひともお願いしたい。

 というのも、今の様子だと投票数の合計は国民の過半数に満たない。英雄争いに白熱する者も多いが、我関せずな者も多いのだ。

 もちろん投票者の多くは我がアークボルト王の祖先に投じるだろう。だとしても総数が過半数を超えないと…『無効だ!』と騒ぐ者が現れ、同じ論争が繰り返されかねない。王の権威が、おびやかされかねないのだよ」

リ「へぇ。コメントをするのが難しいですが、私たちも冒険に目的が欲しいところでした。」

大「そうだろうそうだろう。

 国を見て回りなさい。誰が真の英雄か、わかるはずじゃ」


二人は今度こそ、王の間から去ろうとした。

階段を降りようとするその直前、1人の男がすれちがいざまに王に駆け寄り、大声をあげた。

男「「王よ!やはり議会を設置すべきです!

 今回の国民投票を特例と言わずに、何事も投票で決定すべきです!」

王「またそなたか。やかましい男じゃ」

二人は振り返り、そのやりとりを見守っていた。

あまりこの城下で見ない雰囲気の男だった。

オシャレなノーブルコートをひるがえし、オシャレな細身剣を腰に挿している。そしていわゆるイケメンな顔立ちをしていた。

リ「あれは誰なのですか?」リオは近くの兵士に尋ねた。

兵「近衛兵団長のブラストだよ。王の片腕にして、ブレーンでもある。

 頭の良い男でね。剣技だけでなく魔法も器用に操ってみせる」

「立ち去れ!立ち去れ!」と大臣はブラストに吠えている。


絶対王政を続けたがる王と、民主主義を求める家臣。

武力で英雄譚を築き上げた者の末裔と、文武両道の家臣。


リオはなんとなくこの国の様子が見えてきた。



『僧侶だけで魔王を倒すには?』

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