第43章 カボチむら
《旅の扉》が二人をいざなったのは、枯れた土地にある、しかしのどかな村だった。
リ「5層のスタート地点は村か」
マ「いきなり敵がいたりしなくて良かった!鎧のおっさんもいないよ」
のどかな始まりで良かった、と言いたいようである。
リオは手近にいる農夫に話しかけてみる。
農「ここはカボチの村だべさ。
どっから来た!?おめぇら」
リ「この村は平和そうね」
農「んなこたねーべよ!みんな一生懸命生きてる。
一生懸命生きてりゃ、困りごとの1つもあんべよ」
リ「そうよね。能天気なこと言ってごめんなさい」
農「おらだって悩みの1つもある。
最近よぉ、おらの畑の作物さ荒らしていく魔物がいやがる!
とっ捕まえてぇんだがすばしっこくてな!困ったもんだ」
『クエストが発生しました。挑戦しますか?』コマンドウインドウが現れた。
リ「助けてあげますかね」
マ「うん」
リ「それはいいとして、もうちょっと村を歩いてみましょ」
マ「さんせーい!可愛いお洋服は…ないかな(汗)」
村を少々歩いてみると、どうもクエストイベントの多い村であった。
しかし内容は簡単なものばかりだ。村の中で完結しそうなものも多い。骨休めのような階層なのだろうか。
リオは、「久しぶりに少し個人行動をしようか」と提案した。マナは同意した。
まずはリオだ。クエストばかりの村なのであれば、それらのクエストに意味や価値が高いのだろうと察した。精力的にクエストをこなそう、と考えた。
まずは農夫の作物を助けてやらねば。村を出てフィールドで戦ってみると、《キラーパンサー》が出現した。
「すばやい魔物」の正体はコイツだろう。野菜が好きそうには見えないが。
3匹倒して報告しに行ってみる。
農「おぉ、おらの天敵を倒してくれただか!なぁに3匹も倒せば見せしめになるってもんよ。
お礼か?そうだなぁ。あげられるものが何もねぇ。
これ持ってくか?」
リオは《うまのふん》を手に入れた!
リ「もぉー!《うまのふん》とは何様よ!
アタシが畑を荒らしたくなっちゃうわ!」
怒り心頭だが、懸命にこらえるリオだった…。
少し歩くと武器屋がある。
商「わたしは戦う商人でね。仕入れのために旅もするんだが、最近も武器や防具を運びながら魔物との戦いまでこなしたばかりで、もう肩がパンパンに凝っちゃったよ!ちょっと肩を揉んではくれんかねぇ?」
『クエストが発生しました。挑戦しますか?』コマンドウインドウが現れた。
リオは肩を揉んでやった。
商「おぉててててててて!お嬢さん、力が強すぎるんじゃないのか!?
でもおかげでスッキリしたよ!ありがとう」
リオは《どくけしそう》を手に入れた!
リ「ど、どくけしそう…!?」まぁ肩もみごときで上等な報酬を期待するわけにもいかないか。
武器屋の先では、民家から料理を作る良い匂いが立ち込めている。リオは覗いてみた。
婆「あら旅の人、ちょうどいいところにいるわね!
まっすぐ向こうに突き当たったところ、釣り堀にハゲ親父が座ってるでしょ?
あたしの旦那にこのお弁当、届けてやってくれんかねぇ?」
『クエストが発生しました。挑戦しますか?』
コマンドウインドウが現れた。
お易い御用だ。リオは向かいの爺さんにお弁当を運んでやった。
爺「おぉすまんのぅ。しかしお腹いっぱいじゃから、このお弁当はお嬢さんにくれてやろう」
リ「あ、どうも(汗)」
爺「ところでワシ、朝から晩まで釣り堀に座りっぱなしで体がなまってしまうわい。
運動したいんじゃが、ちょっと向こうのワシん家までかけっこしてくれんかのう?」
『クエストが発生しました。挑戦しますか?』コマンドウインドウが現れた。
リ「はぁ…、くだらわないわ」しかしリオは老人のかけっこの相手をしてやった。
爺「はぁ、はぁ、はぁ、この距離でもう限界じゃ!
ありがとう。良い運動になったよ!
お礼は婆さんから貰っといてくれ」
婆「あら、あんたうちの旦那にもなんかお世話してくれたのかい?
申し訳ないねぇ。
お弁当の残り、持っていくかい?ちょっと待っとくれ。今詰めてげるからね」
リオはお弁当を手に入れた!
リ「に、2個…(汗)」
リオはさらに町を歩いた。
民家の前にしゃがみ込んでいる女の子がいる。ケガでもしたのだろうか?駆け寄って声をかけてみる。
女「あのね、お花の種を埋めてみたの。早く芽が出ないかな~
お水をあげたいよう」
り「あっちに井戸があったわ」
女「そうだけど、お留守番してなさいってママに頼まれてるの。ママ遠くまでお仕事行ってるから。
だからわたし、ここから動けないんだぁ」
『クエストが発生しました。挑戦しますか?』コマンドウインドウが現れた。
リ「じゃぁアタシがお水汲んできてあげる」
女「ありがとう!じょうろはあるわ」
リオは村の井戸まで行って水を汲んできてやった。
女「わーいお姉ちゃん優しいのね!これあげる」
リオは1ゴールドを手に入れた!
リオはなおも歩いた。
2つ隣の民家では、軒先でお婆さんが座り込み、うつらうつらと舟をこいでいる。
リ「おばあさん大丈夫ですか?何かお困りごとでも?」
婆「はっ!あんまりにも退屈で眠ってしまったわ!
子供も孫も巣立ってしまってねぇ、することが何にもないのよ!
呆けたくないから幼子のお世話でもしたいんだけど、あなた何かかまってほしいこととかないの?」
『クエストが発生しました。挑戦しますか?』コマンドウインドウが現れた。
リ「そうね。協力してあげたいけど…
特に必要としていることもないのよねぇ。
そうだお婆さん。お話しましょうよ。
この村のこととか大陸のこととか、何か教えてくれない?」
婆「あらいいわねぇ!
ずっと向こうのほうにも村があるわ。町というのかしらね?
私、若い頃に一度だけそこに行ったことがあるのだけど、なんとまぁ、町のみんなで大きな鳥さんを飼っているのよ!変わり者よねぇおほほほ!」
町で大きな鳥を飼っている!?お婆さん、すでに呆けてしまっているのだろうか…
リ「そ、そうなの。楽しいお話、どうもありがとう」
婆「いいえ、こちらこそどうもありがとう。
お礼にこれをあげるわ」
リオは《おなべのふた》を手に入れた!
リ「ど、どうも。あははは(汗)」
村を一周したようだ。
収穫があったのか否か、よくわからない一日だった。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』
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